結婚式直前で自我を取り戻した元化けタヌキの奮闘記
化けタヌキだったジローは交通事故から人々を守ろうと神通力を使い果たした結果、BL世界の子爵家の末っ子ジル(受け)に転生しました。気がついた時には結婚式の直前。
なぜか新郎のアシュリー(攻め)には憎悪の感情をむき出しにされています。訳がわからないジルですが、そこで神(前世の飼い主フトシ君)からの通信が入ります。
事情を説明してもらってもどうすることもできず、そのまま結婚式は続行。
かろうじて式だけ終わらせて、初夜も何もかもスルーで放置されてしまうのです。
フトシ君のように家族をつくって幸せになりたいジローもといジルは幸せになれるのでしょうがか。
ぶっ飛んだ始まりでしたが面白かったです。
面白いのがこの主人公ジル。元タヌキって言っても100年近く生きた化け狸なんですよね。
読み始めた時は、昭和1桁生まれってタヌキがそんなに生きられる訳ないじゃんって思ってたら化けタヌキってなってめちゃ笑いました。
でも大変だけどとても幸せなタヌキ生だったんですね。
目標はフトシくんところみたいな家族を作ることなのですから。
さて、フトシ君が神にまでなってジローを転生させましたが、まだ未熟な神故上手くいかず、自我が出てくるまで20年以上かかってしまい、その間にジルの器に浮遊霊を取り憑かせて凌いでいました。その結果素行の悪い青年が出来上がり、最後に憑いていた霊が一目惚れした貧乏侯爵家当主アシュリーを金の力で婚約者から奪い取るという暴挙を果たし、やりたい放題した結果、侯爵家の当主から使用人に至るまで嫌われることになり、そこでジローが目覚めたのです。
可哀想すぎる。
案の定冷遇されまくりのジルですが、神様優遇でタヌキになる力を貰ったおかげで邸内を自由に歩き回り飢えをしのいだり、情報を仕入れたりして、上手く立ち回ります。
三年は離婚できない契約になっているので、三年で金を稼ぎ離婚して本当の家族を作るんだと目標を立てるのです。
本来なら周りの協力なんて望めなかったでしょうが、使用人が1週間放置したことで(水すら用意しなかった)侯爵家皆が弱みを握られる状態となり、ジルの意見を聞いてもらえる空気になったのは僥倖でした。
とはいえ、スピア侯爵家の人々は当主を含めて人がいい。
それまでの悪行がすごかったのに、彼らも悪かったところがちょっとあったとはいえ、そしてジルが頑張ったとはいえ、結構あっさり水に流してくれるのですから。
特に、アシュリーがジルを好いてくれるようになるとは。
前世での会社経営のノウハウを持っていたのは、没落寸前の侯爵家にとっては渡りに船でした。
フトシ君とも人間とタヌキの立場逆転ですがまたいっしょにいられるし、大団円でしたね。
みんな幸せになって良かった。
楽しいお話でした。
αの旦那様はヘタレ野郎でした
王太子ルードヴィヒが卒業祝賀会で婚約者のリリエルを婚約破棄し、新たな婚約者となったアデルの教育係となったユーリス(受け)と護衛騎士になった番で夫のギルベルト(攻め)。
アデルを狙った3件の事件のうち一つに心当たりがあると、卒業した学園へ潜入することになるまでが前巻。
学園へと無事潜入し、少しわかってきたけれど、3件の事件に関連性が見当たらず、黒幕がわからないまま。
そんな中、とうとう黒幕が動きます。
黒幕の策略になってしまうアデルとユーリスのピンチにギルベルトたちは間に合うのでしょうか。
アデルを狙った犯人は誰か
なぜ、リリエルは悪役令息の汚名を被ることにしたのか
ユーリスたちの判断の甘さにイライラしてしまう。アデルはわからないでもない。若い上に自らが優秀な魔法使いだから。
でも、ユーリスはそちら方面の力がないのだから警戒をしておかないといけないのに、簡単に罠にハマってしまうのが、読んでいて歯痒いです。
反対にアロイスは成長しましたね。
アレがなければもっと大変なことになっていたかもしれない。
この話の世界では「運命の番」というものはないようですが、ギルベルトとユーリス、ルーズベルトとアデル、アロイスとリリエルはそういうものだったのではないでしょうか。
いろんな要素が絡んでややこしいことになってしまいましたが、大変だったけどうまくいって良かった。
そして結局この二人のすれ違いの元凶はヘタレなギルベルトでした。
ギルベルトがちゃんと会話できてれば全く問題なかったし、公爵に目をつけられないで済んだし、ユーリスの誤解を助長するような結婚の仕方をする羽目になるし。
ギルベルトの長かったユーリスを想う日々の話を読んでも、全然心打たれない。
お前のせいかーって思ってしまっただけでしたね。
縁談が来なくてユーリスが自分は誰からも縁談が来ないって思い込んだのもギルベルトのせいだし。
それに内緒話は絶対に人に聞かれないところでするべきですね。アレさえなければきっとこんなに拗れなかった。
それに、社交界で冷遇されてるとか不仲とか散々噂されてユーリスが笑われてるのを放置するのもどうかと思う。もしかして知らなかったのか?
