なかなかにボリューミーでした。
本作は狼男×吸血鬼。
狼男のかのんはその美しすぎる容姿のせいで
吸血鬼に執着されては職場を辞めることになるという
トラブルに繰り返し巻き込まれていました。
ある日、吸血鬼にしては貧相な姿のネイロに出会い、
彼に血液を提供する仕事に誘われますが…。
吸血鬼嫌いなかのんですが、少しずつネイロに絆されてゆき
いつの間にか甲斐甲斐しく世話を焼くようになっていて
人狼の包容力に尊みを感じました。
ネイロもはじめこそ血液を手に入れるためとはいえ、
吸血鬼らしくなく控えめで穏やかで、
貧相バージョンも読み進めているうちにじわじわと浸透し、
可愛くみえてくるようになっていました。
本来は雇い主と雇われる側の二人ではありますが、
互いが互いの身体を尊重し合っていて、
そんな二人の優しい関係性にも表情筋が緩みました♪
ゲイの六郷は仕事での怪我をきっかけに退職し、
新たにシェアハウスに住むことになりますが、
同じ住人の朝三に恋をしてしまい…。
なんというか…
表紙やタイトルからはもっとがっつりどエロを想像していたのですが、
欲求に飲み込まれそうになりながらも耐え抜いて、意外と理性的。
また、本作はDom/Subユニバース作品ではないけれど、
作中で朝三を通じてドミナント/サブミッシブの要素が語られたり、
SMとの違いが指摘されていたり、ある種の知識的部分でも興味深かったです。
六郷も朝三も出会った瞬間から互いに惹かれ合ってはいるものの、
それぞれドミナント・サブミッシブとして魅力を感じているのか、
恋愛的な意味合いで惹かれているのか、自覚までちょっと葛藤しています。
とはいえ、二人ともほぼ好き同士なので、甘々ではあります。
が、せっかくの性癖ものなので、もっとぐずぐずになるまで
甘やかして、いじめちゃえばいいのに!と少々物足りなさも。
今作、続きものということで2巻もお待ちしております。
Dom×Switch。
Dom/Sub作品も大分増えてきて、
近頃では自分の好きな傾向もわかってきました。
今作は健気なSub(Switch)と、相手を大切にできる誠実なDomという
まさに自分のツボなDom/Subユニバースでした。
Switchの東乃はSwitchだからこそDomにもSubに寄り添える
自分の特性を生かしてDom専用クラブの黒服として働いています。
ある日、顧客の西條の相手をしていたキャストがドロップしてしまい、
代わりに西條の相手をすることに。
すると、西條とのプレイを通じて誰にも言えなかった欲求が満たされて
いくことに気付いてしまい…。
第一印象は俺様Domかと思われた西條ですが、
東乃に対する接し方はむしろ誠実でプレイ時ですら紳士なのです。
そんな西條とのプレイを重ねる度に惹かれ、次第に溺れてゆく東乃。
黒服のときはどちらかというとクール美人な印象だったので、
西條に甘やかされて蕩け顔を浮かべる東乃のギャップにキュンと
きてしまいました///
1巻から最終巻まで中弛みすることなく、
読み応えがっつりな作品でした。
この3巻ではクロとの子供を授かったルカが遂に出産を迎えます。
今までは寡黙で対人においても不器用で何かとルカに救われることが
多かったクロでしたが、今回は妊娠を経て自らの身体が変化していくことに
怯えるルカを包み込んでくれるクロが頼もしかった…!
