無垢な神官シリーズのスピンオフで、2020年の「聖なる騎士は運命の愛に巡り合う」の続巻。本作だけでも楽しめるけど、「2度恋に落ちる」を堪能するため、できれば前作の再読をお薦めします。
記憶喪失からの2度恋に落ちる設定は、古からの定番ではありますが大好きな神設定です。2人はなぜ惹かれ合ったかという本質を問い、運命と魂の証明をする物語のように感じられます。
ティモはこのシリーズの不憫受け・可哀そう受け担当のような印象。本作でも容赦無く不幸が降りかかります。記憶を早く取り戻したいと焦るクラウスに対し、ティモらしい労りに満ちた声を掛ける場面。そうだった、ティモってこういう人だったと、前作でクラウスがティモに惹かれていく様子の記憶がよみがえります。読者にデジャブのように想起させる展開がさすがです。
そしてティモもまた、記憶を失えどクラウスらしさを見るにつけ、尊敬の気持ちを新たにします。
あとがきで、釘宮先生の当初の意図に反して、クラウス自身?がティモを選んでいたと知ってびっくりしつつも、2度恋に落ちるだけの強度のある2人なんだなと思いました。
個人的には、記憶を取り戻す前に、どうしようもなく惹かれてベッドインするパターンの方が好みではありますw 記憶を失った状態でなお、お互いを選び取る方が、魂の証明としてはより鮮烈に感じます。
個人的な解釈ですが…ティモのキャラクター上、自分よりふさわしい人がいるのではという自信の無さからくる迷いが根っこにあるので、このルートはない。
クラウスは自分に自信のある人なので、自分の選択を疑わない。だから記憶がなくても、ティモの手を離すという選択肢は取らない。自己評価が低くて迷いの多いティモと対極的に感じます。
記憶にこだわるティモに対し、2度恋に落ちるのはクラウスだけのように感じられて、少し物足りなさはありました。
ティモの揺らぎはリアルで魅力でもある一方、物語的カタルシスはやや控えめになる印象です。終盤でティモが自身の迷いを反省する場面がありましたが、本当にちゃんと反省してくれたかなあ?クラウス自身、かわいそう受けが好きだし(証拠はあるw)、このまま囲い込まれる未来が見える。できれば、割れ鍋に綴じ蓋的な話で終了せず、ティモが自分の価値を掴み取るところまで昇華して欲しいなとは思います。続巻希望です!
本作でもおなじみの動物達が大活躍します。優しく賢くて頼りになりすぎる。ピーノとロッコは銅像立てていいレベルだと思う。
教団により神の代弁者として仕立てられ、幼少期に薬で五感を鈍らされた受け。第二王子である攻めはその事実を知り、教団を追い詰めていく展開は読み応えがあり、筆力の高さを感じます。一方で、五感の不自由さゆえ常に庇護され続ける構図は、救済であると同時に囲い込みにも見えます。物語の構造そのものが庇護を完成させており、その徹底ぶりには強いフェティッシュを感じます。攻めの周囲のキャラクター達がツッコミを入れることで、辛うじてバランスを保っています。
受けが自ら主体を取り戻す展開はまだ描かれず、次巻以降、五感の回復がゴールになる予感もあります。徹底した溺愛にカタルシスを見いだせるかで、評価が分かれる一作だと思いました。このまま完璧な共依存へ突き進むのか、気になる反面、次巻を読むかは少し迷うところです。
改めて見直したら、文庫の帯に「番を囲い込む究極の独占愛」って書いてありました…以後、気を付けます。
クセ強な母方の実家に身を寄せた序盤からの王都編。亡くなった祖母は、かつて王妃の護衛を務め、「暴虐のロザリア」という二つ名を持つ伝説の人。平凡な顔立ちで祖母似のアルヴィは、王宮では婿に欲しい養子に欲しいとモテモテ。偉人似というチートは、平凡受け設定と相性がいいなと思いました。ミッションによって大きくなったり小さくなったり、王都編はコナンみが増していますw
鑑定スキルによるステータスオープンで、文春並の情報収集力を発揮するアルヴィ。役に立つというより、書かれている情報の面白さの方が印象的で楽しい。
土魔法は地味だけど極めると凄いぞとか、ニッチなところに光を当てるのがとてもうまいなと思いました。既存の価値観を覆すようなディテールの積み重ねが面白い。
登場人物が多いので、記憶力的に少しつらかったw 名前という固有名詞は覚えられないけど、なんとなく関係性は記憶しているので、今話してるこの人はたぶん?と文脈から推理しながら読み進めました。
前巻の感想の中で、いくつか年齢差を指摘する声もありましたが、王都編では、攻めの兄が2人の関係性にツッコミを入れることで、ガス抜きしているようにも見えます。
魔物暴走による悲劇が、いろいろな人物から語られます。みんな深い心の傷を負ったけれど、アルヴィはじめ、後を継ぐもの達との生活の中で癒やしと救済を得る。このかつての悲劇に触れるフェーズは繰り返され、久臥先生が重要視されていることが分かります。
領地経営、祝福の克服、そして悲劇の地での遺骨奪還。次巻以降の展開が楽しみです。
原作ファンです。花柄先生の原作を読んだ時から、コミカライズやアニメ映えしそうだと感じていた本作。日野先生のコミカライズと聞き、絶対に読まねばと楽しみにしていました。
受けのかわいらしさや植物チートという設定、どでか動物達との関係性の面白さはそのままに、日野先生ならではの色気マシマシな攻めが、原作とはまた違った魅力を放っています。
植物チートをフルに生かしたストーリー展開も面白く、1巻ではハラハラ展開!というところで次巻に続きます。
ズボラなわたしには、スローライフという名の丁寧な暮らしはハードルが高いですが、とても憧れます。読むだけでおいしい空気を吸うような癒しが得られる一冊。農場経営系ゲームがお好きな方にもおすすめです。
よりたっぷり世界観に浸りたいと思った方は、小説もぜひ。
kindleアンリミに収納されたと聞いたので、お祝いがてらレビューを寄せました!