ユーリスには誤解されてても、周りには熱愛アピールしておかないから、ユーリスはイジワルされるし軽く観られるのに。
社交に関してはボンクラだったギルベルト。
若い王太子カップルの事件に振り回されて本当に大変だったけど、きっとこれくらいの危機がなければこの二人の誤解は解けなかったと思うと、ほんとしょーがない二人だなとちょっと呆れました。
最後に登場した二人の前の主人で他国に輿入れしたΩの第一王子ヴィルヘルムが前巻のイラストのイメージからかけ離れて逞しくなってるのにびっくり。獅子王の夫を尻に敷いてるのですから。
Ωだからってたおやかで弱々しい訳ではないとアデルやリリエルと共に分らせてくれる存在でしたね。
彼らが歴史を変えたんですから。
読み始めた時は。普通なら王太子ザマァ案件の話かと思っていましたが、ちゃんと優秀な子達で、愚かな王族の話だなくて良かった。
アデルは孤児院出身だけど魔力も超豊富だし、貴族に孕まされたオメガが母なのかもしれませんね。
最後の方までは趣味じゃないにしようかと思うくらい歯痒い思いをしながら読んでいましたが、読了感は大変良かったです。
長いお話が終わってあー良かったと思える話だったと思います。
できれば、ユーリスを強姦未遂したムカつく魔法省の奴らが酷い目にあってるといいんだけど。
この巻はライナルト登場しなかったし、No.2があんなんで、魔法省はどうなったのやら。
事故(犯罪ともいう)で番ってしまった俳優と建築士
一級建築士の灯莉(受け)は高校生の時に当時小学生だったαと咬傷事故(強姦ともいう)にあい、番がいる状態のΩです。
ただ、相手が精通前だったこともあり、中途半端な番持ちΩになってしまっています。
襲われた直後から記憶がなかったこと、特殊事例でβと同じ生活ができること、オメガと違ってαは他に番を作ることができるので襲ってきたαは新しく番を見つけてこちらのことは忘れてしまうだろうことから、βとして生きていこうと思っていたのに、自分を噛んだと思われるα透麻(攻め)が超有名俳優となっていて、自分を探していることを知るのです。
今更Ωになりたくない灯莉と一途に灯莉を求める透麻との攻防戦。
WEB掲載中から読んでいた大好きだった作品が、書籍化されてとても嬉しいです。
私はΩがしんどい話より優秀なαがしんどい話の方を読んでみたいと思う方なので(作者様があとがきで同じような気持ちで書いてくださって嬉しい)とても楽しく切なく透麻頑張れと思いながら読みました。
透麻は小学生の時とは違いとても誠実な男になっていて、事故の加害者とはいえ嫌悪感もほぼなく(強姦は地雷なので基本読めないのですが)、罰のような症状も受け入れてしんどい思いをしてきて、報われて欲しいと思うαでした。
灯莉はΩでも、ヒートがなかったおかげで穏やかな人生を送れたこともあって、優しい人に育っいたし、透麻がグイグイ来ることなく、灯莉のことを尊重したからこそこの結果になったのでしょう。
時々出る優秀なはずのαの変な習性。
お父さんや透麻、透麻の従兄弟が頭が悪くなったのかと思う言動が面白いです。
特に「今履いてるパンツ寄越せ(ちょーだい)」(by父、透麻)には何度読んでもその度に声が出るほど笑う。
ちゃんと番ってからの透麻は大型わんこと化してるのも、普段の俳優してる時とのギャップが凄すぎて楽しいです。
これを知ってるのはつがいの特権ですね。
そして、アレ、宝物にしちゃうんだ。
灯莉も気にしてたけど、確かに衛生的に大丈夫なのかしら?私は速攻捨てましたね。まだスマホがない時代(ガラケーですら持ってる方が珍しい)だから写真もない。
とても楽しいお話でした。
温度差の激しいカップル
ダメ元で告白したらあっさりと付き合うことになった社会人2年目の淳史(受け)。
