体の自由を失っても、耳だけは聞こえていた攻め。周囲の人々の態度が次第に変わっていく中で、受けだけが彼を人間として、尊厳をもって扱い続ける。
体のコントロールを取り戻した攻めは、受けを見つけられないまま失意のうちに過ごす。再会までに約一年、物語の三分の一をかけて、二人は「会えそうで会えない」状態が続きます。再三ニアミスが続き、読んでいてじれったく、やきもきしつつも楽しい。
なんにでも食べ物に例える受けが可愛い。そして、「本気で喜ばせたいなら、楽をしてはいけない」と考え、また「この感動を保管するにはどうすればいいか」を真剣に悩み、受けと食事を共にするそのひとときの美味しさに心を震わせる攻めが望外に可愛い。
お互いをつい見つめてしまう食事シーンは、ロマンティックで本当に美しい。
攻めが受けへの思いをどう伝えればよいのか思いあぐね、途方に暮れる場面は切なく、電車の中で読みながら目をシパシパさせてしまった。涙がこぼれないように、Xの邪気に満ちたポストを眺めて気を紛らわせてましたw このシーンは、ぜひお部屋で堪能されることをおすすめしたい。
ある日、突然体が動かせない寝たきりの生活になる、というのは、戦争状態に突入するより確率は高いわけで、より身近に、ひやっとする現実的な恐ろしさを感じる題材。母と子の愛と葛藤を描きつつ、BLならではの魂の結びつきへと昇華させた素晴らしい作品でした。
のっけオープニングから、福澤節。追い詰められてパニックになる主人公。転移元でも転移先でも、人から選ばれる為に頑張らなければならない役どころで、息苦しく恐怖指数高め。神子のバトルロワイヤルみたいな雰囲気でお話はスタートします。表紙のキラキラ感との落差よw
福澤先生の物語は、特に出だしは不穏なムードのものが多い。親によるネグレクトだったり、親戚たらいまわし等、不幸な子供が自分の心を見つめながら、人生を構築していくストーリー。本作も心の闇や痛みに対する解像度が高い。切望に似た承認欲求。。。
受けはアイドル/神子なのに、やややさぐれキャラ。仕事に対するプロ根性が尊い。手負いの猫のように警戒心の強い受けだけど、攻めの特殊能力もあって、徐々に心を開いていく。自分にしか懐かないって萌える。。。後半、攻めによる怒涛の推し活がおもろいw
終盤の展開、ライバルの神子が殺された理由がよく分からない。生贄って書かれてはいるけど唐突に感じました。もう少し背景の作り込みをしてもらった方が納得はしやすかったかと思います。
オープニングが面白すぎる。再召喚された神子なのに、「貴様、どこから入った?」と不審者扱いされて剣を抜かれるくだり、コントとして秀逸すぎるw モブ萌えにはたまらない楽しいお話の始まり。
前回の召喚を経て現実世界に戻ったものの、しょっぱい現実を経験して辛酸も舐めつつ、果たすべき責任もちゃんと果たして…という地に足のついた神子という設定も良い。
教皇メルディは、普段は怠け者なのに決めるときは決めるというギャップのあるキャラで味がある。神子召喚の重みを語るシーンでは、召喚する側の倫理と罪まで描かれていてハッとした。あまり他では見ない展開だと思う。
攻めは愛する相手を亡くすと狂ってしまう為、受けが死ぬ時に俺も連れて行けと言う。殉愛は重いな~と思いきや、受けが俺の方が長生きするからいらない心配だと男前100点の回答を出すというBL的着地でとても良かったw
オープニングではモブラブコメかと思いきや、終わってみれば殉愛を背負ったけっこうシリアスなお話でした。個人的には、世界観が壮大なだけに、もう少し情景描写にもスケール感が欲しかったところ。
次作の「転生した兄上~」では情景描写、話のテンポ感も素晴らしかったので、1作ごとに進化されてるんだな(偉そうw)と感じました。作品ごとに完成度が上がってて、今後も追いかけたくなる作家さんです。
WEB小説らしい一人称文体で書かれています。独白シーンがやや冗長でテンポ的にはもったりした印象です。もう少しスッキリ整理した方が読みやすいと思いましたが、その点を差し引いても素晴らしい世界観・魅力的なストーリーの作品です。無数の光苔が取り巻く光景に、かつての思い出の地を重ねるシーンが感動的。淋しさを情景に語らせる素晴らしいシーンでした。他にもアニメ化したら映えそうなシーン多数。植物チートである設定や、人間・動物との関係性も魅力的に描かれています。農場系・レストラン系ゲームが好きな人にも刺さりそう。体格差萌えは卒業したのでノーコメントですが、むしろ鎧萌えか?と思うくらい、攻めがなかなか鎧を脱がないの独特でしたw
受けは蛮獣と忌避される霊獣を持って生まれ、幼い頃に王命で国を追放される。攻めは、幼少期にはどうすることもできなかった無念さを抱えながら、受けを取り戻すために執念で力をつけていく。受けを宮殿に迎える為に周りに頭を下げる様子が感動的。巧みに伏線を貼りつつ、回収しつつ、テンポよく話は進み、退屈なシーンは一つも無く、あっという間に読んでしまった。小山田あみ先生の描く竜がド迫力でとても美しいです。右宰相家、左宰相家という対をなす設定ゆえ、あまり対格差の無い2人が霊獣と共に並び立つ絵も見て見たかった(作画カロリー高そう)。初読の作家さんだったんですが、遡って他の本も読んでみたいです。
個人的萌えポイント
①本音が霊獣の様子からダダ漏れになる
②霊獣の声が渋い(ウヌ・ヌン)
③攻め受けであまり対格差が無い(少数派?)