みざきさんのマイページ

レビューした作品

マスターレビューアー 「BLアワード検定」合格証 ソムリエ合格

女性みざきさん

レビュー数9

ポイント数148

今年度17位

通算--位

  • 絞り込み
条件

指定なし

  • レビューした作品
  • 神作品
  • 萌×2作品
  • 萌作品
  • 中立作品
  • しゅみじゃない作品
  • 出版社別
  • レーベル別
  • 作品詳細
  • レビューした著者別
  • レビューした作画別
  • レビューしたイラスト別
  • レビューした原作別
  • レビューした声優別
媒体

指定なし

  • 指定なし
  • コミック
  • 小説
  • CD
  • DVD
  • ゲーム
  • 小冊子
  • GOODS
発売年月
月 ~
レビュー月
表示モード

すこし苦くてとびきり甘い

これは…神評価以外の選択肢が自分の中にありませんでした。

受けのことが好きすぎる攻めが登場する、人によって好みが分かれる設定や内容の作品が読みたいと、ちるフェスのソムリエコーナーでおすすめしていただいたこちらの作品。
あらすじからして心惹かれるものがあったのですが、読んでみて思わず頭を抱えました。
最初から最後までドスドスドスっと萌えのツボに刺さってなかなか抜けません…好きだ〜…!!
熱く推してくださったソムリエさんに感謝です。

人身売買がごく当たり前に存在する世界の中の、そのもっともっと奥のほう。
表からは見えない薄暗いところにあるユートピアといいますか…全体的にも題材的にもダークな香りが漂うのだけれど、蓋を開けてみればとんでもない甘さなのです。
いやあ、なんでしょうかこの絶妙なバランスの良さは。
ほんのりどころじゃない苦味と、加糖練乳のような甘みがぐつぐつ煮込まれていて、一度味わったらやみつきになる味付けになっています。

劣悪な環境下で洗脳され慰みものとなっていた受けを、殺し屋の攻めが血で汚れた手を差し伸べて救い出す。
一筋縄ではいかないお話なのかなと思いきや、2人の暮らしはまさに楽園。スウィートルームそのものです。
柔らかい毛布で身も心もまるっと包み込んで、少しずつじっくりとやさしさで愛でつくすアムの溺愛っぷりがたまらなく良かったなあ…
そして、アムの手から情操教育を受け、毎日愛情をたっぷりと浴びた翠が2人の関係に見事な化学変化をもたらしてくれる素敵仕様となっているではないですか。
この展開と関係性の変化は大好きなやつー!と、すっかり彼らと作品の虜になってしまいました。
唯一無二の関係になるまでの流れが最高すぎて萌えざるを得ません。

薄暗さの中の多幸感や優しさ。
愛情や癒しという、世界観やバックボーンとは相反するテーマが非常に上手く効いている作品でした。
わくわくするような萌え要素がぎゅっと詰まっていて、刺さる人にはざくざく刺さるハッピーセットみたいな1冊だなと思います。
作家さんの既刊も追いかけたくなりました。

ままならない関係

「かわいくないひと」が実はかわいかったというのは、何度読んでも良いものだなあと思います。

今作の受けである雨宮は、個人的にはどちらかというと、かわいくないひとというよりもクセが強くて生き辛そうな人といった印象が強かったです。
天才肌の空間デザイナーの彼のキャラクターがハマるかハマらないかで評価が分かれる作品かもしれません。
私はというと、うーん…攻めの瀬尾視点で雨宮を追っていくと、彼の分かりづらい変化がかわいらしく感じるところもあったのですが、すごく刺さったか?萌えたか?というと微妙なところかなと、2.5寄りのこちらの評価になりました。

というのも、三角関係の描き方は面白く読めたものの、雨宮が終始情緒不安定に見えてしまい、そちらが気になって密に描かれているお仕事描写に関してはあまりリアルには感じられなかったのです。
才能があるのに精神面で自立が出来ていない受けの描き方としてはありだと思います。
でも、せっかくの空間・建築関係の職業設定が、雨宮のキャラクターも相まって三角関係を描けば描くほどなんだかちょっぴり浮世離れしているように見えてしまって。
お仕事BL要素も期待して読んでいたものですから、この辺りは彼らが起こしたデザインも含めて想像がしにくかったのが少々残念でした。

