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女性りんさん

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至高の芸人BL

八代くんがかわいい!!!!!!!!
受けの八代くんの容姿がものすごく好みで最高でした。モジャモジャ長髪センター分け三白眼……新しい……かわいい……。
序盤から中盤にかけて、八代くんは攻めの安西くんにかなりキツく当たっていますし、そもそも八代くんはまったく受けっぽくない華のない容姿だし、安西くんも八代くんにかなりドライな対応なので、なんでこのモブ(八代くん)が攻めと並んで表紙なんだろう……攻めとコンビだからかな……? と思っていました。が、後半の八代くんは完全に受け!! かわいい!! 裸で攻めに迫って「相方じゃ……勃たない?」とか言っちゃう!! あまりにもかわいい!! こんな爬虫類みたいな低体温ぽい子が相方と……すごい……エッチだ……。

ちなみにこの作品で一番ドキドキした最高の台詞は元天才芸人・城島さんの「お前が手に入んねーなら他で間に合わすしかねーだろ」というめちゃくちゃ切なカッコイイ最高台詞であまりにも最高だったのですが、いかんせん受けの大原さんの容姿がどうしても好みじゃなくて……わたしは弱い腐女子です……40オーバーリアルオヤジ受けにも萌えられるように修行します。城島さんの鋭いBLオヤジ感溢れる容姿は大好きです。

ストーリーは、BLというより、ニアBL業界エンタメ小説っぽいです。群像劇というか……リアルと言えばリアルですが、気分が悪くなるようなリアルさはなく、最初から最後までちゃんと楽しめます。
本作のリアルさの一端は安西くんと八代くんのコンビ名「ニルヴァーナ」にも表れていて、「ニルヴァーナ」とかいうしゃらくさいコンビ名、いかにもモジャモジャ長髪センター分け三白眼天才肌ネタ担当芸人(文筆業バイトしてる)が付けそうじゃないですか!? リアルだなあ!!

八代くん大好きマンとしては安西くんと八代くんにフィーチャーした続編があればうれしいなと思いますが、本作は、しっかりしたストーリーがあるからこそ読み進めるにつれ「コンビ」という特殊な関係の絆の深さに思い至り、ナマモノを楽しむように安西×八代を楽しめるのだと思います。最終ページのタイトル回収には震えました。映画みたい。
これから芸人BLを求められたらまず本作をオススメすると思います! コンビってエモいなあ。

最高の三十路受け

18歳の美形×モブ顔の三十路。
受けがあまりにもマトモな大人で感動しました……。BLではなかなか見ない誠実さ……情緒が安定している……人格者……。しかも変な頑なさはなくてただただかわいい大人。最高すぎる。受けのこと嫌いになれる人いるのかな……。
こういうひとが一回り以上年下の男の子に攻めを譲るの、包容力と愛の極致で本当に萌えます。また、攻めからのややエロい命令に恥ずかしがりつつも健気に従ってしまうところは包容力というより若干のMっぽさが垣間見えてとてもエロいです(書き下ろし)。三十路受けは余裕綽々のビッチ受けより男性経験ナシの初々しい健気受けのほうがかわいく感じます……。

わたしが感心した受けの人格ポイント
・元カノのことをちゃんと好きだった(攻めに言い寄られてもすぐに忘れたりせず一定期間引きずっている)
・朝起きたら隣に裸の男がいてもパニックになったり逃げ出したりせずにちゃんと相手に事情を聞こうとする
・食事を作ってくれる攻めに食費を払っている
・突然襲ってきた攻めを大人として優しく諭して止める
・攻めの告白を流したり頭ごなしに拒否したりせずに「ちゃんと考える」と答える
・宣言どおりちゃんと考えた結果、攻めのことが好きだという結論に至ったので、攻めにきちんと言葉で告白の返事を伝える男らしさ

こういう優しすぎる受けと強引な攻めの組み合わせは、受けが我慢したり尽くしたりすることでなんとか成り立っている気がして、ちょっと不穏な雰囲気を感じることもあるのですが、こちらの作品の攻めは強引なだけではなくとても一途で意思が強いことが伝わってくるので、まったく不安はありませんでした……。幸せが確約されたカップルだ……。おめでとうございます。