たまたま恋人枠が空いていたから付き合うことになっただけのため恋人になった綾瀬(攻め)から好かれている実感はないまま早一年。
一年以上もったことがないという綾瀬なのでいつ別れようと言われるかとどきどきしています。
そんなとき、淳史の職場に中途採用の年上の後輩(湯沢)ができます。湯沢に教わることも多く急速に親しくなり、反対に綾瀬とはすれ違いが続きます。
綾瀬が私にとっての地雷男すぎてで読み進めるのをどうしようかと思いました。
温度差のあるカップルなので、矢印は淳史から綾瀬からしかありません。(途中から変わっていっていたとしても見かけ上は)
週末には綾瀬の家に行くけど、淳史が遊びにきても綾瀬は仕事をしたりスイミングに行ったりとセックスする以外は好きなことしてる。淳史はその間掃除したりご飯作ったりストック作ったり映画見たりやはり好きなようにしていて、通い妻かよって感じ。
すれ違いと言っても、今まで綾瀬に合わせていたのが、仕事関係で合わせることが難しくなったってだけ、あくまでも合わせてるのは淳史。
追いかけるのに疲れて身を引いてその存在の大きさに遅まきながら気づいてザマァの後元サヤっていう話を前読んだなーと思いながら読んでました。
それよりは大分マシだったけど、それでもなんでこの人が好きなんだろうと思わないではいられません。
二人が幸せだからいいのかな。
恋人らしいこと何にもしてない。
デートもすることなくて、外出するのは食事だけって恋人なのに寂しすぎる。
誕生日プレゼントは本人望んだとはいえ料理グッズだし。
それを綾瀬の部屋に置くならそれはプレゼントじゃないと思うんだけど。
せめて、それとは別に淳史のためのものも買うとかなんかないのって、どうにもこうにも読んでてネガティブな方向に向いてしまいます。
色々あって、ちゃんと綾瀬が意識して二人で生きていくって流れになったのは良かったと思います。ちゃんと淳史のためのプレゼントも用意できるようになったし。
片方だけの献身では絶対いつか破綻する。
綾瀬が淳史と別れたくなくて勇気を振り絞った時は、あの時恋愛初心者の淳史がどれだけ頑張ったかわかってほんとよかった。
とはいえ、私はこんな男嫌だなー
二人の矢印が同じくらいになってやっとスタート地点に立ちました。
二人の相性は良いようなのでこれから二人で幸せになって欲しいですね。
とはいえ、もっと酷い人間がいたので。
あの時咄嗟に綾瀬を頼り、綾瀬がちゃんとそれに応えられて良かった。あれがなかったら絶許だった。
お話の流れは面白かったけど、綾瀬がもう少し恋人としてちゃんとしてたら良かったんだけど。
すれ違いも常に受け身の綾瀬が動けば防げたことだし。
高評価の中、ネガティブなことばかり書いてしまいました。
近衛騎士で伯爵の番ギルベルト(攻め)を持つ伯爵夫人ユーリス(受け)は、王太子ルードヴィヒの新たな婚約者アデルの教育係に任命されます。
後ろ盾を持たず、王室始まって以来のオメガの王太子妃となるアデルを守るため厳戒態勢の離宮に通いアデルの教育をするのですが、アデルを婚約者から追い落とす策謀渦巻く中、ユーリスも巻き込まれてしまうのです。
王太子の婚約者は本来オメガの公爵令息であったのに、魔法学園の卒業式の断罪劇の後アデルに交代になりました。
ほとんどユーリス視点であり、10も年下の王太子の断罪劇の詳細がわからないままユーリスはアデルの教育を進めていくのです。
が、優秀であっても平民のアデルと、同じく優秀であっても傲慢な取り巻き高位令息アロイスたちを見てると、よくある断罪返しされる話なのではと思いながら読んでました。
悪い人じゃないけど、将来国を背負って立つ人たちが全員こんなで大丈夫?と思ってしまいます。