恐竜が通う学園が舞台で、攻めがT-Rex、という後にも先にも無い、唯一無二な世界観の本作。ダイナミックな情景が浮かぶ描写は、コミカライズやアニメ化しても映えそうなストーリーです。(作画コストが高くつきそうゆえ、実現してないんだろうなあ)
わたしが特にお気に入りなのはやはり1巻で、攻めが受けに陥落するシーンを見事に描き切った、圧巻の一冊です。10年前に初めて読みましたが、今でもあの印象的なシーンを思い返すとじわっとくる。攻めが自分の世界を塗り替える瞬間という最大級のカタルシス。
重厚すぎる地獄系は体力が続かない…という方にこそ、この見事なバランスの本作を読んで欲しいです。
可愛らしい表紙イラストが印象的で、ジャケ買いする方もいるのでは。かっこいい攻めの溺愛・熱視線と、赤毛の受けのかわいい姿が和みます。
大食らいのやんちゃオメガという珍しい設定です。
パーティーで助けてくれた攻めのことを忘れられない受けは、ストイックに自分磨きを重ねて嫁入りの日を迎えます。
受けには三人の姉がおり、前作同様に女性の登場人物が多い点も印象的です。
受けを全力で支えながらも、素の受けが一番魅力的だと悔しがる侍女の言葉に、ほろっときます。抱いてもらえない悔しさに歯を食いしばる受けの姿は面白すぎるし、また戦略を練る侍女は武将のようですw
受けの家族構成や、自分らしく生きるという根底のテーマに、ふと「若草物語」を思い出しました。
意地悪をしてくる地雷女子も登場しますが、受けが反撃するための舞台装置として機能しており、お茶会の場面では、のろけマウントをかましまくります。地雷女子側にも事情はあるとバランスを取ってはいますが、手加減はしませんw
攻めはこじらせ気味で、両片思いのような関係が続きます。ジレジレもだもだ感を堪能できるラブコメでした。
6巻はいよいよクライマックスに差し掛かり、畳み掛けるようなストーリー展開と、怒涛の感情のカタルシスが際立ちます。
汚泥の中に咲く花のように、逆境の中でも皇子然としたリドリーに惚れてしまったのだと、ニックスが語るくだりが胸に響きます。
攻めのシュルツには「少年は神」シリーズのランスロットに通じるものを感じます。(一途なドーベルマンタイプでめちゃめちゃツボです。)
マッドは妹の仇である一族郎党に復讐した情の怖さを持つ男で、夜光作品の中ではこれまでにあまり見なかったタイプです。
個人的に復讐もののコンテンツ自体は嫌いではないものの、BL界では耽美優先でナルシシズムが強すぎたり、筋違いの復讐に踏み込んでいたりと、地雷率が高くなりがちだとも感じています。
その点、夜光先生はギリギリを攻めるハラハラ感はありつつも、越えてはいけないラインはきちんと守る。そのバランス感覚は、さすがベテラン・レジェンドだなと改めて思いました。
一族郎党殺しという重い十字架を背負い、後半から登場するキャラクターである以上、ランスロット並みの主役級になることはないかもしれませんが、絶妙な役どころとして配置された闇落ちマッドの人生はとても気になります。
次巻がとても楽しみです。
作家買いということもありますが、「元カレが教育係」というパワーワードに惹かれ、ワクワクしながら手に取った本作。実生活では元サヤなど考えたこともありませんが、BLにおける「二度恋に落ちる」展開は大好物。用法を守れば、2人の関係の唯一性をぐっと強めてくれる神設定だと思います。
海野先生といえばのお仕事ものですが、今回はプリンティングデバイスメーカーが舞台。攻めは、どちらかというと普通の人間くささを感じる人物で、ロマンス詐欺に遭ったトラウマを抱えています。人生の一番悪い時期に受けと出会ってしまったがゆえに、すれ違ってしまった2人。真面目で面倒見がよくしっかりものなのに、どこか不器用でスキのある攻め様。実在したら、気づいた時には沼オチしてそうで、「ガチ恋製造機」というのも分かります。このタイプ、動物にめちゃめちゃ懐かれるタイプだと思うw
受けはまっすぐな性格の体育会系で、好意を隠さないワンコタイプ。攻めと一緒にいる時の、しっぽ全振りみたいな様子がとても可愛らしいです。不器用な攻めとワンコ受けという組み合わせ自体も意外性がありますが、物語の軸がどちらかというと攻めの成長に置かれている点も珍しくて印象的です。
手強いインターンの存在や、昇進試験にまつわる課題を2人で乗り越えていく展開は、お仕事ものとしても読み応えがあります。この2人がいる営業部の担当になって、ずっと眺めてたいですw