サラリーマン×売り専

人付き合いが好きではないサラリーマン×売り専。中学時代の同級生。
受けは親の借金返済と生活のために身体を売っているだけで根っからのビッチというわけではないため、ごくごくふつうの男の子の雰囲気を残しながら、ときどき無意識裡にかプロっぽい振る舞いをするのがなんとも言えず気の毒でエロいです。
攻めは……この作品は攻めがおもしろいなと思います。人とのコミュニケーションを可能な限り避けてひとりで都会生活を送る凪の心のサラリーマン。そんな彼が、町中で10年ぶりに再会した中学時代の同級生をなんのためらいもなく自宅に上げるところから物語がはじまります。
彼は早い段階で受けが売り専であることを知るのですが、結局最後まで「売春をやめろ」とは言いませんし、客に嫉妬する様子もなく、受けとのデートの帰りに平然と「(事務所まで)送っていこうか」と言い放ちます。彼は、受けのことを「違う世界に住んでいる」と認識しながら、決してその世界との境界線を跨ごうとはしないのです。違う世界から越境してくる受けをそのときどきに愛でつつ、違う世界へ戻っていくのを引き留めることなく笑顔で見守っている感じが、家に寄りつく野良猫に餌をやる人のようで、なんとなく不穏な感じがしました。
受けの身を過ぎていった出来事はハードに描こうと思えばいくらでもハードにできるところ、絵柄も相俟って全体として優しい物語に落ち着いています。ただ、攻めの人格のわずかなゆがみ、そしてそのゆがみにまったく気が付いていないらしい受けのすなおな笑顔が、この作品を単なるほのぼのBLに終わらせていないように思います。
売り専受けBLとしては教科書のようなきれいな流れでとても良いですし、うがった読み方も可能なおもしろい作品だと思います。

On Doorstep コミック

CTK 

美しい絵と美しい年下攻め

韓国では出生時に絵うま検査が行われている……みたいなTwitterジョークがありますけど、ほんと韓国からの黒船BL作家さんは絵がうまい。正しすぎるしうますぎる。だいたい美大出で外国人体型の男性を描くのが特にうまくてTwitterかTumblr見るとサスペンス系の洋ドラの流血絵がいっぱい上がってるイメージ(偏見)
ただそういう海外作家さんはGuilt|Pleasure=サン(おふたりはタイワニーズですけど)みたいにガチガチサスペンス! ヴァイオレンス!! みんなしぬ!!! みたいなBLというよりブロマンス寄りのイメージがあったんですけど本作はめちゃくちゃBLしてて萌えがあった。絵がうまくて萌えがあるとか隙がない。

ストーリー……ストーリーはですね、「年下デカワンコ×トラウマ持ち美人」という設定から想像してもらえればだいたいそのとおりです。といっても言葉選びや味付けにセンスがあって陳腐ではなく、属性が合う人には安心しておすすめできる一品。年上受けに敬意を払いつつ、ときには強引に迫るタイプの年下攻め、完璧です。年上受けが好きすぎて思わず泣いちゃう年下攻めほんと最高だな……。でも泣いてる年下攻めに対する受けの反応は「もしかして俺に自分のことを可哀相だと思ってほしいんじゃないよな?」そうそう! これこれ! 正直攻めのことはめちゃくちゃかわいく思ってるけど、言うことは言う年上受けが好きなんですよね……。良い飼い主だ……。そういうわけでキャラクター造型もドツボでした。

ところでわたしマンハッタン舞台のマンガが大好きなんですが、本作は別に舞台が東京でもなんら問題ない感じで、そこだけは少し残念……。ただ、海外の方が描く東京ってどうしても違和感があるし、かといって韓国が舞台だと意外に想像しにくいし、アジアの作家の方が描くにはアメリカはちょうどいいのかな。次作もマンハッタンが舞台なら、あの希望と閉塞がゴチャゴチャの街角と人々をどっぷり描いてほしいなあ。それで明るくBLしてくれたら唯一無二って感じだ。

しかしBLでは翻訳者の名前は出さないもんなのかな~? 本作にもクレジットがなかったけどすごく自然でうまい訳だと思いました。

一分の隙もない神作品

レビューが1件しかない……!?
目を疑ったので1巻につづきレビューします。基本的に悪い意味で言いたいことがある作品とか考察しがいのある作品とかは書くことがあるんですけど、ひたすら萌えた神作品って「萌えた」以外の言葉がなくてレビューするの苦手なんですが、一定の層にはぜひとも読んでほしい作品なので……。ていうか作品情報のところで柚木さんが「黒髪」になってるんですけど!? とりあえず修正依頼出したけど直るかなあ。髪色って大事な人には大事なポイントなので間違えないでほしい……。

