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マスターレビューアー 「BLアワード検定」合格証 ソムリエ合格

女性みざきさん

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導入が最高

築年数が何年なのかが気になるほどの年季が入ったボロアパート。
そして、これまた古そうな畳の上でパンツ1枚だけを身にまとい、両膝をきっちりと揃えてプロポーズをする顔の良い男が1人…
と、たった1ページで掴まれました。
このタイトルでこんなインパクトのある始まり方をされてしまったら、そりゃあ続きが読みたくなるってもんですよね!

オメガバース・再会もの・突然のヒート・当て馬。
一見すると一波乱ありそうな食材が揃っていますが、蓋を開けてみればすごくマイルドな雰囲気の純愛ものだったなあと思います。
同時収録作品を含め、これは作家さんのカラーが良く出ていたのかもしれませんね。明るくてやさしいです。
読みやすいきれいな絵柄で、誰も辛い思いをしないオメガバースが読みたい方にはぴったりなんじゃないかな。

まず、自然体な2人の雰囲気がとても良かったです。
αやΩといった設定は登場するのだけれど、ごく普通の高校生2人が気持ちを通わせ合っていく描写が丁寧だったので、どちらかといえばバースものというよりも再会ものとして楽しめました。
大人っぽい王子が由良の前でだけ見せる、なんだかかわいらしい表情と一途な想いが素敵なんですよね。
ただ、この作品ならではのものがあったかと考えると、すぐに展開が予想できてしまうスタンダードさだったかなと。
掘り下げたらおいしそうな設定もあったので、細かなところも流さずにもう少し詳しく描いてほしかったです。
もっとオリジナリティがあればより面白くなりそう。

一方の同時収録作品は、内容・テンポ・キャラクターのどれもがツボにハマりました。面白かったです!
受けがかわいいのはもちろんなのですけれど、キリメンジャロ先生はどこかかわいげのある攻めを描くのがうまいなあ。
その後を追いかけたくなる2人でした。
次回作も楽しみにしております!

火花 コミック

中村明日美子 

女性に惹かれてやまないBL作

カテゴライズ的にはBLなのだけれど、どうしようもなく女性キャラクターに惹かれる作品でした。
はたして、こんなにも存在感のある素敵な傍観者はいたでしょうか。

とても正直なことを言えば、男性キャラクター2人には惹かれるものがなかったのです。
作中で彼らの不安定な関係がたびたび描かれていきますが、それが魅力的だったのかと考えると否でした。
もう勝手に2人でやってろとすら思う。
けれどこちらの評価になったのは、やはり戸森さん視点で綴られるみっともない恋の行方と、その先の描き方に惹き込まれたからなのだと思います。
これが戸森さん視点ではなかったら、きっと評価が変わっていたはず。

最初から最後まで2人の男性に振り回されてばかりだった戸森さんという女性は、どこからどう見ても損だと言える役割のキャラクターでしょう。
ですが、戸森さんは「振り回されただけの可哀想な人」には決してならないのです。
むしろ作中で1番素敵で魅力的な人物だったと感じます。
理屈ではないなにかで惹かれあってしまった厄介で動物的な2人を、時に1歩引いたところから冷静に。
時にやさしい嘘をつきながら見つめ続けた戸森さんの存在が私は好きでした。
2人には特に惹かれるものはなかったはずが、戸森さんを通して見た2人に関しては、はーやれやれと生暖かく見守られる謎。
これは中村明日美子先生のキャラクター作りが上手いとしか言いようがないですし、本当に不思議な読み心地の作品なんですよね。
なかなかにおもしろい構成の作品でした。

同時収録作の「英雄と少年」も、余韻が残る結びが印象的な作品でした。
中村先生のショートストーリーはやっぱり素敵ですね。
この先と詳しく語られていない部分が気になるけれど、気になる状態で終わらせてくれているのがまた良いのです。
短いページ数でもしっかりと掴んでくれました。

恋する描写と攻めの魅力が足りない

やさしくてさっぱりとした絵柄が魅力的な作品でした。
ホテルを舞台に繰り広げられる恋愛もの…といっていいのか、お仕事BLといっていいのか少々悩むところです。

憧れのホテルのフロントスタッフとして勤務し、なだらかな日々を送る小野辺の世界に突然入り込んできたのは、有名別企業の取締役を務める権堂という男。
彼がまあなんと、客として宿泊をしては小野辺に無理難題を何度もふっかけるわけです。
うーん…受けの心情やホテルマンとしての丁寧な仕事ぶりが見られたのは良かったのですが、攻めの魅力がいまいち伝わらずにこちらの評価となりました。

