もう、素晴らしいの一言。骨太なストーリー・魅力的なキャラクターたち・作り込まれた世界観、どれをとってもトップクラスの作品でした。作者様が長い時間をかけて大切に大切に作品を創り上げてきたことが読んでいてヒシヒシと伝わります。人生初作品がこれって凄すぎます。数年前にWEB版の方も読んでいたのですが文庫版で一気に読むと圧倒されます。ボリュームも1巻に2冊分程のページ数が詰め込まれています。全3巻+番外編1冊。お値段は高いですがそれ以上の価値があるのでぜひ読んでみて欲しいです。
これだけのキャラクターたちを掘り下げ、動かし、物語を紡いだ作者様の才能に脱帽。
”ノアが壊れていくのが、どうしようもなく楽しかった。”
雄一郎がノアに対して心で呟いたこのセリフにズキュンとやられてしまいました。あれ?私、ショタ攻めは射程外なのに…。とにかく途中からはノア×雄一郎のカップリングにときめきっぱなしでした。
主要な登場人物の中で一番正しい倫理観を持っていたのはノア王子ではないでしょうか。誰も傷ついて欲しくないと涙を流すノアの柔らかい心に雄一郎は容赦無く牙を立てて甘い毒を流し込んでいく。雄一郎によって純情なノアに潜んでいた雄が開花させられ、育てられ、ずぶずぶの関係に堕ちていく。
エロの描写も大満足!神評価!
まず、病院という命を扱う現場がリアルに描写されているところが良い。日々運び込まれてくる患者とそれに向き合う医師として従事する人々の姿がしっかりと描かれていることによってこの世界観がグッと締められています。
決して小泉と芳賀の二人だけの世界ではない。例えば小泉の昔馴染みも同僚として登場しますが、彼の仕事ぶりもきちんと描写されているし、そこで働く人々の描写が全編通して描かれています。大病院ならではの派閥や島流し的なやり取り、病院経営に関する一面も現実っぽくて、そこだけでも読み応えがあります。
作者の他シリーズも読んだことがあるのですが、とにかく医療現場が詳細に描写されていて読んでいると自分も手術に立ち会っているかのような錯覚に陥ります。
あと主人公の描き方も良かった。小泉は人との関係を築くことが苦手で人と目を合わせて話をすることもうまくできない。一人称も人に対しては「私」と言ってどこか距離を取ろうとしているのに、気持ちがぐらついている時に無意識に「僕」に変わっていたり。後々芳賀に対しても「僕」の一人称に変わっていくのですが、そんなちょっとした描写が可愛らしい。
主人公は天才と言われるほどの技術を持っているものの、心は未発達。そんな彼におおらかに優しく接しようと芳賀がやってきます。この芳賀もいい人物でした。
イケメンで仕事もできる。けれど完璧ではない。
主人公のあるトラウマがこの物語の根底にずっとあるのですが、そのトラウマを芳賀にカミングアウトするシーンがあるのですが、そのシーンに行くまでにもう少し期間があれば良かったと思ったことと、途中、芳賀が自棄になって主人公のトラウマを激しく刺激するシーンがあるのですが、読みながら「芳賀!それ一番やったらあかんやつ!」とツッコミを入れてしまいました。なので神評価までは行かず。
続編も出ているのでそちらも読むとよりこの世界観を味わうことが出来ます。
このシリーズは安定して面白く、溺愛攻めが好物の私が毎巻購入するシリーズの一つです。今回は攻めの賢吾が記憶喪失になるという設定です。しかも最も大切な佐知の記憶だけプツリと消えてしまうという読み手には堪らないシチュエーションなのです。もうあらすじだけで滾りますね。
記憶喪失を設定とする作品では攻めの記憶が消えて拒絶された受けが身を引くパターンがありますが、そこは互いを知り尽くした安定感抜群の幼馴染みカップル。記憶喪失の賢吾をまるっと佐知は受け止めてしまいます。そんな佐知に戸惑いながらも惹きつけられる賢吾。佐知の記憶が消えたことで、佐知と出会えなかった賢吾の姿も描写されます。冷酷無慈悲で愛を知らない賢吾。佐知と出会えたから、佐知を愛し、そして愛されたからあの賢吾なんだなぁ。と思いながら読んでいました。
攻め様は才に長けた宰相ヴェレス。受け様は名門貴族の長子でありながら使用人の様な扱いを受けるリオ。
