世間から男娼あがりの性悪ビッチと呼ばれる美貌の闘牛士理央とかつて理央を弄んで捨てた男レジェスの物語。
スペインには行ったことがないのですが、読み始めからあちらの国の乾いた熱を感じさせるような出だしでした。
難聴で記憶喪失が付き人で思い人という始まりでそれだけでワクワクものでした。
やがて理央が引かれるレジェスという男がどういう人物であるかわかっていくのですが、決して理央に優しくするわけでもなく聖人君子でもありません。
はっきりいって悪くて黒い男。
でも闘牛に関する腕も哲学的な考えも一級で、理央が惹かれていくのも頷けます。
また理央の性悪ビッチを周りから言われているのに実はレジェスに一途で、レジェスが記憶喪失になっていらいずっと禁欲生活をしているという下りは本当に萌えツボでした。
また、悪夢にうなされてしまう理央に難聴であっても寝室にやってくるレジェスのシーンではこの二人は本当に深いところで繋がれりあっているんだなと感じました。
理央を守るために勇士を見せるラストシーンのレジェスの姿は圧巻です。
奈良先生のイラスト買いです。
濃いイラスト満載で大満足でした。
首輪に手首を縄で縛られての騎乗位とか、怒りにかられ無理やり攻める李煌(リーファン)の荒々しさと初めての挿入に痛がる慧の全身の様子とか鳥肌ものでした。
肝心のストーリーの方ですが、
18歳のときに香港から日本にホームステイにやってきた李煌と慧の物語です。1年かかってやっとお互いの気持ちが通いかけたときに李煌がいなくなり8年後、七夕の日に香港のスターフェリーで偶然再会するというところから物語がスタートします。
健気なヘタレ受けの慧にとっては、ツンデレな李煌はいろいろ人生経験を積んでいてセックスもやたら上手く得体が知れない完璧な男に見えるのですが、読み手から見ると(慧の章と李煌の章と交互に入れ替わるので)、李煌のもろさがチラチラチラチラ透けて見えてなんか可哀想なんです。
もの凄いセックスで経験のない慧を調教しますが、これはもうセックスではなく執着の現れのような感じがしました。
また李煌は家庭環境がかなり辛いものなので、自分がこれだけ不幸なら相手も道連れにしてしまえという感じで慧をいたぶります。しかし最初は耐える一辺倒の慧はヘタレであっても男気があるので人の心を失いかけている李煌を癒していきます。
すごくいいのが、慧が李煌を癒そうと思って献身的に尽くすのではなくちょっとした行動で示すこと。要所要所であるのですがかなりきゅんときます。
そして李煌も他人のために生きなければいけないと思い込んでいる慧を救おうとしたわけではないんだけど結果的に慧の殻を破ることになります。
出会うべくして出会った二人という感じがしました。
またこの物語はとある小道具がかなり重要な役割をしています。そこに伏線が張ってあって楽しめました。髄所で切なさを感じさせます。その小道具とはとある紙切れで、それを8年間ずっと大切にしていた慧と、そこに書かれた言葉に救われた李煌にとっては紙切れ一枚が宝物でちょっとうるっときます。そしてその小道具が最後、『ええっ?』という使われ方をしてかなり意表をつかれます。
また内面の書き方がとても上手に感じました。
メンタル破壊され十代で精神年齢が止まったかのような無邪気さを見せることのある李煌や兄の尊厳を持ったままなんとか手に入れようとする李シウ、そして物語を動かすキーとなる部下など様々な登場人物が愛を手に入れようともがいている感じがつぶさに伝わってきました。
惜しいと思ったのは、前半が濃く長かった割には山場が急すぎたこと。
もう少しページ数とひねりが欲しかったような気がします。
エロはとても濃厚で、潮吹きのシーンが二回もあるのですが、初めての潮吹きに怖がる慧と容赦ない李煌がかなりよかったです。
ツンデレ李煌(リーファン)と健気なヘタレ慧の後日談。
香港支社からサンパウロ支社に異動になった慧は空港のホテルに李煌と仲良く一泊。翌朝先に目覚めた慧は李煌の寝顔を盗撮。調子に乗って慧が李煌を抱いた後のような写真を取ろう(リバ願望ありなのか?)ともくろむのですが李煌、ちゃんと起きてました。
写真を撮らせてくれた李煌でしたがそこから彼の仕返しが始まります。
慧にヤラしい格好をさせて写真を撮り
「別れたいと言ったらリベンジポルノに使ってやるからね」
しかし、案外男気のあるヘタレ受けの慧は、
「いくら撮ってもいい。別れる気はないから」
ここのやりとりすごく萌えっとしました。
そして李煌が
「でも消せって言わないで。お守りにしたいから」
というとこにますます萌えです。