表紙の画面構成とイラストの安定感から、初コミックとはいえ、描き慣れた作家さんかなと思ったんですが、お話も含めてとても安心して読める作品でした。
内容としては、高校生と大学生のお隣同士の幼なじみもの。
小さい頃は良く遊んでいたけれど、今はやや疎遠、というところからスタートです。
大学進学を機に一人暮らしを始めた誠一郎の家へ訪れたことから、誠一郎が節操無しのヤリチンになっていたということを知った健。その変化に驚きつつも、未経験で年頃の好奇心も手伝って後日突っ込んで聞こうとした健に、酔っ払った誠一郎は突然キスをして好きだと告白をするものの、翌日には無理だって分かってるから気にしないでと健の気持ちを聞きもせずに謝ってきます。
意識をするようになった健と、気のせいだとばかりにかわす誠一郎。
さてこんな二人はどうなるのだろう、というストーリーです。
節操無しのヤリチンだけど、ずっと好きで叶うわけないと思って気持ちを飲み込み続けて来たから、成就するなんて思えないヘタレな誠一郎が、私は個人的にとても好ましかったです。
片思いをこじらせちゃったリアリティも感じれたし、本当はギラギラしてる癖に、臆病になってるさまがもう可愛いったらないというか、ヘタレ攻めが好きな私にはご褒美か何かにしか思えませんでした。
ただこのヘタレた誠一郎も、健の気持ちさえ分かれば、ベッドに持ち込んでリードすることも出来るので、そこもニマニマポイントでした。
描写は薄いけど、健の方が意外と先に覚悟を決めていたりとか、一回ふっ切っちゃうと誠一郎の方が真顔でコトを進めていくあたりもなんだかリアル。
二人して恋してる男子だなぁという感じが、可愛くて、楽しい一冊でした。
あと、偉そうに言うのもなんですが、余白の使い方と、動作だけを追うコマの差し込み方がすごく素敵でお上手でした。
脇役もキャラクターに一人一人適度な厚みがあってそこも良かったです。
次作も楽しみに待ってます。
ウノハナさんの作品は初読み。
装丁も評価も良いから中もそんな外さないだろうと思いつつタイミングを逃したままでしたが、やっぱり表紙のような淡い色合いと光が似合う素敵な作品でした。
舞台は京都。
大学生の会沢はある日、隣人で同大学の院生である凛の泣き顔に「一目惚れ」をした。そうとなったら後は行動あるのみ。会沢は親しくなろうと、すげなくされても持ち前の明るさでめげずにアプローチを続ける。
…という始まりから、二人が徐々に距離を縮め、互いに心を許していく過程が丁寧で物語に自然と入っていけました。
最初は体から。
だけど、そこを許してしまったからこそ、絆されて、居座られて、居ない事が淋しくなっていくという気持ちが、凛の無意識らしい無防備な行動からのぞいて、もう可愛くて可愛くて途中ニヤニヤが止まらない。
まっすぐに凛を掴まえようと突き進む会沢が持ち前の推進力で、凛を手に入れた時は、ああ、本当に良かったとホロリ。
凛にも会沢にもこの関係は本当にかけがえのないものなんだと思える再会シーンで、この二人はきっともうずっと別れないなぁと思えて、本当に嬉しかったです。
この先もずっと二人は別れないで幸せでいてくれるんだろうなと思える良い作品です。読めて良かったなぁ。
日々の生活の中でどうしても起こるもやもやした感情を持て余した時に、私はハッピーエンドの甘い小説を読みたくなるんですが、この作品もそのリストに追加して大丈夫なものの一つ。
脳味噌に何の力も入れずに読めます。
お互いに一目惚れしたのに、経験値の低さと天然さ故にそのことにずっと気付かない奇跡の27歳、古書店経営の直史(受)と、天然な彼の性格を良く理解して世間から守り、直史からの無自覚な誘惑にも辛抱強く耐え、紳士にアプローチを続けるスペック高過ぎ大学院生の聡馬(攻)
互いが互いを大好きなのは、もう出会った瞬間からビシバシ伝わってくるので、何の心配もせずにただニヤニヤして文字を追えば、甘くてふわふわなゴールに優しく到着です。
息苦しくなるほど内面に迫っていく作品も好きなんですが、BLはファンタジーだしね、と再認識出来る良い意味でとても甘ふわな作品でした。
これは何度か再読するだろうなーと思うので萌×2!