一巻に比べ、もう少しだけ素顔を覗かせるようになった槙尾。ますます魅力が増しています。
一巻の槙尾は最後まで食えない人物という印象が強く、くるくる変わる表情は本心なのか演技なのか、読者目線でも図り切れない。しかし二巻では、槙尾の本心に近いような表情がいくつか見えて来たのでは。それは誘うような色っぽい顔でも、詐欺をはたらくときの悪い顔でもなく、和智を見詰めているとき、和智を思い出しているとき、時折見せる槙尾の少し幼い表情。それを見ると、ああなんだかんだで槙尾も和智にべたぼれなんじゃないか、と。そういった細やかな表情の描き分けは見事としか言いようがないです。
そして和智。和智は単にひどい男なのではなく、ただ自分の価値観にしたがって、正直に、素直に、かしこく生きている男なのだなあという印象が強まりました。その素直さが槙尾にとってはとても心地よいものなのでしょう。恋という感情は知ったけれど、和智本人も言うように、人間的に大きく何かが変わったわけではない。むしろ変わったのは槙尾の方なのかもしれません。和智の存在が槙尾にとって大切なものとなったのだとしたら、きっとそれは槙尾の最大の弱点となるのではないでしょうか。
最後までハラハラドキドキさせられ、一巻に続きとても面白かったです。ふたりともなかなか危険な目にあっていた2巻。3巻では一体どんな展開が待ち受けていて、ふたりの関係がどう深まっていくのか期待です。