2010年の冬にアニメイトで開催されたCIELクリスマスフェア。対象書籍を購入すると、四種類のイラストカードの中からランダムで一つ貰えるというのがフェアの概要。当時連載中だった『夢結び恋結び』もイラストカードのラインナップに入っていた。
表面には「We Wish You A Merry Christmas」のメッセージと、クリスマスツリーのイラスト(すべてのカード共通デザイン)。捲ると、隆明と青のイラストが印刷されている。ピンクの♥と「Merry Xmas」の文字付き。
二人の幸せそうな様子は大変結構なのだが、実はこれコミックス第4巻の口絵に使用されている(おそらく雑誌出典)イラストである。当然二人のイラストからはクリスマスの雰囲気はまったく感じられない。
他の作家のイラストカードはこのクリスマスフェアのためだけの描き下ろしだったのと比較すると、勿体ない仕上がりである。
神主×高校生の恋物語も最終巻。じれったい二人の関係にもようやく終止符がつく。
コミックスの冒頭は前巻の続きの場面から。ついに二人が一線を越える!?と思いきや、とある理由で中断を余儀なくされる。ある意味、二人らしいコミカルな理由である。未遂に終わったわけだが、隆明は「青とはこれっきりではない」と考えていた。しかし隆明が青への思いを明言しなかったために、青は最後だからサービスしてくれたのでは?と誤解する。二人の気持ちはまたしてもすれ違ってしまう。
親友の助け船もあって、やり直しのデートをする二人。ついに隆明は青に自分の気持ちを正直に伝える。やっと二人は両想いになれたのだった。
青の長い長い片思いもこれにて終わり。
引っ越しの問題も解決し、二人の幸せな日常がこれからも続くことを暗示して物語は終わる。
ボーイズラブ漫画ではあるが、カップルを取り巻く人々も魅力的で、その点でも楽しめる。最終巻では輝子(青の祖母)の孫への思いや親友・春平との友情など、彼らの優しさに心が温まった。赤(青の双子の兄弟)の片思いも応援したくなる。
愚直に「隆明さん大好き!」という気持ちをぶつける高校生・青と、振り回されているうちに青への思いに気づき始めた神主・隆明。
第3巻では青に引っ越しと転校の話が持ちかけられる。離れて暮らしていた青の母が青を引き取りたいと言い出したのだ。現在青と一緒に暮らしている祖母・輝子も「お母さんの所に行った方がいいと思うわ」と、青が母親と暮らすことを望んでいる。祖母と母が自分のためを思ってくれていることは頭では理解しつつも、踏ん切りがつかない。親友の春平の助言を受け、青は隆明をデートに誘う。
張り切ってデートに臨んだ青。しかし隆明がいつまでも自分を子供としか見ないことに気づかされる。隆明と離れるのは嫌だ。けれどこのままでは2人の関係は変わらない。青はしばらく隆明と離れることを決める。
青がいなくなってしまう……。それを知った隆明はある行動を起こすのだが。
今までは青が一方的に隆明を追いかける図式だったが、ついに隆明が腹を括って青に向き合うことに。2人の恋がようやくスタートラインに立ったところで次巻へ続く。
第1巻のラストから続くシーンで始まる2巻。
〈青、迫る→隆明、拒絶→青、ショック→隆明、動揺する〉の流れが確定。第1巻に引き続いて、第2巻もストーリーラインはこの流れにほぼ沿っている。隆明をまっすぐに好いている青。気持ちを認めたがらない隆明。二人の関係はじりじりとスローペースだが進んでいる。
二人のお話は定型通りなので真新しさはないが、本作の魅力は脇役たち。
前作『コイ茶のお作法』では小学生だった春平は、青の友人として再登場。眼鏡の美形高校生に成長し、青のために隆明を挑発する活躍を見せる。「あの人」をいまだあきらめていないとの発言もあり、前作からのファンは楽しめるだろう。
隆明の友人である谷原柊至はチャラチャラしている遊び人系。隆明をからかって楽しむ一方で、傷ついた青をさりげなくフォローする一面もある。事態を深刻に受け止めずに助言ができるキャラクターは貴重だと思う。次作『秘めごとあそび』の主人公でもある。
また青の双子の弟・赤や隆明の姉と姪も可愛らしい。
桜城やや先生のコミックにしては珍しくショタっぽい受けが主役の作品。
