おそらくいくつか溜まった短編を二つに振り分けてタイトルを冠したのだろうと思いますが(シリーズごとにパッケージしてもらえたらなお嬉しいのですが)、毎度のことながらはらださんはタイトルセンスがいいなあと思います。
今回のネガとポジ、ネガティブとポジティブ?と思いきや、両作ともそのどちらかに特化しているわけではなく、地続きに並んでいるようでした。タイトルのネガとポジは、白と黒の切り替えが対称的な表紙も含めて、ネガフィルムとポジフィルム、陰画と陽画のような、あるひとつの関係の裏と表のように見えます。
ところで、はらださんの作品は『やじるし』のみ既読、『やじるし』のようなものを期待して『ネガ』を購入、続いて同時購入特典目当てに『ポジ』を購入という経緯で本作に至りました。
あくまでおまけ的に購入した『ポジ』でしたが、意外にもスルメで何度も読んでしまいました。ただのぶっとびエロ漫画ではなかったのです。なんたってキャラがいいのです。
「メシア」シリーズは、メシアのどうしようもなさ、友達の不憫さ(わたしはこの友達がとてもすき)にグッときました。傍観者役のマスターがいることでシリアスになりすぎず、最終的に「おまえら三人全員クズ!」といってぶん投げてしまえる身もふたもなさが、まさに不条理ギャグでたいへんにツボです。三人とも精一杯恋愛しようとしているのでしょうが、クズは何したってクズなのです。「メシアの選択」の終盤の三者の突き抜け方がすがすがしくて最高でした。
「もずく」シリーズは、割とうかつでしたたかな助手と、割としたたかでうかつな博士の、やられてはやり返しやり返してはやり返されの王道ギャグでした。近未来的な謎衣装や謎設定も絶妙に脱力できてよかったです。
この作品、もちろんエロもいいのですが、キャラがとにかく魅力的で、力の抜き加減が絶妙で、何度も読んでしまうのです。「メシア」シリーズと「もずく」シリーズのどうでもいいような日常エピソードが読みたいな。あれわたし『ポジ』のことをギャグ漫画だと思ってる、おかしいな。
表紙のデザインと色味、絵柄に惹かれて購入しました。
二作品収録されており、両作ともに友情と恋情のあわいにある、名付けがたい関係を描いています。
言い表せない本心、通り過ぎた記憶を、遠くから遠くから手繰り寄せていくような二作です。
直球を投げすぎないモノローグとセリフがきいており、何度もページを行き来しながら登場人物の感情をじっくり反芻して読みました。
個人的には「彼らの変」が好みです。けんぞうくんは心優しい子ね、かわいいよう。20ページのけんぞうくんの横顔アップのカットには、ここでこう場面を切り替えるのかあとハッとしました。作中で一番好きなコマです。「帰省」はうっかりホロリときてしまいました。
はじめてBL漫画を読む方にもおすすめしたい一冊です。