雨宮を間に置いて形の違う愛し方を見せる男2人の図と、共依存のような不器用で歪な深海と雨宮の関係は追っていて面白かったです。
ただ、2人ともなぜそこまで雨宮が良いのかが最後まで分からなかったなあ。
後半でやっとかわいらしさの片鱗が見えてきて、そこでやっと雨宮がどんな人なのかが掴めた気がします。
めげない年下攻めは良かったかな。

素朴な萌え

ああきっとこの後こうなるんだろうなあと分かっていても、王道作品ならではの「きっとこうなる」を追うのが楽しかったりします。

アルファが側にいるだけで、まるで鼻炎か花粉症のようにくしゅんとくしゃみが止まらなくなってしまうアレルギー体質を持っている主人公…と、珍しい設定が面白い1冊でした。
ただ、先述の通り作中からBLの王道の香りがするものですから、全体的にお話の展開が読めてしまったんですね。
でもそこが安心して楽しめるポイントでもあったかなと思います。

元ベータの圭都がなぜオメガに変異したのかについてなど、疑問点や都合が良いと感じるところもあるのです。
しかしながら、なんというのかなあ。
特大級の萌えではなくて、道端できれいな花を見つけた時のような素朴な萌えを拾い集めるのが楽しかった印象でした。

佑星という人が、いわゆる一途で健気な攻めなのですけれど、それ以上にちょっとしたエピソードからかわいらしさを感じる人でして。
大きな体で圭都のためにせっせと緊急時用のハンカチを準備していたのかと思うと微笑ましいですし、ぼろぼろになるまでパンダのマスコットを大事にしていた佑星が健気ですごくかわいい。
国民的人気俳優だというのに、その実態は素朴な一途さん。
幼い頃から想いはとってもシンプル。
それが1番ちょうど良い甘さでおいしいのです。
なんだか圭都が作る焼き菓子のような人でしたね。

300P超のお話でしたが、幼馴染2人が恋にたどり着くまでの紆余曲折は決して悪いものではなく、ゴールが分かっていても見守りたくなる良い雰囲気です。
これは佑星視点のお話も読んでみたかったかも。
読み終えた後に焼き菓子とミルクティーが飲みたくなる1冊でした。

好きって素敵だ

何事もきちんと言葉に出して相手に伝えることができる、正直な人たちが繰り広げるやさしいお話でした。
うーん、素敵!好きなテイストのときめきが詰まっていたなあ。

30歳を前に、恋人ではなく結婚相手を見つけたい光成。
将来のための条件を挙げていたはずなのに、いざ目の前にまるで面食いな自分のための理想が服を着たような青年・新が現れた瞬間の反応がかわいいったらなかったです。
これは絶対面白いタイプの受けだと確信し、思わずにやりとしました。

顔よし、物腰よし、あらゆる意味での相性よし。
新という人は外見的にも光成の好みそのものなのだけれど、そこは理想と現実なんて言葉がぴったりなところでして。
現実的な部分での理想とは少々異なる背景を持つ新へ惹かれる気持ちはあっても、気持ちが良いほどにバッサリと切る光成のドライな一面におー!となりつつ…
それでもめげずに押していく新の一途さがまた良かったんですよねえ。

新の、やさしさとふわ〜っとした末っ子成分が絶妙に織り交ぜられた、庇護欲がわいてしまう完璧じゃないかわいらしさがずるくって!
しかもベッドでのギャップありときました。
これには光成も読み手もやられてしまいます。ああかわいい。
なんだかもう、2人の日常会話もデートも読んでいてすごく微笑ましくて楽しかったです。
胸がいっぱいになるようなときめきあふれる幸せが心地良く、光成の気持ちが少しずつ変化していく姿をわくわくしながら追いかけられました。

現実に直面した2人のやりとりにも恋愛パートが上手く効いていて、それはこの結論になるのは必然だよねと思えるもの。
この辺りはテンポを緩めてもう少しだけゆっくり読みたかったかなと思いましたが、全体的な流れと攻めと受けのキャラクター性がとっても良かった1冊でした。
正直な気持ちで相手にまっすぐ向き合う2人が好きだー…!