お仕事ものならば、もう少しお仕事描写がほしかったですし、そこから恋愛に持っていくのならば、どこでどう惹かれて恋に落ちたのかについて説得力がある大きなきっかけがほしかったです。
というのも、小野辺がなぜ権堂に惹かれたのかがわからなかったのです。
強引に無理難題ばかりを要求し、小野辺を引き抜こうとぐいぐい…と、私には顔が良いモンスター客にしか見えないまま萌えられずに終わってしまいました。
小野辺が気持ちを新たに仕事へ向き合おうとする心情はとても丁寧で良かっただけに、恋愛面の希薄さと結びの駆け足さが惜しいです。

良かったけれどもう一押しほしい

名倉先生作品に登場する、受けのことが好きすぎて様子がおかしくなってしまう攻めを愛してやまない自分がいます。
両視点なのもおいしかったです。
受け視点で見る大人な攻め像の崩壊といいますか、攻め視点になった途端に漏れ出てくる攻めの心の狭さと余裕のなさがなんとも愉快な作品でした。

ただ、入れ替わりものという設定もキャラクターも良かったはずなのですが、なぜかそこまでドンとは刺さらなかった不思議。
序盤で描かれていた、ヒースに靴を脱がせてもらってやっと素に戻れるロデリックだったり、そんなロデリックを愛してやまないヒースの脳内だったり、入れ替わりものならではのシーンはすごく良かったのです。
両想いが確定している上での誤解と思い込みからのすれ違いも良かったのだけれど、もう一押しなにかこのCPにどっぷり浸かってドカっと萌えられるようななにかがあればなあ。

そもそもの妹との入れ替わりのきっかけとなった国内部にうっすらと蔓延っていた膿とのゴタつきも、描くのならもう少しだけ描いてほしかったです。
何年も暗躍していそうな雰囲気があったわりに、さらっと始まってさらっと終わってしまったなー…と、なんだかちょっと小物っぽすぎて中途半端に見えたのかもしれません。
読んでいてけっして楽しくなかったわけではないですし、受けの一途な健気さと、攻めの脳内の愉快さとかっこよさのギャップは好きでした。
でも、このお値段に見合うお話だったのかと考えるとどうだろうか。
ハッピーエンド確約の安心して楽しめるお話にプラスして、もうちょっとこちらの作品ならではの工夫があったらもっとうれしかったかな。

中盤からはすごく良かった

年の差ものかつ、年齢を知った上で身体の関係をすぐに結んでしまう…なんて設定も決して珍しくはないBL界隈。
そちらも話が魅力的であるのならたのしく読めるのですが、攻め・または受けが、相手が年齢を重ねるまで絶対に手を出さない描写からしか得られない養分ってあると思うんですよね。
成長を見守りながら、心の底から相手のことを慈しんでいるのが伝わるからなのかもしれません。
そんな、丁寧な恋が描かれている中盤からの流れがすごく好きでした。
ただ、導入からの流れとそもそもの設定に首をひねることが多々あり、中立寄りのこちらの評価に。

というのも、頭が良いはずの戌峰くんの危うさがどうにも気になってしまい…
良い意味でも悪い意味でも真面目で素直な彼の行動を見ていると、なんだか放っておけないウブな子というのはバランスが大事なんだなと。
仕込み屋の忍と接点を持ち、やがて忍が絆されていくにはこの設定でなければならないよなあと思いつつ、ちょっとわざとらしさやくどさを感じたことも否めません。
戌峰くんがクズ大人に惹かれた理由も弱めだったので、正直前半は合いませんでした。
クズ大人の身勝手さもなんだかなあ…うん…

デートシーンは最高に良かったですし、先述の通り中盤からの話運びはとっても良かったです。すごくかわいい。
今回は受けよりも常識的な溺愛攻めの方に持っていかれましたね。
恋を自覚したあとの、甘みのあるやさしい口調で戌峰くんをそっと愛でる忍が良すぎました。
作画もどこを開いても綺麗ですし、前半に説得力が足りない惜しい部分が多かったことが悔やまれます。

全身に効くかわいさ

純度100%のボーイズがラブするお話って、なんでこんなにもかわいいのでしょうか…
前作同様、壁や床に溶け込んでウブな2人の最高にキュートな恋愛模様を微笑ましく見守ることができ、なんともいえない癒し度の高さと多幸感でいっぱいになれました。
好きな人と顔を合わせるだけで、話をするだけで幸せ。
とってもシンプルでありながら、恋愛においての1番大事なところを丁寧に描いた作品だなあと思います。