一番ダメなのはぼんくら取り巻き令息たち。
アデルのために厳戒態勢で隔離してるのにわざわざ醜聞を作るお手伝いをし、瑕疵を少しでも軽くしようと頑張るユーリスを威圧する愚かさ。
その後謝罪したけど、それは威圧を使ったことに対してであって、それよりもダメだった理由はちゃんと聞いたのだろうか。将来が不安です。
また不思議なのはアデルは王太子の婚約者になるにあたってなぜどこの養子にもならないまま婚約者になったのだろうか
普通は高位貴族に養子になって後ろ盾を持ってから入るよね。
そして、若者たちの態度。
本来なら侯爵子息と伯爵では、伯爵の方が地位が高いはず。伯爵夫人も同様。なのに彼らの態度のデカさは何なのか。
オメガの地位が著しく低い国とあって、伯爵夫人といえどずっと悪意に晒されています。
ただ、オメガの地位が低いとしても、伯爵の番に対して魔法局の強姦未遂はどう考えても粛清ものでしょ。
容疑の段階で、容疑者を強姦しようとしたクソ魔法使いどもに地獄を見せて欲しいものです。
読んでて、この乙女ゲームのその後と思われる若者たちの行動が気になって気になって。
そもそも論になるけど、王太子が平民オメガのアデルと親しくなったことが始まりで、
せめてアデルといる時は婚約者も共にいればこんなことにはならからなかったのではという思いが何度も蘇ってきて、黒幕のことが気になるのと同じように、王太子がおかしいと思ってしまう。
主人公たちは両片思いなのではないかなと思うのですが、この本ではまださりげなくの執着しか見せてません。この二人だけを見ていれば興味深いのですが、その他の要素に納得いかないことが多すぎて、全く楽しめません。
そして話のほとんどが子供達絡みなので2人の話が全然なくて。
神評価ばかりのところ申し訳ないのですが、この巻だけではしゅみじゃない寄りの中立です。
下巻に期待します。
森で隠れ住んでいた猫獣人ノエル(受け)はならず者に襲われ逃げた先で魔獣に襲われ倒れていたところを、第3皇子で冒険者のシリウス(攻め)に助けられます。
ノエルは森で暮らしていたので知識は多いのに自己評価が酷く低い、シリウスはそれを不審に思います。それは田舎では獣人差別が酷いからでした。
皇都に連れてこられたノエルでしたが、獣人の行方不明者が多発していることが判明し、ノエルはそれに巻き込まれてしまうのです。
ノエルは森に捨てられていた獣人で、老夫婦に拾われて育てられました。獣人は差別されて酷い目に遭うからと森の外には出て行かないようにと言い含められていました。
シリウスに助けられた時に、前世の記憶が蘇り、精霊が視えることで気味悪がられていたこと、幼馴染の後ろにいつもいたことなどを思い出します。
前世は今世よりもずっと進んだ世界なので、皇城に連れて行かれ仕事を与えられた時もその知識で周りから重宝されますが、自己評価が低すぎてそれを素直に受け取れません。
獣人の誘拐事件、シリウスの婚約者候補(事件の首謀者絡みで泳がせるため)、前世の幼馴染との再会などが絡み合い、不穏な空気がずっと
続きます。
シリウスは獣魔使いで、フェンリルのザフィリスと火喰い鳥のリリーネ、途中で助けた白龍のテトがノエルの心身に安寧を与えてくれます。ザフィリスは兄のようにリリーネは姉のようにテトは弟のように。
彼らは危ないところを助けてくれたり、ほのぼのした交流だったりとても楽しかったです。
特に猫の姿になれるノエルが何度もザフィリスに子猫よろしく運ばれていくシーンは想像するだに可愛くて大好きです。
腹黒なシリウスの兄の策略もなかなか楽しく、ノエルはまぁある大変な目に遭いますが、為政者はこれくらいのしないとなと納得でした。