自分の村人に対する悪感情よりも、なによりルカのために
村での暮らしを受け容れてくれたクロ、男前すぎました。
そして、驚いたのは出産シーンが生々しい程にしっかり描かれていたこと。
これまでも男性妊娠が可能なオメガバース作品では
受けの懐妊という展開はあれど大抵は妊娠→産後と省略されていて、
子供を宿してから産むまでの葛藤だったり、実際に痛みや苦しみを
伴う出産描写が細やかに描かれる事ってほぼなかったように思えます。
産気づき痛みに呻くルカを必死に支えるクロやノア。
文字通り、みんなが一心同体で新たな命を迎えた出産シーンは
安っぽい言葉になってしまうけれど、本当に感動的でした。
産後は予想通りの親バカになってしまっていたクロの
子育て風景にもニヤニヤが溢れました♪
また、今巻ではノアの過去についても明かされていました。
はじめはなんでここにきて突然ノアの過去語りに…?と思いましたが、
彼の過去こそこの物語の根幹ともいえる大切なものでした。
世界のあらゆることを知っていて飄々としていたノアですが、
その過去はとてつもなく切なく号泣必至でした。
まさかノアとヴェレにこんな絆があったとは…
クロにとって母のような存在で大切なヴェレでしたが、
ノアにとっても友人であり、恋人でもあり、家族だったんですね。
クロがヴェレについて語っていたときですらも
感情を露わにすることのなかったノアですが、
心の中では悟られることなく涙していたのかもしれません。
今巻で終えてしまう本作ですが、どうやら番外編が決定したようです。
ルカとクロとの物語がもう読めないなんて…とページをめくるたび
寂しさが増していたので、最後の最後の朗報で歓喜してしまいました♪
ああ…なんだろう。
読み終えた今、本作を表現する適当な言葉が見つかりません。
この感情にぴたりと嵌る言葉が見つからないのですが、
もし擬音で表すならばきっとズドンとかそんなかんじ。
深い穴の底から抜け出せない。
それは決して絶望とは限りません。
人によってはこれ以上幸せな結末はないと思うのかもしれない。
ただ、この結末を絶望と表現するにしろ、幸福と表現するにしろ、
胸が抉られることは間違いありません。
禄斗と七海は恋人同士。
子供の頃からずっと一緒で幼馴染の七海を誰よりも愛している禄斗ですが、
恋人との生活の中でふと違和感を感じる瞬間があり…。
物語は禄斗視点で始まります。
日々の中で禄斗は七海に対して感じる違和感から
「まさか七海も人間のフリをした宇宙人だったりして」と感じるシーン。
はじめは何言ってんだかと思っていたけれど、
この他愛ない冗談こそが意外にも物語の根幹であったりします。
七海視点に切り替わり…
なんと“宇宙人”というのが禄斗の方だったことが判明。
正しくは“寄生生物”とのことですが、いずれにしても人外であり、
人の姿をしているのは彼ら寄生生物が生きてゆくために
宿主が望む“誰か”の姿に変身しているのだとか。
ちなみに禄斗自身には自分が寄生生物という自覚はなく、
自身で作り出した偽の七海との思い出を本気で信じ込んでいます。
禄斗の場合は七海の死んだ恋人の姿でした。
恋人を喪い、絶望の中にいた七海の前に突然現れた“恋人の姿をした何か”
それが禄斗でした。
戸惑いながらも禄斗を受け容れてゆき、今では幸せそうな二人。
けれど、その幸せな日々の裏には七海の罪がありました。
そして、罪を重ねることで二人の幸せは緩やかに崩壊してゆきます。
二人の不幸は禄斗の食性が“人肉食”であることでした。
この時点であ、ムリという方もいるかもしれません。
受けと攻めのどちらかが人外という作品は決して少なくないし、
その場合は血液や精気で栄養を摂取するという設定が多いけれど、
本作はそこに逃げることなくあえて茨の道を選んだのでした。
そのため七海は禄斗を生かすために人を殺し続けなければならないし、
禄斗は知らず知らずのうちに人の命を奪い続けなければなりませんでした。
二人の愛は誰かの犠牲の上にしか成り立たなかったのです。
何も知らなければ幸せのままでいられた禄斗。
けれど、ある日、偶然にも“同種”と鉢合わせてしまい、
自分の正体が何者であるかを知ってしまいます。
そして、自分を生かすために七海が罪を犯してきたことも。