歴代の男前受け主人公たちに比べると見劣りすると懸念したけれど、蓋を開けてみれば本作の主人公も可愛い顔して空手の有段者。そして欲望に忠実な高校生。ショタにありがちな「ひたすら可愛い」「誰からも愛される」「守られる」みたいなところはなく、何度振られてもめげずに積極的に行動する押しの強い主人公である。
ある夜、青は夢精をする場面で物語は始まる。夢の中のお相手は近所のお兄さん的存在である神主・高坂隆明。これまで隆明をそんな目で見たことはなかったけれど、ありっちゃあり?の軽いノリで現実の隆明にも「やらしー事してみたい」とアタックする。しかし玉砕。
それでもあきらめきれない青と弟のように思っていた青に迫られ動揺する隆明。二人の恋愛騒動が始まるのだった……。
とある町を舞台にした神主と高校生の恋愛。嫉妬や三角関係などドロドロした展開はない、ある意味安心して楽しめるコメディタッチのストーリーである。受けの青はショタ系の外見と計算高い性格から好き嫌いが分かれるキャラクターだが、攻めの隆明が魅力的な好青年なのでカバーできる。
桜城ややのコミックス『コイ茶のお作法』第2巻のドラマCD版。前作に引き続き主役カップルの蓮根×徳丸と脇役カップルの志村×常磐のストーリーは音声化されたが、番外編「不幸の遺伝子2」は全面カットされている。
メインキャストは続投。新キャラクターである舟渡豪、清水直比左は特筆するような問題はなかった。個人的な感想だが、第1巻・第2巻ともに原作のイメージを損なわないキャスト陣だと思う。
徳丸が学校に持ってきたエロ本で男子生徒たちが興奮する場面は必聴。徳丸、舟渡、モブの声優陣の熱演が良い。
ただしドラマCD第1巻では登場した蓮根一真の妹・琴子と、原作コミックスでは登場する大山春平は本CDには出てこない点は少々気になる。二人の台詞は他の登場人物が代わりに喋ったり(原作の琴子の台詞はCDでは蓮根の母の台詞)、登場シーンが丸ごと無くなったりしていた。
また原作に忠実だったドラマCD第1巻に比べて、第2巻である本CDは脚色や台詞の削除・改変が見受けられた。原作の一場面(麻雀、雑誌の取材を受ける場面)をまるまる削除したかと思えば、原作にはない台詞が付け加えられている。CDの尺の都合もあるし、漫画とCDではストーリーのテンポが違うので、CDに適したテンポにするためでもあるだろう。テーマやストーリーの根幹を蔑ろにするような改変ではなかったので、これはこれで悪くはない。
なぜか濡れ場シーンが原作より長いのはBLCDならではか。主演キャストのファンには堪らないところだろう。
オマケ音声は『コイ茶のお作法』CM。徳丸と蓮根が本CDを宣伝する。動揺してボケる蓮根とまともなツッコミを入れる徳丸、という普段とは真逆な二人の漫才が楽しめる。
原作漫画は『コイ茶のお作法』(桜城やや)。
原作コミックス第1巻の「第一席」~「第三席」、番外編「甘い生活」「不幸の遺伝子」を音声化した作品だ。第1巻に収録している「第四席」(第四話)は音声化していないが、ストーリーの切れ目を考慮すると第三席(第三話)までのCD化でちょうど良かったと思う。
台詞や展開は原作どおり。テンポ良く進むので、聴いていてストレスもない。演者もイメージ通り。成田剣さん演じる蓮根一真には色気があるし、高橋広樹さんは徳丸円のやんちゃっぷりを生き生きと演じている。大人の恋の志村啓吾×常磐水晶編では、志村役の津久井教生さんの真性ゲイっぽい演技が良かった。
意外なオマケも聴きどころ。
まず原作より濡れ場が長い。原作では蓮根×徳丸の絡みは最後まで描いていないが、ドラマCD版では喘ぎ声やエロい台詞を追加し、フィニッシュまでしっかり音声化。
さらに端役で吉野裕行さんや鈴木千尋さんが出演されている点も聞き逃せない。特徴的な声なので、ガヤなのにすぐそれと判る。
何より驚いたのは「不幸な遺伝子」のドラマCD化。まさか女の子しか登場しない百合風味な短編「不幸な遺伝子」も音声にするとは思わなかった。男ばかりは飽きた、たまには女の子の声も聴きたいなというときにはいいかもしれない。
『コイ茶のお作法』も4巻で完結。最終巻となる本作ではクリスマス、徳丸に恋する小学生、蓮根の過去の男登場がメインエピソードとなる。
クリスマス編は蓮根が徳丸に指輪を贈るお話。
クリスマスは恋愛ものに欠かせないイベントだが、受験生という主人公の立場を考えると、素直に楽しめなかった。パーティしている場合じゃないでしょう。指輪云々は受験終わってからでいいのでは?