まだ高校生の彼らですから、恋に進路にと頭の中は大小さまざまな悩みごとであふれてたいへんなことになることも。
そんな中で、手を繋ぎながら1歩ずつ踏み出し、小さく芽生えた恋に2人でお水をあげて手探りで大切に育てている彼らを見ているとたまらなくなるんですよね。
甘酸っぱいともまた少し違って、ぽかぽかとした日向で繰り広げられるやわらかな青春…みたいな印象があります。

悩みごとも全部ひっくるめて愛おしくなるような、正直で真っ直ぐな等身大の恋の描き方が本当に素敵でかわいい。
素直に自分が思ったことを、相手のことも考えながらやさしく伝えられる2人が大好きです。
抱きしめあって、日山の肩に目を伏せて頭を預ける梓の図が何度か描かれているのですが…
この安心しきった表情を見られるのは読み手のみなのかと思うと…くっ…なんでこんなにかわいいのかよ…
どうかずっとそのまま一生幸せでいてほしい。

全方位にやさしい読み心地の良さも、こちらの作品が好きな理由のひとつなのかもしれません。
叶うことなら、その後の2人も壁の中からそっと見守らせてほしい。

なにをメインに描くか

鎖で繋がれている側が繋いでいる側を慈しむような構図のカバーイラストが本当に素敵。
作品のワンシーンを見事に切り取って具現化してくれるyoco先生の挿画が好きです。
そして、このイラストにこのインパクトのあるタイトルとくれば、やはりこれは手に取って読みたくなってしまいますよね。

手に取ってみた結果、残念ながらこちらの評価になってしまったのですが…
うーん、決しておもしろくないわけではないのです。
親友に監禁されてしまった主人公と、主人公に対する執着を纏った親友。
物語のど頭から強く興味をひかれますし、なぜ?なにが起こった?どうして?と、主人公の詩乃と読み手の思考がリンクする始まりは、つかみとしては大成功だと思います。

ただ、ストーリー構成・メインテーマとキャラクターの心情のわかりにくさが私にはあまり心地良くはありませんでした。
読み手的には監禁にいたるまでの理由を知りたいじゃないですか。
合間に監禁生活を挟みながら、バンド活動をする大学生である彼らのこれまでを追いかける形で明かされはするのです。
しかしながら、どうにもしっくりこないのはなぜなのか。

ど頭から監禁されていますし、そんなわけはないと思いつつ…彼らの過去を追ううちに、てっきり大学のバンド活動を介しての成長・青春の物語なのかと思ってしまったんですね。
でも、そうだというにはテンションが低く、低空飛行のまま淡々と進んでいくばかりでやや中途半端です。
その結果、柏木が詩乃に執着をする理由・監禁にいたるまでの理由・着地点も印象に残りにくい味付けになってしまったかなと。
さまざまなエピソードを混ぜ込むよりも、メイン2人…特に攻めの執着が次第に大きくなっていく心理描写や恋愛感情を抱くまでなど、どこか数点に焦点を絞ってくれたのならもっとおもしろくなったのではないかと感じます。
文体はとても読みやすく、345P超の厚みがあっという間だったのでなおさらに惜しいです。

味わい深い良作

初めましての作家さんだったのですが、カバーイラストの色使いを見た時点で「あっ、好きかもしれない」と、ビビッとくるものがありました。
こちらのレーベルらしいといいますか、自由で個性的な絵柄と作風がなんとも味わい深くて素敵なのです。
BLというよりブロマンスの雰囲気がある、小さな劇場で上映されている知る人ぞ知るショートムービーを観たかのよう。
そんな感覚になりながら、見事に好みど真ん中をトンと突かれ今に至ります。
コマ割りもトーンワークもごくシンプルだというのに、なぜこんなにも夜や影の表現がすばらしいのでしょう。

完璧主義の気難しいカメラマンと、ひょんなことから彼のアシスタントとなった青年の交流を描いた表題作「それでもシャッターの音は鳴る」
そして、泣かず飛ばすな小説家とアンドロイドの同居生活を描いた短編「ペンと機械と夢」の2作からなる1冊です。
静かに淡々と進むお話をじっくりと追って読みたい方におすすめしたい、どちらも噛むほどに味が出る作品だと思います。