全てを知ってしまった禄斗は罪悪感に苛まれ、
そんな禄斗と七海は二人だけの世界に旅立とうとします。
結末は正直なんとなく想像はついていました。
だって、どうあがいたって幸せいっぱいのエンドなんて無理に決まってる。
唯一の救いは最期の瞬間まで二人の互いへの愛が全く揺らがなかったこと。
寄生生物として本能的に七海の望みを叶えていたにすぎない禄斗ですが、
彼に人としての心があり、七海を愛していたこともまた事実なのです。
たとえ禄斗が何者であっても彼と一緒に生きるために自らの手を汚し、
愛を貫いた七海。
食事を摂れなくなった禄斗に自らの血肉すら捧げようとするその狂愛に
涙がせり上がってきました…。
だけど、ラストの七海の手だけが映ったワンシーン。
その傍らには一緒に飛び降りたはずの禄斗の肉体はなくて。
ずっと一緒だと言っていたのに。
ひとりぼっちでおいて行かれた七海の姿に胸が締め付けられて苦しかった…。
宿主を喪い、姿を変えて次の宿主の元に現れた禄斗。
やっぱり禄斗は人間ではなかった。
最後の最後では寄生生物としての本能が七海を愛した心を消してしまったのか。
死がふたりを分かつまで、なんてのは人間以外の生物には通じないし、
結局人間だけのエゴなのかもしれない。
だけど、それでも死後も七海の隣には禄斗が寄り添っていて欲しかった。
こんなにも胸が引き裂かれそうで、
息が詰まる気持ちになるなら気軽にオススメなんてしてはいけない。
だけど、どうしても読んでほしい。
藤峰式節炸裂!
ラブもコメディも最上にして最高の1冊でした♪
売れないライターの遊里はある日、ゲイ風俗を経営する友人から
イチ推しキャストの“オチ●ポレビュー”なるものを依頼されます。
当のキャスト・カイ自身はタイプド真ん中のイケメンではあるものの、
無口で無愛想で即「星1」と見切りをつけようとする遊里でしたが、
いざ“オチ●ポ”と対峙するとその存在感に衝撃を受けてしまい…。
「…宇宙?」「邪神」「パワースポット」
「発電所並みのエネルギーを感じる…」
「人生奪われる」「ご利益ありそう」
カイのオチ●ポに圧倒されすぎた遊里の口から出てくる表現が面白すぎました。
そ単語、オチ●ポに使うの初めてみました…とばかりにパワーワードの連続!
そして、一度抱かれたことでカイのオチ●ポの虜になってしまった遊里。
そのレビューへのすさまじい熱量が文章にも溢れ出てしまい、
まさかの人気オチ●ポレビュアー(何それ)になってしまいます。
その後、カイのオチ●ポレビューがSNSでバズったおかげで
遊里の元には他の店からもオチ●ポレビューの依頼が入りますが、
それを知ったカイは嫉妬してしまい…。
カイは愛想はないし、遊里はオチ●ポのことしか頭にないし、
こんなの一体どうやってラブに持ち込むんだろうと思いながら
読んでいたのですが、ちゃんと芽生えてゆきました、愛。
もはや崇拝に近い程のカイのオチ●ポに寄せる賞賛は
彼にとっては特別なものになっていったんですね。
遊里にとっても途中からはそれはただの仕事のレビューではなく、
カイに宛てたラブレターになってゆきました。
そんなかんじで言ってしまうとなんだかとてもロマンチックなんですが、
ここに至るまで一体何回“オチ●ポ”って書いたんだろう…。
そうして遊里への恋心を自覚してゆくカイですが、
心が遊里以外を抱くことを拒んでしまうのか勃たなくなってしまいます。
そのせいで顧客からは星1評価ばかりが届き…
ただ借金を返すために顧客を抱くだけだった自分に遊里がくれた星5。
それも全て無駄になってしまったと悩み、遊里を突き放してしまうカイ。
けれど、そんなカイを自分なりの方法で彼の役に立ちたいと
遊里が起こした行動が胸熱でした。
カイに届いたたくさんの“ファイブスター”
それはまさしく遊里にしかできないことでした。
そして、時は経ち…
遊里の元に借金を清算し、お店を辞めたカイが現れます。
感動的な再会からハッピーエンド!ではあるのですが…
ここ、ちょっと唐突に感じてしまいました。
二人が再会するまでにどれだけの時間が経過していたのかも気になるし、
突然現れたカイ登場からの告白→恋人エッチと
ゆっくり味わいたいシーンなのにハイスピード展開なのが惜しい。
実はそんなに時間は経ってないのでしょうか?