シリウスの家族や親友夫婦など、ノエルに好意的な人ばかりで本当によかった。
これからも大変なことはあるだろうけど、幸せになって欲しいものです。
ただ、獣人誘拐の首謀者は捕まりましたが、奴隷にされ隣国に売られた彼らはちゃんと返してもらえたのでしょうか。そのあたりは書かれていなかったのでちょっと気になりました。
ノエルは精霊の愛し子でしたが、第3皇子妃になるなら、前世の知識を利用したものを普及させるのもいいですが、精霊について研究するのはどうでしょうか。
精霊が視えるひとか稀にいるらしいし(シリウスの親友然り)彼らを保護できたらいいなと思いました。
不動産営業マンのライバルからの恋人
安達友琉(受け)は支店で営業トップの成績を誇る入社3年目の不動産営業マンです。
実は、この成績ズルして取っているもので、相手の考えが読めるという能力を偶然手に入れることができ、それを駆使して成績を維持しています。
仕事は金を稼ぐ手段でしかなく、そのために営業成績を上げたいと考えてきた友琉に取って、この能力がなくなったらどうしようといつも不安に思っています。
そんなある日、能力も使っていないのにいつも成績の良い同期の久慈(攻め)から相談を受け、そのことをきっかけに親しくなり、告白されます。
なぜかその日から能力がなくなり、友琉はパニックに。
友琉は元々ゲイで、家族に馴染めず、友人にもカミングアウトしてしまってからうまく行かなくなり、恋人は依存してしまったため破局し、ずっと孤独でした。そのため、信用できるのは自分とお金だけという価値観になっています。
それなのに仕事がうまく行かず、やけになっている時に、読心術を手に入れるのです。
本当に欲しいものが手に入ったら、この能力は消えると言われていましたが、実際消えてしまったのに、何を手に入れたのかわかりません。
友琉が本当に欲しかったものは何なのか。
それに気づくまでのお話。
久慈は本当にこの仕事に向いてる強メンタルの持ち主です。
友琉はとことん真面目なところが良いところですが、そんなところを久慈はちゃんと見てくれていて、初めてわかってくれる人でした。
営業成績1位の友琉のことが好きなのだろうと勝手に思って、一位じゃなくなったらダメなのかとなかなか素直になれない友琉が、色々あってやっと自分が欲しかったものに気づいた時は、本当に良かったと思いました。
今までの分も幸せになって欲しいです。
きっとこれからも営業成績を二人で争うんでしょうね。
二人で切磋琢磨して、営業所のトップへと上り詰めて欲しいものです。
あと、上にいるだけで調子が良いだけのように見えていた上司が意外とちゃんとしてることが嬉しかったです。
竜族と虐げられた王子
現王の末子で誰からも顧みられないウルド(受け)はすぐ上の双子の兄二人によって人が入ってはいけない神秘の森に捨てられてしまいます。何とか生き延びようとしたウルドを助けてくれたのは、森の民竜人のサウィン(攻め)。
1000年以上生きるサウィンは森の民きっての変わり者で、今は木の家に飽きて土の家を作ろうとしているところでした。
手負の獣のように警戒心丸出しのウルドを手当てし、根気よく手懐けて少しづつ仲良くなっていくのですが、ある日城から迎えがきてしまいます。
たくさんいた兄王子たちが疫病で死に絶え、父王もまた病で倒れたと。
勝手なことをいう使いに対して、腹を立てるウルドでしたが、意外やサウィンは家があるなら帰ったら?と軽く言ってきます。
家族だと思っていたサウィンに軽く言われてショックを受けたウルドは城へ帰っていくのです。勉強もしていないのにすぐに即位し、年若いと舐められ隣国から攻められ、絶体絶命の時にサウィンが現れるのです。