「それでもシャッターの音は鳴る」
光を調整し、照準を合わせてシャッターを切る。
シャッターを切る人の数だけ、多種多様な魅力的な作品が生まれるのだから、カメラというものは実に奥深いアイテムです。
作中に、気難しいカメラマン・飛野の人生に大きな影響を与えた2人の男性が2人登場するのですが…
憧れ・才能・嫉妬・やるせなさの描き方が本当に巧みで、なんだかじわじわ魅せられるというか、人間ドラマがすばらしくて。
中でも、飛野と光雄の関係性がとっても良かった。好きです。
隣の芝生は青く見えるなんて言葉をふと思い浮かべながら、カメラを通じて3人の男性の遅く来た青春を見た気がしました。

「ペンと機械と夢」
アンドロイドといえばやはり、人ならざる者・完璧な存在なんてイメージがありますよね。
ところが、こちらの作品に登場するのは1体の出来の悪いアンドロイド。
読み終えた頃には、この「出来の悪い」の5文字にどうしようもなく惹かれてしまうこと間違いなしのドラマティックな作品です。
起承転結がしっかりとしていて読みやすく、読後感も素敵な良作でした。

読み終えてみると、人間の綺麗ではない部分の感情をリアルに描くのが上手い作家さんだなあと。
次回作も紙の本で手に取って読みたいです。

安心して読める関係性の良さ

3巻発売を機に1,2巻を読み直してみて感じたのは、よくあの始まりからこうなったなあ…でした。
巻数が増える毎に甘みも増していくようで、当初はまさかこんなに良い関係性になるだなんて思いませんでした。

海外への修学旅行に、身近な人々へのカミングアウトをするべきかしないべきか。
お互いのこと、将来のことをしっかりと考えながら、相思相愛度がどんどん加速していく2人のむずがゆい青さと成長が印象的な3巻となっています。

ちょっとあちこちでがっつきすぎな気がして、眼福ではあるのですけれど、内容に対してやや性描写が多いかなと思うところもありでしたが…
理央と出逢ったことによって絢斗の世界が少しずつ拡がり、元々持っていた素直さに加えて、より前向きな性格に変化していっているのがすごく良いんですよね。
逆もまた然りで、理央も絢斗の影響を強く受けて1歩ずつ大人への階段を登っている。
なにかあればきちんと言葉にして伝えて向き合える2人なので、彼らが悩んでいても安心して読めている自分がいます。
お互いにそっと肩を預け、頼り頼られながら夢を叶えて大人になっていってほしいです。

しかし、理央の溺愛攻めっぷりと襟足の作画がたまらないったら…!
首周りの作画にこだわりを感じます。好きだ。
なんというか、絢斗の前では余裕がありそうに見えて、裏ではせっせとお弁当を準備していたのかと思うと…理央、実はかなりかわいいのでは…?
次巻ではどんな姿を見せてくれるのかが今から楽しみです。

宝石箱のような1冊

絶妙にブックカバーにはまってくれない、あのハヤカワ文庫サイズで580P超の分厚さ。
なんて読み応えのあるアンソロジーなのでしょうか。

男性同士の恋愛を描くBLというジャンルに、SF要素をプラスした短編小説10作とショートコミック2作が掲載されている今作。
1作あたりの長さも読みやすく、1作1作が濃くて本当におもしろかったです。
普段BLを執筆されている印象がなかったSF系作家さんの作品が読めるのもすごく新鮮でした。
これはもう、まるで宝石箱のような1冊なのではないかと思います。

近未来、現代風、どこかにある架空の世界。
AIのようなシステムに生活を管理されることに慣れた人々や、科学技術によって寿命を超越した人々。
脳の乗り換えが可能になっている、今後もしかしたらあり得るかもしれない世界。
海からの脅威に歌い戦うファンタジー要素が強い作品もあれば、オメガバースの発見を描いた作品もあり、バース性を別の種族と角度からアプローチした作品も…と思いきや、ある日突然精子が死ぬ音が聞こえるようになってしまった1人の男性の苦悩の日々が描かれた異色作まで。

物語の舞台や設定はまさに多種多様。
とてもバラエティに富んでいて、どこを読んでも魅せてくれます。
SFとBLって、思っていた以上に相性がいいのかもしれませんね。
どの作品もカラーが異なっていて楽しんで読めたのだけれど、中でも榎田先生・木原先生・尾上先生の作品に心惹かれました。
特に木原先生はいったいどうやってこの設定を思いついたのだろう…
発想も話運びもおもしろくて、気がつけば没頭してページをめくる自分がいました。着地点がまたすごい。

近未来や、少々癖のある設定がお好きならきっと好みの作品が見つかるはず。
一気に読みふけりたい方にも、ちょっとずつつまんで読みたい方にもおすすめです。