それはさておき、この作品は、年下黒髪健気ワンコ攻め×自己評価が低くちょっとずるい年上美人受けです。完璧だ……。完璧な様式美だ。
瀬尾というだめんずに10年間肉体関係ありの片思いを続けていてもう心も身体もぼろぼろの年上受けを、愛と包容力とあたたかい料理で癒していく年下攻め。とにかく年下攻めの愛が深くて優しいんですよね……。年下攻めにはワンコ(年下っぽいところに受けが萌えてる)と傲慢(年上にも俺はガンガンいくぜ系)と健気(まっすぐで献身的な愛を捧げるタイプ)という3種類の要素があって、本作の年下攻めはワンコ2:傲慢1:健気7という黄金比。基本的には受けを尊重するけど、強引なところもちゃんとある。かわいいところはあるけど子供っぽくキレたりはしない。完璧。ここも様式美。

ストーリーに関しては、終始受けが自立していたのが良かったです。
瀬尾さんとの決着を自分ひとりで付けたところがすごく良かった。攻めに対する返事をちゃんとはっきり言葉にしたところも男らしくて良かった。BLなので、基本的には受けにも男らしくいてほしいんですよね(しぐさとかの問題ではなく)。とくに社会人の男性の恋愛を描いた作品で、最初から最後まで社会人らしい立ち居振る舞いをしてくれると本当に雑念なく萌えられる。ありがたい。

しかし美人受けと男前攻めのカップルは画面が華やかだな~。永遠にこのふたりの番外編を読んでたい。番外編前編の扉絵とかうつくしすぎてずっと眺めてしまう……。年上の奇麗な恋人にからかわれて攻めがたじたじなのも萌えるし、年下の恋人のことを「本当にかっこいいなあ」と思いながら見つめてる受けにも萌える……。

ところで瀬尾みたいなダメ~な当て馬攻めすきなんですよね……。自分が旅行をドタキャンしたくせにドタキャンされた側がそんなにへこんでなさそうだとムカつくってやばいでしょ。でも「いっしょに逃げよう」って、実現可能性のない夢みたいな願望を口にして自分を慰めてるのは憐れで涙がでる。「新婚旅行にいっしょにおいで」とか……もうなにも言えない。彼の思い付く愛し方はこれだけなのか……。こういう攻め、どこか精神に歪みがあって変なところが子供のままなんですよね。たぶん彼は本当に柚木さんのこと好きだったと思うんですけど、まあ人を幸せにできるタイプではない。自分を幸せにすることもできない。ちゃんと柚木さんのことを手放すことができただけでも褒めてあげたい。こういう傲慢だめんず当て馬攻めには包容力あふれる優しい攻めをあてがって攻め受けコンバートをおすすめしますね。君には人を幸せにする力はないからだれか強くて優しい人に幸せにしてもらってくれ。

理想の三角関係

美人で自立してて苦しい恋をしている年上受け。
わりとよく見る設定だし、すごく好きなんですけど、「美人」の部分に画的な説得力がないとなかなか萌えないんですよね。
その点こちらの作品は「美人」がほんとうに美人で、「男前」がほんとうに男前で、モブはモブ顔で、ご飯がおいしそうなのがまず良い。
20年選手の先生の画風についていまさらコメントするのは面映いんですけど、最近発行された作品と並べて見ても当然基礎的な画力は高いし、洗練されてるし、時代に合わせて絵を進化させるベテランの先生は本当にすごいなと。なぜ原作と作画を分けたんですか? という疑問のわく分業作品もありますが、本作はその意味が十分にあるな……と作画部分だけを見ても思うわけです。