恋愛観と仕事描写。そして、登場人物たちがそこで生きていそうな奥行きを感じ取れる生活感と、家庭や家族の描写が満遍なく作中に散りばめられていたからこそ親しみを持って応援したくなるCPになったのではないかな。
彼らが出した答えも、その後のお話も含めて明るく前向きな気持ちになれて幸せです。
リオナ先生の既刊を遡って追いかけたくなりました。

今後の展開が楽しみ

簡単には進んでくれない、一筋縄ではいかないストーリーが好きです。
どんな結末を迎えるのかが気になる作品の上位に入る作品のひとつなのですが…
いやはや、今作もすごい迫力でした。

5巻はシリーズの中でも少々重ための内容となっていますので、目次の注意書き内容を受け入れられない方もいらっしゃるのではないかなと。
覡という存在にフォーカスをあてた掘り下げ巻だと思いますので、萌え要素を求めるとそちらに関しては少なめです。
カバーイラストの印象のまま読み進めるとちょっと温度差に風邪をひいてしまうかも。
この辺りは好みが分かれるかもしれませんね。
ただ、今まで見えそうで見えなかったブラックボックスの中身が一気に目の前に押し寄せてくる、非常に読み応えのあるお話だったと思います。
5巻まで進んだからこその内容といいますか、アルトとエルヴァが出逢った1巻から謎と共に歩みを進めてきた今だからこそ、今後を描くにあたって必要なものがここでどかっと投入された。
そんな印象を持ちました。

覡とは?外の世界の人間とは?
まるで黒海のようにどす黒い謎の一部が明かされましたが、明かされても謎が残る、全てを明らかにしない話運びが面白いです。
人々から「覡様」と呼ばれながらも孤独に戦う彼らの真実がなんとも苦しいものなのですけれど、ぼかさずに容赦のない描き方をされているがゆえに、彼らの悲しみや憎悪がより強く伝わってくるんですよね。

なぜ彼ら覡は存在するようになったのか。
何を基準に色が変化するのか。
黒海はどこから生まれ、どこからやってくるのか。

自分の意思とは関係なく、たまたま花が付いてしまっただけなのに、分からないことだらけの中で命を賭して戦い続ける覡たち。
不平等で理不尽な箱庭の真実を知った覡は、一体どんな選択をするのか?
覡を取り巻く人々の身勝手さを見れば見るほど、ミカイルの選択も決して悪だとは言えないなと思うのです。
エルヴァはもちろん、すべての覡の行く末を追いかけたいです。
そして、エルヴァにとって最大の癒しであり、同時に劇薬のようでもあったアルトの出自と存在がこの狭い箱庭と四方を囲む深い海にどう作用していくのでしょうか。

萌ではないかなと、星評価で4.5寄りのこちらの評価になりました。
折り返しとのことで、カバー下の色味も夜明けに近付いてきていますね。
恋愛面も気になるけれど、それ以上に先が気になる作品です。

萌えと中弛みと

帯の煽り文にもなっている「その内」を今か今かと楽しみにしている自分がいます。

ケンカップルも巻を増すごとに少しずつ甘みが増し…な4巻でした。
可愛くねーぞと言いながらも楪のことが可愛くて仕方がないんだろうなあと、ごく普通のことのように好きだとストレートに言う常盤がとっっても良かったなあ…!
なんだかどんどん彼氏力が上がっていませんか?

なかなか素直になれない楪と、その素直じゃない部分もきちんと分かった上で、素直に好きだと言う常盤の組み合わせはこれ以上ないほど良いものなのではないかな。
普段ツンとしてしまいがちな楪が突然放り込んでくる破壊力の高い素朴な可愛い発言に、ウッとやられてしまう常盤もまた良しでした。2人とも可愛いなあ!
溺愛の片鱗を見せつつ俺様っぽさもあり、かと思えば受けの一言で赤面をしたりと、今回は受けよりも攻めの変化に萌えた1冊かもしれません。

と、2人のLOVE面は良かったのですが、個人的にはちょっと中弛みしてしまうところもありでして…
堺くんの彼女のカナちゃんが楪に対して棘のある態度を取ってくる理由が気になっていたものですから、なにかよっぽどのことがあるのかなと思っていたんですね。
でもその理由が少々パンチに欠けているように思えてしまって、尺のわりに本当にただの僻みと八つ当たりだったなあと。
楪の顔に関してもだいぶ引っ張っているけれど、うーん…
トラウマから一歩ずつ前進はできてきているものの、流れが似たパターンになってしまっているのがちょっと残念。
この2点があまりリズム良くは読めなかった理由かもしれません。
今回は3.5寄りのこちらの評価になりました。

気になる点もありましたが、2人の今後をもっと追いかけたいですし、前巻からうやむやになったままの田名部くんの今後も気になります。
ミユちゃんと富田くんがすごく良い子なので、次巻でも登場してほしいなあ。

武士とジェントルマンの同居生活

時は令和、所は日本。
大学の美術論講師として来日した英国人のアンソニーを迎え入れてくれたのは、和装に髷姿の武士だった…
と、まるで数百年前の世界にタイムスリップしたかのような出で立ちの青年武士・隼人と、巧みに日本語を操るアンソニーが繰り広げる異文化交流同居物語。

