最初、この前作『窮鼠はチーズの夢を見る』を読み始めたときは、
「ありきたりで、エロなリーマンものか~?」
と思ったのですが、読むうちにグイグイと引き込まれていきました。
たぶんそれは、この作品の持っているリアリアティゆえなのでしょう。
「流され侍」
最初は、本当の愛を知らない恭一。
せまられたら、イヤと言えない恭一。
これ以上、ピッタリの言葉は見つからない。
よく言ったもんだ!
う~ん、ネーミング上手し!
そして、「流され侍」の成長の過程が、この物語の究極の醍醐味。
「流され侍」は、本当はただ真実の恋愛を経験したことがなかったのかもしれない。
たった一度、読むのではなく、何度も何度も読み返したい作品です。
読み返してみると、
「ああ、これはここの伏線になっていたのだなぁ」
という細かな作者の配慮に気付きます。
そして、細かな配慮に気付くと同時に、恭一が今ヶ瀬に対して、どんな思いを抱えているのかが、深く理解できるようになるのです。
恭一の成長っぷり。
最終的に恭一が下した決断は涙ものです。
萌え要素もたくさんあるのだけれど、それだけじゃなくて、深く考えさせられる作品だと思います。
ワガママを言うなら、この続きが読みたい……。