で、ストーリー。
柚木さんがしばらくハルのあからさまな好意に気付かなかったの、わかる気がするなあ。
瀬尾さんみたいな人間に惹かれて10年も振り回されてれば自己評価も地に落ちる。だれかが自分を真正面から愛することなんて頭にもなかったんじゃないかな。この物語は、瀬尾さんという太陽に目を焼かれて自分の姿も見えてなかった柚木さんが、ハルという別のあたたかい光のもとでちゃんと自分を見つめて愛することができるようになるまでの話だとおもう。ボロボロのくせにへらへら笑ってる柚木さんが痛々しくてかわいそうで途中からなんかもうハルくん彼を助けてあげてくれの一心でページを繰っていた……。ハルはいい男だ……。いいところしかない。
柚木さんのいいところは、自立しているところと、美人なところと、年下の男の好意に対する返答を保留にして利用するずるいところ。都会の美人だけが許されるずるさですね。相手がハルだから成り立っているところもある。ていうかなんか月9みたいですね、この作品。主要人物は3人とも顔面偏差値高いし。男性だけで嫌味なく月9できるのすごいな……。また新たに本作のすごいところを発見してしまった。

萌えの分析って苦手なんですけど、黒髪年下ワンコ攻めと美人受けが好きな方にはぜひ読んでもらいたい。とにかく雑念なくもえられる神作品でした。おふたりの先生の合作を企画してくださったであろうルチルの編集さんに感謝の正拳突き……。

ハイテンションエロBL

「ハイテンションで勢いがある作風」って帯に書いてあったんですがなんか味わいのあるセンテンスだなあと思いました。帯で作風の紹介するの新しい。いやまあ確かにそうとしか言えない。正しい。まず「Yummy Yummy Boy -Yen Man No Hiketsu-」ってタイトルからして素面では思い付かない。BLトンチキタイトル界ではIQ高めだけどやばいことはやばい。¥マンの秘穴。
加えてエロい。色気を感じるかは人それぞれだと思いますがとにもかくにもセックスシーンが多くて受けも攻めも作家さんもセックスをめちゃくちゃ楽しんでてハッピーな感じ。そこらのDKの頭の中なんかどうせ寝ても覚めてもセックスセックスだよ!と思っている方にはおすすめ。わたしもそう思ってます。

内容については、わたしはビッチ受け売春受けが好きなのですが、そこらへんの趣味と合う、というわけではなかったです。受けちゃんがなんで売春してるのかさっぱりでしたし(かわいそうな理由でなくとも、とにかくお金が好き過ぎる/セックスが好き過ぎるとかでも良かったのですが)、「攻めにひどいことを言われる」「第三者にさげすまれる」「受けと他人とのセックスに攻めが割り込む」というビッチ受け売春受け個人的三大萌えポイントがどれもなかったので。
でもキャラクターが好きだったんですよね。キャバ嬢みたいな受けと性に素直なモテ男攻め。ギャルとギャル男のカップルみたいで顔面偏差値高いしとにかく楽しそうだしめちゃくちゃかわいい。Twitterでカップル共同アカウントとか作りそう。あんまりお互いの人格とか興味なさそうだしたぶん半年くらいで別れるんだろうけどそういう刹那的な感じも含めて好きな子たちだった。この乾いた感じのキャラクターでシリアスな作品を描かれたらはまるときははまりそうだなあ。

あとこの方の描くイケメンぽいイケメン好きです。絵が好き。オシャレだ。最近流行ってるわざと古い感じに寄せた画風ですね。
本作はイケメン攻めとかわいい感じの受けが2作品、かわいい攻め×ごつい受けが1作品でしたが、こんどはイケメンリア充×イケメンリア充とか読んでみたいなあ。画風にも作風にも合うと思うのですがいかがでしょう。

だれもかれも皆美形

みちのくアタミさん、初めて読んだのですが絵がうますぎてびっくりした……。とにかく絵がうまくて奇麗。「吸血鬼」に説得力がある。出てくる男みんな美形か美少年。最高に目の保養。

ストーリーのほうはまだ序盤も序盤なのでなんとも評しがたく……、読み終えて「えっもうおわり!?」と思ってしまった。流れはスムーズですし問題なくおもしろいのですが、何冊かまとめて読んだほうが良い作品かも。
高度経済成長期が舞台とのことですが、そのあたりの背景は連絡に黒電話を使用しているあたりでしか読み取れなかったなあ。わたしも好きな時代ですし、かなり調査されているようなので、続刊以降、同時代ならではの建築物や生活習慣、台詞など楽しみです。

で、問題のカップリング。外見や性格から、できれば吸血鬼×人間だといいなあ……と思っていたのですが、人間君が吸血鬼さん宅でこっそり自慰するあたりで「これは……」と思い、吸血鬼さんが別の吸血鬼さんに血を吸われて受けっぽい恍惚とした顔をしたあたりで「あーやっぱり」と思い、最後のページで人間君が吸血鬼さんを押し倒したところで「そうですよね」となりました。無念……。たぶんカップリングが合ってたら「神」評価でした……!すみません!
それにしても友達がわたしの家のトイレで自慰したらふつうに絶交しますね……。なにも言わずに許すなんてさすが吸血鬼さん懐が深い。