外国人のアンソニー視点で語られる日々は、ヒューマンドラマあり、ほんのりブロマンスめいた雰囲気ありのあたたかみのあるものです。
やはり、武士や侍と書かれていれば過去を想像してしまいますが…「武士が存在する現代日本」が舞台だからこそが良い味を出している作品かなと。

いわゆる武士が使うような昔言葉で話す隼人が現代に溶けこんでいるごく普通の生活を楽しみながら、先入観がない外国人のアンソニー視点で見えてくるものを追いかけるかたちになります。
現代日本に武士制度があったら?とは、これまた奇抜で面白い設定だなあと読み進めてみると、これが想像していたよりも面白おかしい雰囲気ではなく、後半に向かうに連れて少々複雑で深みのある要素が混ざり合っていくではないですか。
後半の展開がおっとなるもので読み応えありでした。
アンソニーが隼人をはじめとした登場人物たちに、武士道とはなにか?と問いかけるシーンが度々登場するのですけれど、この問いかけと人それぞれな答えが、巡り巡ってなるほどこうきたか!な仕掛けになっていて上手いなあと。

多種多様な考えや在り方が認められつつある時世が反映されている内容だったように思います。
賑やかな周囲の人々はもちろん、13歳の年の差がある武士とジェントルマンの関係性が非常に素敵な作品でした。
隼人とアンソニーの出逢いはきっとお互いの人生を変えるものになったのではないかな。

まさかこうくるとは

柳川視点の忽滑谷刑事の事件簿シリーズも5作目。
今回のショートストーリーなのですが、えっ…!もしかしてそう来るの…?!という、意外性大なもので非常に楽しめました。
これは…続きがどうなるのかがかなり気になるところです。
新装版はもちろん、こちらの忽滑谷と柳川のお話も楽しみにしている自分がいます。

いつもの流れであれば、作中で交わっていそうであまり交わっていなかったキャラクターと忽滑谷&柳川バディの絡みが、事件の調査途中にふわっと見られるものだったと思うのです。
今回は前回・4作目の特典小冊子と繋がりのあるお話となっています。続きものは初なのではないかな。
先日世話になったお礼にと、酒入が2人を食事に誘うストーリー展開。
当日指定された少々人を選ぶコンセプト店へと向かうと、そこにはなぜかそこまで親しくも面識もあまりない間柄の俳優・三谷がいて…と続きます。

三谷の困りごとがこんな展開になるとは、でした。
事件簿シリーズのナンバリングが増えていく度に、なんだかちょっと柳川の忽滑谷への印象が変わりつつあるなとは思っていたのですけれど、なるほどこう香りますか〜!と面白かったです。
芽吹いているのか、それとも香りがするだけなのか。
彼の今後が楽しみです。

それから、忽滑谷が着ていた昔父親からもらった趣味の悪い私服って、もしかして本編に登場したあの人がお父さんなのかなあなんて思ったり…この辺りも今後明らかになるとうれしいですね。
このシリーズもまだまだ続いてほしいです。

新装版番外編

新装版5作目…ではなく、番外編となります。
旧版5巻に収録されていた、暁にフォーカスをあてた番外編作品と、暁がアメリカでエンバーミング技術を学び始めた頃の書き下ろし短編「友達とライスボール」が収録されています。

やはり4巻があの展開だったものですから、どうしても続きが読みたい!と思ってしまいそうなところですが…
久しぶりに読んだこちらのなくてはならない番外編に、またしても見事に感情を引っ掻きまわされ、すぐには言葉が出ない読後感でいっぱいになっています。
綺麗なところも汚いところも含めて、木原先生は人間の生々しさを描くのが本当に上手い作家さんですよね。
だから私は木原先生作品を追いかけたくなるのかもしれません。
最後のページまで読み終えたあと、1巻から読み返せばまた違った世界がきっと見えてくるはず。
何度も読んでいるはずなのにもう1度読み返したくなってしまいました。

今作はなんといっても、高塚暁という人を知る上では欠かせない1冊でしょう。
今までの吸血鬼シリーズは、書き下ろし短編を除けば全てがアル視点なのです。
なので、読者には「アルの目を通して見た暁」の情報のみが与えられていて、その他の彼の背景に関しては想像をするしかなかった。
今作では、そんな彼の謎めいていた過去が暁視点でじっくりと解き明かされていきます。