竜人であるサウィンの考えかたは人と違う上、長寿なので時間感覚も人と違います。送り出したウルドに対しては単に家があるなら帰ってまたきたらいいと思ってるし、4.5年なんて些細な時間なので、隣人の竜人が様子を見にこなければウルドが死んだことも気が付かないままずーっと待ってたと思うとゾッとします。
時間の感覚が長いので、出会いは11歳で、連れて行かれて気がついたら21歳、国の整理でまた10年、それから二人の最期とほぼウルドの一生を見る形になります。
30歳過ぎまで、二人でいた数年以外はずっとしんどいウルド。
やっと二人だけの時間を持つことができて、今までの分も幸せになって本当によかった。
ただ、二人は種族が違うので寿命によって分たれしまうのが本当に辛くて、最後の最後に幸せになりそうな気配にほっとしました。
そこからを書くと蛇足になるだろうから、ここで終わらせて後は想像っていうのもいい終わり方だと思いました。
それにしても、森を焼こうとしたという理由で、神罰っぽくサウィン竜が2国に制裁を加えるときの時の口上の適当なこと。
竜は本当に人とは違うんだなと特に思った瞬間でした。ウルドを助けるために敵国を焼くのではなく、両方ともほぼ皆殺し。読んでてショックでした。
それでもウルドは自分を助けるためにしてくれたと恨みも何もないけれど、きっと国民は恨んだだろうなと。
気に入らないからと言って、弟を二人がかりで殴る蹴るに加えて、ナイフで切り刻むような外道な兄たちと放置したその他の王族たち。ウルドは、どうでもいいと思ってるだろうけど、国の後処理も全部押し付けてとっとと全員死ぬなんて、最後まで迷惑な家族たちでした。あれらに制裁はないなんて。それだけが納得いきませんでした。あの世で酷い目にあってるといい。
千秋(受け)は不動産屋の営業として着々と成績を重ねてきた今日この頃、何か足りない思いに囚われ、人生の迷子になっています。
そんなとき、偶然本屋で高校の同級生友光(攻め)と再会します。
料理人の友光は勤めていた店を辞め、今はぎっくり腰で店に出られない叔父の店をやっているという。
不動産屋の性でつい独立するなら物件紹介するという話になり、どういう店を開きたいかと聞くと「偏食家のためのレストラン」を開きたいと。
とりあえず、千秋をサンプルとして料理を作らせて欲しいと頼まれ、休みの日に料理を作ってもらうことになるるのです。
タイトルから主人公がすごい好き嫌いが多い食に関してわがままな人なのかと思ったら、栄養を摂るために食事するタイプでした。でも、サプリで栄養を補うタイプじゃないところがまだ救いがあるかなーと思いながら読んでいました。
友光のカウンセリングにより、食事を楽しむとか、自分の体がいま何を必要としているのかを問いかけることとかを学んでいくうちに、友光に対して好意を持っていくのです。
千秋がこんな食生活になってしまったのは、母親と祖母の影響です。
が、二人に悪気はなく「たくさん食べて大きくおなり」という考えの祖母によって高カロリーなものを食べすぎたせいで、肥満体になってしまい、それを当時好きだった人に指摘されたことがきっかけです。
そもそもの話、中学の制服採寸の時まで太り過ぎってことに気が付かないのはおかしいですね。
小学校の間は学期ごとに身体測定があって、身長体重肥満度が家庭に送られるはず。看護師だった母親がそれに気が付かないなんてありえない。
仕事で忙しかった時ならいざ知らず、再婚後は専業主婦で祖母と二人で家事を回してるなら余裕あるはず。
結局母親が悪いんだろうなってことですが、肥満体になったことで母親や祖母とギクシャクしてしまい、頑張ってダイエットした結果、リバウンドが怖くて栄養素のことしか考えられない食事をする生活に終始する、違う意味で寂しい食生活をすることになってしまった千秋が、食事の楽しさを自覚し、母と祖母と和解できて本当に良かった。
