真夜中であるにもかかわらず、寝ることも忘れて、じっくりと、一字一字漏らさず読ませていただきました。さすが木原さん、今回の作品も読んでいる最中、胸にかすかに切ない、けれど甘い痛みを伴うものを感じさせてくれるような作品でした。木原さんの作品を読むたびに湧き起こるんですよね。これが萌えという感情なのでしょうか(笑)
相手への複雑な感情(木原さんの作品の場合、憎悪など負の感情がほとんですよね)から転じて好意、愛情へというものへの移り変わりが自然に、けれど心情や風景・物事の描写から読者に感じさせるものがある。それをBLという枠内で表現することができるのだからやはり木原さんはすごい。
ですが、実をいうと本作品では、榛野(受)の感情を吐露する場面にて、少し違和感を覚えたりもしました。違和感というより、少し危機感を覚えたというか・・・私もしかしたらこの受け嫌かもっていう(苦笑)1部のラスト、榛野が感情的に暴露という名の告白をし、それに対して動揺する谷地(攻)の様子から、「あ~なんだか、最終的に、榛野に流されてくっつくというラストになるのかなぁ」と思ってしまって。けれど、最後まで読んだ今では、そんなこと全くなかったと断言できます。2部を読み終えた今では素直にそう思えます。そしてラスト、もしかすると少し物足りなさを感じる人もいるかもしれませんが、私はこのラストもとても気に入ってます。人が恋に囚われ、あたふたする様ははたから見れば滑稽なのかもしれませんが、コントロールのきかない感情を押さえつけようとあがく、それが人間であって、そこが面白くて良いのだなぁと改めて気づかされる作品でした。