両想い後は待望のあまあまエッチです。
離れていた時間が愛を深めたのか、愛おしげに遊里を見つめるカイ。
エッチもいつもより糖度高めで、これからは遊里だけのカイなんだなぁと
恋人同士になれた事実がじわじわと沁みわたります。
ただ、最後の最後まで遊里への「好き」が聞けなかったのは残念。
言葉にせずともダダ漏れではありますが♡
めちゃくちゃ純愛でした…。
10年も離れていたはずなのに、
その空白を感じさせない重み、純愛が胸に沁みわたります…!
カメラマンの壬生は大学の後輩の結婚式をきっかけに
かつての親友で想い人の筒美と再会します。
学生時代は親友同士だった壬生と筒美ですが、
酔った勢いで初夜を共にしようとするも失敗してしまいます。
そして、大学を卒業してからは10年間音信不通になってしまっていた二人。
再会した筒美は実家の温泉宿を継いでいて、
結婚式で泥酔した壬生は宿へ連れてこられていたのでした。
10年間、会いたくて仕方なかった筒美を前に戸惑う壬生ですが、
当の筒美は10年ぶりの再会だというのに昔と変わらない笑顔を浮かべ、
彼の営む温泉でリフレッシュと称して長期滞在を勧めてきて…。
一体、筒美は何を考えているのか?
そもそも、10年前に先に連絡を断ったのは筒美の方でした。
彼から避けられていると思った壬生は見限られたと考え、音信不通に。
けれど、壬生の瞳に映る筒美の表情は見限った者のそれには見えません。
壬生に褒められればうっすらと頬を染めたり、切ない表情になったり、
どこからどうみても想い想われ真っ只中の恋する男の顔なのです。
そんな筒美の反応にほんのわずかの希望を見出した壬生は
10年越しの恋を今度こそ諦めないと心に決めます。
そこからはあっという間。
壬生が想いを隠さずに伝えると、筒美もまた同じように返し、
学生時代からずっと両想い同士だったことが判明します。
ようやく想いが通じ合った二人は
かつて失敗した初夜をもう一度やり直し、結ばれます。
一見ザ・俺様男な壬生ですが、筒美に対しては
どこまでも一途で誠実で、案外溺愛体質なんです。
その優しさはエッチの際にも気遣いとして現れていて、
自身もかなり切羽詰まってはいるものの、筒美の身体を気にかけながら
まるで宝物に触れるみたいに優しい営みに愛がひしひしと感じられました。
念願の恋人同士になり晴れてハッピーエンドと思ったのに、
壬生の才能への嫉妬と恋心の間で葛藤し、壬生から逃げてしまう筒美。
筒美から避けられて納得いかない壬生はすぐに筒美の元に駆けつけるも
「お前といるとつらい」と別れを告げられてしまいます。
けれど、そんなことで折れる壬生ではありませんでした。
なんせこの恋、10年ものですので。
縋る想いで筒美に会いにゆき、
壬生の好きなところ、離れていた間のこと、
筒美への激重で包容力の塊のような爆デカ愛を伝える壬生。
会えない間も自分で撮った筒美の写真がを眺めていたという壬生の言葉に
10年間忘れることのなかった筒美への想いの強さが伝わってきました。
自身のコンプレックスすらも受け容れてくれる壬生の深い愛情に
筒美が出した答えとは「こんな俺でも一緒にいてほしい」でした。
うう…本当によかった…。
「よかった」と涙を流す壬生に読者ももらい泣きしちゃいそうでした。
本当に見かけによらず一途で愛情深くて、男前なんだよなぁ。
ラストは図らずも筒美からのプロポーズで
10年後、20年後も笑い合う二人を思い浮かべながら読み終えました。
末永くお幸せに~!