桜城先生の絵もストーリーも好きなのだが、『コイ茶』後半の受験を舐めた描写は最後まで残念だった。受験生なのだから、ラブラブより勉強を重視すべきだと思う。BLはラブが基本かもしれないが、締めるところは締めてほしかった。
受験終了後は、徳丸を慕う小学生・大山春平や蓮根の元彼氏の存在が浮上してまたまた騒動に。徳丸と蓮根はお互いの気持ちを再確認し、ハッピーエンドになる。
フィナーレは、高校の茶室にて。
蓮根と徳丸が出会い、茶道の特訓をし、愛を育んだ場所だ。
第1巻では蓮根が徳丸に茶を点てた。
そして最終巻では徳丸が蓮根に一杯の茶のおもてなしをする。
茶道の心と二人の想いが重なる瞬間、物語は幕を閉じる。
蓮根と徳丸の物語もついに3巻目。
季節は夏。受験の天王山と言われる大事な時期だ。しかし蓮根は進路がなかなか定まらない。成績も悪いし、将来やりたいこともない……。とりあえず教師に勧められた体育大学への受験を決めて勉強を始めることに。蓮根は忙しい茶道の稽古の合間を縫って、徳丸に勉強を教えるが……。
受験を舐めている徳丸に苛立ちを感じる巻だった。
徳丸の成績はぎりぎり。志望大学を決めた理由もテキトー。
そんな生半可な気持ちでいいのか?本気で勉強しなくていいのか?将来へのビジョンが具体的に決まらないのは仕方ないにしろ、勉強せずに蓮根と遊ぶのおかしいのでは?徳丸の態度と行動に??ばかり感じた。
ストーリーの中盤、徳丸は登場人物たちからも将来に具体性がない点や半端な気持ちである点を突っ込まれる。そこで改善するかと思いきや、徳丸は能天気なまま。小学生の面倒を見る。受験生のくせに空手合宿に行く。線香花火で遊ぶ。いい加減受験生だと自覚しろと言いたくなった。
おバカで楽観的なのは徳丸の長所だ。2巻までの学園コメディでは、徳丸の明るさは物語を盛り上げて面白くしていた。しかし受験という現実的な問題に直面すると、徳丸は愛すべきバカではなくただのバカに見えてくる。受験生なのに怠けて遊んでいる姿に不快感しかない。受験をテーマにするなら、もっと真剣に勉強する姿を描いてくれれば主人公たちの好感度も上がったし、読後感も良かったのに勿体ない。
同時収録作「更待月」「不幸の遺伝子3」は第1巻から続くシリーズ。和菓子職人・啓吾×挿絵画家・水晶編には水晶の叔父が登場する。徳丸妹&蓮根妹編は2Pのお話。本編より出来がいい。
高校三年生に進級した徳丸と蓮根。受験生になった二人だが、いまいち緊張に欠けたまま新学期がスタートする。
それでも環境は少しずつ変化していた。
徳丸の所属していた野球部は人数不足で解散。さらに徳丸の憧れの先輩・豪が留学から帰国し、徳丸のクラスに転入する。徳丸は豪の叔父の道場で空手を再開することに。
また徳丸と蓮根の関係が妹にばれてしまうアクシデントも発生する。
やがて蓮根は茶道家元になる自分の将来に疑問を抱き始める。このまま茶道の道へ進むのか、新しい道を探すのか。蓮根の決断は……?
高校生ならではの進路の迷いが描かれる。家元の地位の重み、家庭の事情といった重くなりがちな展開だが、悩みを吹き飛ばすぐらい真っ直ぐで直球思考な徳丸に救われる。
番外編の和菓子職人・志村啓吾×官能小説の挿絵画家・常磐水晶の二人は相変わらずのあまあまである。
また「不幸の遺伝子」シリーズが続いていて、楽しい。妹たちも兄たちのように仲良くなってほしい。