これからは料理人がすぐそばにいてくれるし、大丈夫ですね。
いつか、友光のお店を千秋がプロデュースする日が来るのかな。
食事は大事だと痛感するお話でした。
神に愛されたはずの者たちを利用する屑を倒すための戦い
流血の神子。その血液は万人な怪我や病を完全回復させる権能を神より与えられた者。
アスター(受け)は久しぶりに出た神子だった。
本来なら教団に保護されるはずだった。
が、時の王によって教団からさらわれ、戦争の道具として酷使される。
神子の力によって不死の軍隊となった軍によって他国への侵略を繰り返し、戦場は地獄となる。兵士は死になくても死ねず、流血の神子を「悪魔」「化け物」と呼ぶ。
長い戦場生活により心を無くしたアスターは、唯一の救いだった母の死を知ったショックで権能を無くしてしまい、王によって二度と出られない監獄へと送られてしまいます。
戦場は地獄だったけどここは温かいものが食べられるだけでも天国だと思ったアスターは少しでも生きやすいよう、やさぐれでしまっていた他の囚人だちを先導していくのです。
アスターは戦場しか知らないため情緒が死んでいて、読んでいて本当に辛い。
自分を不幸だと思ったことがないと、それこそが不幸なのに。
戦場に比べたらご飯が食べられる監獄は天国だと思ったけど、ここはここでやはり地獄。
怪我を治して欲しい監獄の人、死なせてほしいのに死ねない戦場の人、どちらも地獄。
血液に権能があるといことは常に自分を傷つけなければならず、常に痛みと共にあるため自分が傷つくことに躊躇がない。傷ついても痛みはあるがすぐ治るから。自分の身体を大事にすることを慮外するアスターが可哀想でなりません。
監獄での取りまとめはカリスマを持つ火傷跡があってもわかる美貌の持ち主エル(攻め)。
読んでいて彼の出自は察せられるんだけど、このエルがアスターに出会った時から何故かものすごく構ってきます。
他の皆が驚いて体調が悪いのではないかと勘ぐるくらい。
アスターは戦場でも血を抜かれるだけでまっったく大事にされたこともなく友人もいなかったことから、人との距離感がわからないので、エルは世話好きなんだなーくらいで全部受け入れてしまうから、ちょうどいい感じにアスターにぞっこんなエルに世話を焼かれるアスターという構図が出来上がります。
監獄に送られた中には、宰相のバウンスに、元騎士団長のヘクトル、発明王のルーク、頭脳明晰なセドリックと優秀すぎて王にうとまれた人物がおり、彼らといかに生活しやすくするかと楽しくやっている姿はとても監獄の中とは思えません。
それでも、そんな日は長く続かなくて、彼らは自身の平穏のために立ち上がります。
それにしても、じゃがいもが軍旗だなんて、想像すると笑えます。
アスターは最後まで屑野郎と連呼していた愚王。あの男のやったことはあまりに酷いので死という安寧を与える終わり方なのはちょっと納得いきませんが、きっと死んでも神にお仕置きされていると信じよう。
そして、読んでる時からもしかしてと思ってたらあの2人はやっぱりデキてた。
最後に明かされてやっぱりーと思うのは楽しかったです。
お母さんだけがいればよくて、いなくなったこの国なんてどうでもいいと思ってたアスターが守りたい大好きな人がたくさんでき、自分の権能を使ってでも助けたいと思えるくらいになって良かったです。
でも、アスターは本当になーんにも知らないのでエルは結構な地獄だったでしょうね。
自慰も知らないんだから。エルの気持ちを考えるとちょっと笑えます。
中興の祖としてきっと長く語り継がれるのでしょう。
良いお話でした。