「俺のものにならないなら、いっそのこと殺してやる」という
イカレた帯に誘われて。
いやぁ…帯に違わぬイカレサイコ攻めでした(誉め言葉)
大学生の真白は近頃ストーカーと化した元カレから
嫌がらせを受ける日々を送っていました。
ストーカーメールに、校内では性事情を噂され…、
そんな真白を気にかけてくれるのは隣人で友人の敦樹だけでした。
ある日、敦樹から好意を伝えられた真白。
友達だと思っていたのに優しかったのは体目的だったから?と傷つき、
敢えてセックスに誘い失望させてやるはずが、甘く執拗な敦樹の責めに
快楽のあまり気絶してしまい…。
それからも逃げてもつれない態度をとっても諦めない敦樹。
「可愛い」と甘く執拗に愛でてくれる敦樹に絆されてゆく真白ですが、
そんな中おそるべき事件が発生します…!!
真白の部屋に ヘ ビ が 出 現 !!!!!
え、一体どこから来たの?
これも元カレの仕業か・・・?
怯える真白を守るように抱きしめる敦樹。
へびは俺がなんとかすると告げて一人真白の部屋へ赴き、
すかさずナイフを取り出してへびを撃退してくれた敦樹。
そして、動かなくなったへびに暗い笑みを浮かべて一言。
「ご苦労様。ありがとね」
これで察しの良い読者様はお気付きですね。
そう、敦樹は真白を守ってくれた勇敢な王子様ではありません。
全ては敦樹の計画のうち。
真白の部屋にへびを放ったのも、
元カレからのストーカーメールも、嫌がらせの噂も…
全部真白を手に入れるために敦樹が仕組んだことだったのです。
恐怖に震える真白に優しくキスをして
「蛇からも元カレからも俺が守ってあげるから」なんて言ってるけど、
おまわりさん犯人コイツです・・・・・・・!!!
そこからは真白が求める甘い言葉と態度で尽くし、
真白が落ちれば今度は歪な独占欲も隠さずに支配して、
真白を自分以外の者に触れさせないように束縛し始めます。
大学の友人にも「真白に手出したら殺すよ」と脅しに掛かり、
もはやサイコみが隠し切れなくなってしまっている敦樹。
そんな恋人の異常性を前にして、
普通なら怖がるか逃げるの二択になるのだと思うのですが、
この真白さん、「そんなにも自分を想ってくれるの?(ぎゅんっ)」と
ときめいちゃってます。
いや、そこ擬音ぞくっとかじゃないの…?
その後もLINEの連絡先を勝手に消されても
「でもいいんだ、敦樹が不安がるから」と敦樹の執着を全肯定。
まさかの受け側もヤベぇ奴でした。。。
サイコ×ヤンデレという史上最悪の組み合わせでくっついてしまった二人。
敦樹の異常なまでの執着愛に幸せいっぱいの真白でしたが、
元カレが現れ敦樹に関する衝撃のネタバレをされてしまいます。
元カレの証言によって自分が敦樹の思惑に嵌められていたことに
ようやく気付いた真白は敦樹の部屋で決定的証拠を発見してしまいます。
遂に自らの悪行の何もかもを知られてしまった敦樹ですが、
悪びれるでもなく昔語りを始めます。
それは真白が忘れていたとある少年との思い出。
実は小学生の頃に出会っていた敦樹と真白。
その頃から真白に特別な感情を抱いていた敦樹は
偶然友人の恋人だった真白と再会し、奪おうと動き始めたのでした。
そんな記憶と自白を淡々と口にしながら、
絶望に打ちひしがれて泣き叫ぶ真白を犯す敦樹が怖すぎます…。
その後、全てを知ってしまった真白を自由にしておくはずもなく。
素っ裸の真白を縄で拘束するも元カレの元に逃亡され
→当然のようにGPSで居場所を突き止め追いかける敦樹。
もうここまで来るとどこに出しても恥ずかしくないサイコ野郎。
さすがの真白も愛想が尽きたでしょ?