エンバーマーの暁の元に、よく知った1人のご遺体が現れるところから始まる物語。
暁のこれまでの歩みが痛いほどにわかる、非常に濃厚でずっしりとした重みと読み応えのあるお話です。
なんだかもう言葉にならないんですよ。苦しくて。
でも、どうしようもないほどに心が揺さぶられる。
これ以上ないほどに、暁という人がどんなものを見て感じて生きて現在の暁が形成されていったのかが理解できてしまうんです。

なぜ、他人を寄せ付けたがらないのか?
なぜ、嘘が嫌いなのか?
なぜ、エンバーマーを志したのか?
なぜ、蝙蝠が好きなのか?
なぜ、生きている人間を愛せないのか?
そして、なぜあれほどまでに愛情深く優しいのか。

暁に対して感じていた「なぜ」の全てがここにありました。
1人の人間に奥行きを持たせ、どんどん立体的に浮き上がらせていく繊細で複雑な心理描写と、生きた人間の誰しもが持つ残酷な部分が容赦なく切りつけて襲いかかってくる恐怖。
隠れていて見えない、もしくは見ようとはしていないだけで、身近にあるかもしれない残酷な側面ばかりが描かれています。
なぜ大人は嘘をつくのか。たった一言がとても重く苦しい。
イグリットの真理をついた言葉がじくじくと胸に刺さりました。

暁の過去を知れば知るほど、丸腰で嘘のない感情を真っ直ぐに暁へと投げてくるアルは、もしかしなくても本当に特別な存在なのだろうなと思えてなりません。
最初から最後までどっぷりと没頭して読ませてくれる1冊でした。
5巻の前にこちらの番外編を挟んだということは、ずっと待っていた旧版5巻よりも先が読めると期待をしていいのかな。
叶うことなら彼らのこの先を最後まで見届けたいです。

こんな攻めずるい

ある日突然、大好きなゲームの世界の大好きなキャラクターが現実世界にやってきた。
なかなかに突飛な設定ではあるのですが、これが非常に面白くてですね。
転生ものというよりも、奇妙な同居生活がどんどんと心地の良いものになっていく様をこっそりと微笑ましく見守っているような、そんな気持ちになれる作品かなと思います。

どんなことにでも誠実で、包容力があって、それでいて時折誰もが赤面してしまうほどの爆弾級なピュアさをあわせ持った攻めがものすごくツボにはまった1冊でした。
いやあ、これはたまらないなあ…
ノーブルな攻めがお好きな方はピンとくるものがあるかもしれません。

前半は受けの裕貴視点、後半は攻めのドラクル視点で語られる、ごくごく普通の同居生活がメインとなっています。
…ドラクルがゲームの世界からなんらかの力によって転移してきたことを抜かせば、ですが。
ゲームの世界では貴族だったドラクルが、単身者用の裕貴の賃貸部屋で眷属のコウモリ・バーニーと共になんとも庶民的で穏やかな暮らしを送っていく物語。
もっと癖のある性格なのかと思いきや、ドラクルという人がまるでスポンジのようにあれこれと吸収する人なものですから、あっという間に日本人庶民の生活に順応していく様子が楽しいです。
裕貴にとってドラクルは、ゲーム内でのいわゆる「推し」だったわけで、初めから好感度は高い状態なんですね。
画面越しに見ていた彼と、現実世界になぜか現れてしまった彼が魅せる姿は違った魅力にあふれるもので…と、恋愛感情を抱くまでの流れがスムーズで追いかけやすいです。
2人の関係性の微笑ましさともどかしさがちょうど良くて、合間にマスコットキャラクター的なバーニーがが入り込むのも可愛らしかったなあ。

そして何より、ドラクルのスマートな攻めっぷりが素敵でした…!
自立心あり、適応力あり、受けの様子がおかしければ立ち入りたいのをグッと我慢をして無理強いをせずに見守り、愛情表現はストレートにたっぷり。
かと思えば、攻め視点ではやきもち焼きな内面がちらりと見え隠れしたりもして、妙にツボにハマるキャラクターでした。
仕事に対しても誠実なところも好感度大。

裕貴の元職場の同僚がねちっこくて若干ストレスがたまったかなあ…もっとばっさり成敗されてほしかったなとこちらの評価になりましたが、まだしばらくこの2人と1匹の暮らしを見守りたくなるくらい素敵なお話でした。
日常の中に現れた非日常が最高の日常になっていく。
ほのぼのとした穏やかさが心地良かったです。