BL・社会学編

懐かしさ溢れる絵柄だ……。本単行本収録中一番古いものはだいたい10年前に描かれた作品ですね。こういう絵柄流行ってたなあ。顔長めでくちびるが厚くて目が大きくて……。いまは二次元でも三次元でも塩顔全盛だなあとあらためて思いました。

それはさておき、ストーリー……。重いです。
受けの子がレイプされるBLで泣いたのは初めてかも。涙が止まらないとかではないのですが、お義姉さんがベッドでふとんにくるまってる央登の頭を撫でるところでじんわりと涙が滲みました。央登(受け)が全然わめいたり泣いたり発狂したりしないのがリアルで……あまりのことになにも考えられず手足を動かすこともできずにベッドでただ横たわってるだけのとき、なにもきかない母親のような女性がただそばにいて頭をなでてくれるのってどれだけ安心するだろうと思います。央登がかわいそうすぎて、攻めとのお清めエッチがセカンドレイプにしか見えなくて「やめてあげて!」と本気で思いました。本人は喜んでたのでいいんですけどね……。

で、表題作。レイプ犯・蓮の話。蓮は悪い奴です。美貌のクズ。本人のクズさを家庭環境のせいにすべきではないんですけど、親からの愛情をいっさい与えられずに育った子供が落ちるところまで落ちていく過程を救いなく描いた話です。たぶん彼はこれからも引き返せずに落ち続けて最後はどこかで野垂れ死ぬんだろうなあ。父親に犯され、母親代わりの姉には捨てられ、この子いったいなんのために生まれてきたんだろう?

蓮が央登を見付けてターゲットにすることを決めた理由はなんとなくわかる。得られなかったものと社会への復讐のつもりだったのかな。でも央登は蓮とは違ってたくさんの人に愛されて立ち直って、蓮の行為は蓮の思うようには功を奏さなかった。出所してきた父親に声を掛けられて子供のように怯えて失禁していた彼のことを思うと、悲惨さや憐憫を通り越してただ無常感だけが残る。

ゲイカップルのやさしい生活

ダジャレだし文章調だしインスタントな出落ちラノベっぽいタイトルなので躊躇していたのですが、内容はめちゃくちゃ良かったです。
編集さんはもう少し内容のトーンに合ったタイトルを提案したほうがよかったのでは……こういうマンガが好きな読者はこういうタイトルには惹かれないと思う……。

タイトルどおり付き合って10年、同棲して6年のゲイカップルの穏やかな日常と転機を描いた作品。
受けは「ツンデレ」だと作中で評されていますが、「まあこのくらいの性格ならふつうにいるな……」と思えるレベルで、イライラしない。言うべきことはきちんと言いますし、攻めの察し能力に頼り過ぎておらず、ふつうの社会人の男性だなと思います。攻めは優しい人。特に攻めの性格が良いのでシリアスな展開に入っても読んでいて清々しい。受けが黙ってお見合いしても殴らないし罵らないし監禁しない。ちゃんと説明を聞いてくれる。すごい! 本当の意味で優しい男だ!
ゲイカップルのリアルとBLのファンタジーの絶妙なさじ加減がすばらしかった。ゲイカップルが両親に挨拶に行く話が大好きなのですが、あまりにリアル寄りだとつらいし、あまりにファンタジーだと興趣が削がれてしまう……。その点本作はあまりにも絶妙! わたしの一番好きなテイストでした。ちなみにおまけマンガは本編とくらべてファンタジー寄りでしたが、まあ最後の数ページで読者を暗澹とした気持ちにさせるわけにもいかないですし、しかたないですね。
ファンタジー波瀾万丈BLも好きですが、お互い対等に対話ができる男たちの「ふつう」の生活を描いたBLはやはり良いものです。その点で、1話目に「セックスレス」という題材を選んだのはすばらしいなと思う。

あ、あと絵がすごく奇麗です! 穏やかな話をいろどってきらめかせている。

同時収録作は打って変わってふつうのBLでした。特筆すべき萌えがなかったのでレビューし忘れていた。