と思いきや、敦樹を警察に突き出すという元カレを
「それだけはやめて!」「それでも好きなんだ」と引きとめる始末。
そうして拒み切れない真白は元カレ同伴で敦樹と対峙しますが、
自分の元へ戻らない真白にキレた敦樹はナイフを振り上げ…
緊迫の修羅場からのまさかの展開でした。
え!そうくるかぁ…
“究極の愛”ってなんだっけ?
真白のメンタル、最強すぎんか?
予想外の結末で結局はバカップルの痴情の縺れに見えちゃった…。
元カレくん、感動の涙を浮かべていますが、この状況でよく感動できるな!?
「俺のそばにもずっといてね」と天使の微笑みを浮かべる真白に
「当たり前だろ、一生離さない」としっかりサイコな笑みでラストを
締めてくれた敦樹でした。
とは言え、いちおうハピエンです。
二人にとって幸せならば、誰が何と言おうとハピエンなのです。
史上最速で読了してしまいました。
だって、上巻から全く展開が読めなかったんです。
先が気になってそりゃページを捲る手も俄然早まるというもの。
さて、上巻では蛍の死のビジョンを見てしまった晶が
蛍を助けるべく奔走するところからスタートしましたが、
後半では蛍のみならず晶にも身の危険が押し寄せて…。
物語は蛍を救うために奔走する晶の“未来”の世界と、
晶を助けるために奔走する蛍の“過去”の世界の、
二つの世界線に分かれて展開してゆきます。
曾我部という第三者の視点を利用しながら
わかりやすく“Aの蛍”と“Bの蛍”として描かれてはいるものの、
正直一度読んだだけじゃ難しいかもしれません。
理解した上でもう一度読むことで馴染んでくるので、
二往復は必須かもしれません。
ただ、難解だった分、バラバラに散らばっていたピースが
一つ一つ嵌り物語が一つに繋がってゆくラストは圧巻でした。
一見何気ない思い出すらも無駄はなく、あれもこれも伏線だったのか…と。
誰よりも理解し合っていた二人なのに、
ほんの小さな祖語からすれ違ってしまい、10年も離ればなれだった二人。
だけど、その間も片時も忘れなかった蛍の純愛にぐっときてしまいます。
未来と過去が交錯し、なかなか再会できなくて焦らされっぱなしでしたが、
長い空白を乗り越えて再び繋がる二人の絆は尊さが溢れていました。。。
どちらかというとラブよりもストーリーに比重が置かれているので、
BL要素は薄めですが不足分の糖分は描き下ろしで補充できるようになっています。
しかも、“Aの蛍”ルート版と“Bの蛍”ルート版と
2つの世界線の後日談が読めてしまう豪華っぷり!
やはり事件を経験した二人の方は若干しんみり&熱量があって、
それに比べると事件を回避した二人の方はほのぼの感があって、
どちらも雰囲気は異なりますがどちらもよかったです。
本作は従兄弟同士の晶と蛍の絆と純愛を描いた物語。
ミステリーやサスペンスの要素も濃厚で読み応え抜群です。
ただ、上巻は登場人物たちの背景や二人が巻き込まれてゆく
事件の序章にすぎないので上巻だけでは正直何もわかりません。
従兄弟同士の晶と蛍は17歳の夏を最後に疎遠になっていました。
“未来を見る力”をもつ晶と、“過去を見る力”をもつ蛍。
それぞれ異能力をもつ二人でしたが、
だからこそ二人だけにしかわかりあえない唯一の理解者でもあり、
友達よりも、家族よりも、特別な感情を抱いていました。
けれど、17歳の夏、晶は蛍からキスされる未来を“見て”しまい…。
「助けてほしい」
蛍の衝撃の登場から始まった上巻。
蛍を助けるために奔走する晶ですが、
何やら晶にも身の危険が押し寄せているような…。
まだまだ謎は多く、二人の未来が全く見えてこないラスト。
急ぎ下巻へ!