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本格ファンタジーBL

異世界ファンタジーが好きな人は是非読んでもらいたい作品です。
奇跡が起きて問題が一気に解決するような、ご都合主義は存在しません。
困難な現実にひたむきに向き合い、苦悩しながらも茨の道を一歩一歩前へ進もうとする、主人公・エルンストの物語です。その誠実さと懐の深さに心打たれます。もちろん、それを傍で支える従者で伴侶のガンチェの愛情も必見です。
セックスシーンも濃厚で読み応えがあり、ほとんどが地の文ですがとても艶かしく、お互いが好きで好きで仕方ないという気持ちが伝わってきます。
エルンストがかなり体格の良いガンチェのことを、可愛くて愛おしいと小さな手で頭を撫でるところが萌えます! 大柄な年下の従者×小さな体の年上の領主、この関係が本当に美味しいです……!

尚、この物語はこの本で完結していません。
朔月・三日月・上弦の月・下弦の月・満月の章の中で、『朔月』と『三日月』が収録されています。
(小説家になろうのサイトですべて読めます)

以下、ネタバレです。(長いです……)

『朔月』……エルンストは病のせいで皇太子の地位を剥奪され、辺境地・メイセンの領主となります。そこで王宮の下男だったガンチェと再会し、恋愛関係になり伴侶にするまでが描かれます。
皇太子だったこともあり、恋や愛がわからないエルンストはガンチェの想いに戸惑います。その想いに真剣に向き合うため、恋愛小説を読んだり、相手を理解するためガンチェと話し合ったり(聞き取り?笑)、ちょっと斜め上の行動を取るエルンストに、真剣であるからこそ思わず笑いそうになります。

『三日月』……エルンストがメイセンの領主として貧困に喘ぐ領地を改善するため、広い視野や知識をもって、点々と孤立していた町や村がお互いに協力し合うように、可能性を紡いで発展へと導いていく章です。
BLよりファンタジー要素の方が比重として大きくなりますが、エルンストを常に傍でガンチェが支えていますので、お互いの溺愛っぷりとエロも堪能できます。
エルンストのその手腕と聡明さ、忍耐力には、本当に感服するばかりですが、この話には裏話もあり、エルンストのやるせない思いや弱音を伴侶であるガンチェだけには告げています。個人としての辛さを吐露し、また領主としての顔に戻る、エルンストの背負っている重圧に涙が出ます。それでも前に進もうとする、エルンストが語る未来を一緒に見たくなります。

さらに、続きの『上弦の月』でますます面白くなります。
なぜエルンストは病を患ったのか、貧困の辺境地に飛ばされたのか、その首謀者は、等。その身に起きた事態の原因がすべて判ります。
そして『下弦の月』まで一気に駆け抜け、『満月』でその最後に涙が止まらなくなります。

ラストの『満月』まで刊行してもらいたいですし、是非ともいろんな人に読んでもらいたい作品です。