受けは部活でキャプテンを務めていたリーダータイプなので、将来的に攻めを追い越していく可能性も感じさせますし、逆に攻めが昇進をきっかけに覚醒し、頭角を現していく展開もあるな。。。と妄想が捗りました。
二度恋に落ちた2人の絆はとても強く、しっかりと人生を共に歩んでいってくれるだろうと感じられました。
海野先生のお仕事ものは、自分の職場の隣の駅あたりで起きてるラブストーリーのような、距離感の近さが魅力です。
受けは追憶と罪の意識を抱えており、物語の前半にはやや重苦しい雰囲気が漂っています。一方、10歳年下の学生である攻めは、恵まれた出自や若さゆえの天真爛漫さがあり、彼だけがキラキラと色づいて見えるようでした。受けの世界はセピア色を思わせ、攻めの存在だけが鮮やかなコントラストになっている、そんな印象を受けます。
1000ページ近い長編なんですが、前半の鬱屈した描写はかなり長く感じられます。個人的には、もう少しコンパクトでもよかったのでは、と思う部分もありましたが、物語が動き出してからはとても良かった。2人で部屋を整頓していく中で、長く使われていなかった大きなガラス窓が現れる場面はとても象徴的です。光が差し込み、風が吹き抜け、景色が見渡せるようになる描写は、受けの心境の変化と重なり、印象に残ります。恋人のハミングを聞きながら寝そべる光景がロマンティックです。
攻めの進路のために距離を置くことを選ぶ二人ですが、ふとした瞬間に攻めの残像を感じてしまう受けの描写が切なく、胸を打たれます。若さゆえに突っ走りがちな攻めに対し、周囲の大人たちが厳しくも温かく見守り、時にツッコミを入れてくれる関係性が丁寧に描かれており、年齢差のある設定でも安心して読めるバランスになっています。
脇を固めるキャラクターたちも魅力的で、物語に厚みを与えています。また、魔術に関する設定やディテールが細かく描かれており、世界観が好きな方には特に楽しめる作品だと思います。
一方で少し気になったのは、物語の鍵となっているはずの「禁書」の扱いです。禁書とは何だったのか、亡くなった「彼」の名前や記憶のことなど、はっきりと回収されないまま終わったように感じられました。物語の主軸を感情の回復に置いた結果なのかもしれませんが、あれは事故だった、という印象だけで終わるのは、ややもったいないように思います。続編があればぜひ読んでみたいです。
読む人を選ぶ作品かとは思いますが、はまる方には刺さるタイプの物語だと思います。
蛇足ではありますが、最後にタイトルについて。欧米の文芸小説を思わせる響きで印象的ではありますが、BL小説として考えるとやや異質にも感じました。もう少しラノベ寄りの分かりやすさがあっても、より多くの読者に届いたのではないかな、と思います。
1~2巻を通しての感想です。
冒頭はやや強引な展開で始まりますが、物語が軌道に乗ってからは違和感は薄れました。受けがしたたかでたくましい性格のため、読んでいてストレスが溜まりにくい点は好印象です。
日本酒の描写には少し残念さがありました。専門的な知識が必要なジャンルについては、きちんと調べるか、無理に細部まで書かない方が良いと感じます。「日本酒」とだけ書いておけば、冷蔵前提の生酒か、常温保存できる醸造酒かは読者が脳内補完できる部分でもあり、下手に具体化したことで、かえって違和感が生じています。
また、超強い攻めであるカイルが、なぜ・どのようにして奴隷に落とされたのかという経緯の詰めが甘く、どうしても引っかかりが残ります。終盤で種明かしをする為に棚置きしたんだと思いますが、「一生一緒にいよう」と誓う相手の出自を確認しないまま物語が進むのは、さすがに不自然に感じました。ここは詰めて欲しかった。
2巻に入ると、エロ描写が前面に出てきて、エロのフルコース状態になります。また、ストーリー面の粗さが目立つようになりました。カイルの「焦げた匂い」の謎も、服の摩擦によるものという回収には拍子抜けで、この伏線自体が不要だったように思います。
さらに、攻めが王子であるにもかかわらず、元SEの受けが王になるという展開も、そこに至るまでの説得力が不足しており、戸惑いだけが残りました。ちょっと変わった設定にしたかったのだと思われますが、「元SEが王になる」ことの必然性を提示するのは、簡単ではないように思います。個人的には、無理に受けを王に据えるより、過保護な魔王の攻めという立ち位置の方が、この作品にはしっくりきたのではないかと感じます。