下衆受けはよくあるジャンルかもしれませんが、この漫画は一味違います!
猫を被った小泉くんが下衆な自分を見せる一方で、大好きな柏原くんへのアプローチ方法が分からず空回りしてしまう姿は涙ぐましく、読みながら「がんばれー!」とつい応援したくなります。
図書館で眠っている柏原くんの顔を見て1人ドキドキしている様や面と向かって柏原くんに「嫌い」と言われた時の落ち込みようはとても人間くさく、まさにこの漫画のタイトルは読者の声援に聞こえるようです。
「それは恋だよ!小泉くん!」
小泉くんが真っ向から告白するラストシーンはさすが秀良子先生という感じ。宇田川でもそうでしたが最後の落とし方で読者はグッと惹きつけられます。
勢い系エロBLが苦手な方も、表紙のイメージに反して繊細な小泉くんの恋模様が見られるのでぜひ読んで頂きたい作品です。
読み終わるとBLを読んだ時の満足感よりも、良い小説に出会った時のような充実感の方が大きい。
転生、着物、黒髪、そしてアングラな雰囲気という腐女子の大好物を存分に含んでるためこの本を好きな人は少なくない。ただ一方で、耽美すぎていつもハイテンションエロを読んでいる人には物足りないかもしれない。
中村明日美子からエロを引いてレトロさを足した感じと言えば伝わるかしら?
色々な考察が出て来そうな結末であったけど、私個人でも考察してみる。
先生は前世で殺した男の子達全員に同じ殺され方をしないと死ぬことができない呪いをかけられていた。
主人公は前世で自分を殺した先生を殺さなければならない呪いをかけられていた。
(その他の男の子達はあくまでこの呪いに必要だっただけで呪い自体はかけられていない。それゆえ記憶がなくなるだけで終わった)
そのため、最後に主人公が先生(山田くん)を殺した時に呪いは解放され、2人がこの世に生まれた理由がなくなり存在がなかったことになった。(主人公の母親が息子の名前を忘れるシーンはこれに繋がる)
呪いから解放される(主人公に殺される)先生が初めて「恐怖」という名の幸せを感じる一方で、呪いを解放するため好きな人を殺さなければならない主人公。
2人の想いが異なっていても行き着く先が殺し殺される関係であることが、この本の深いところ。
複雑な関係性が好みだという人にオススメしたい作品。