オメガバース特有のヒエラルキーに苦しむオメガ性を持つリオですが話の合間合間で利口な自分こそ家督を継ぐに相応しいといった考えがあったりと貴族の長子であるプライドがチラリと垣間見えます。
物語は攻め様と受け様が共通の趣味としていた一冊の学問書をきっかけに進展します。最初は互いの身分も名前もわからぬまま本を通じて交流を深めていきます。
話のミソとしては「ヴェレスと本を貸し合う造詣深いリオ」と「ヴェレスのつがいとしてのリオ」の二人の顔を使い分けた「リオ」とヴェレスの絡みでしょう。
しかしシチェーションとしては大変美味しいのですがあと一歩詰めが甘いというか…。
「つがいのリオ」としてヴェレスと接している時に自分の正体を思わず仄めかしてしまうシーンでは読みながら『ヴェレスもっと突っ込んで!』ともどかしく思ったり。(後にヴェレス自身が半信半疑だったと打ち明けていましたが。それでもそこは断言して欲しかったな)
あとはリオが荒野で数日間ろくすっぽ水分を取らず意識が朦朧とした状態でヴェレスに助けられたシーンでは与えられた水筒を自ら受け取って自力で水分補給しているシーンに思わず『えっこの子重度の熱中症で死に掛けてたんじゃ…』と突っ込みを入れてしまった時点でふと我にかえりました。いかんこれはファンタジー。
作中で最も滾り萌えたシーンは性行為への免疫がないに等しいリオがオメガ性の特性に引っ張られて淫乱になってしまうシーンでしょうか。たどたどしくどエロい発言を連発するリオに攻め様も撃沈。私も撃沈。
斜め上の作品を描く宮緒氏の作品の中でもなかなかのホラー要素を含んだお話となっております。
暑い夏にぴったりの作品です。あっでも逆に部屋の湿度は上がるかもしれませんね。
攻め様は大輪の華の如く君臨する女装高級クラブのホステス兼オーナーを務める呉葉。受け様は容姿端麗で女性にモテるがあるトラウマにより女性恐怖症を抱え生活する会社員の祐一。
作品の序盤は呉葉に依存していく祐一が多く描かれていますが、展開が進むにつれ呉葉の祐一に対する依存度がどんどん高まっていきます。それはまさに狂気じみた愛。女装で自らを仕立てながらも呉葉はれっきとした男、女装しながら男の匂いをプンプンさせて祐一に迫る姿にはくらりとする色気があります。しかし情念に駆られた女を前世に持つ呉葉は女性性の部分も持ち合わせています。祐一に近づく女性に対する牽制の仕方などがまさにそれ。そして呉葉はこの情念に苦悩しながらも祐一への愛をどんどん強めていきます。愛が強まるほどに自身の箍が外れぬよう自制しようとしつつもどうしようもなく祐一という存在に心乱されていく呉葉。…いい攻めキャラだなぁ。
祐一もまたいいキャラです。そんな重く粘ついた愛をきちんと受け止めて呉葉の存在をまるまる包み込んであげているのだから。
高校生〜大学生(専門学生)のお話です。
攻め様はリーダー性のある情に厚い千里。受け様は寂しがり屋な自分を隠しながら生きる郁。
郁は自身の家庭環境に起因して自尊感情がすこぶる低く、与えられる愛にとても臆病。表面的には高飛車な自分を演じていても心の中はとても繊細で脆い。
そんな郁の心を千里は長く長く愛で包んでいこうとします。
タイトルの指先は作中によく登場するキーワードですが、郁が指し延ばす指先は愛を確かめるもので千里が指し出す指先は愛を与えるものとして表現されているように感じました。
作者の可南氏の受けの心理描写がツボなんですよね。中でもこの郁くんは目の前に差し出された愛を恐る恐る確かめるように受け取るような子なので一層愛が高まります。絡みの部分はあっさりですが互いの愛がひしひしと伝わります。滾ります。
おススメの一冊です。
世界観がしっかりと練られていてテンポも良いのでサクサクと読むことが出来ました。作者の言葉選びにも魅力を感じます。
攻め様受け様共に陰陽師を生業にしておりますが生まれは大きく異なります。片や都より離れた地で親を亡くし都にやってきた攻めの征景。片や陰陽師の大家の産まれにして帝の寵愛を受ける受けの桔晶。対極の位置で始まるも互いを認め合い何時しか相手を想うようになります。しかし互いに抱えているものがある分、その想いに蓋をしてしまい事あるごとにその想いはすれ違う。ああ滾る。読んでいて切なくなりました。
ただ欲をいうと終盤が駆け足で過ぎたように感じてしまったので帝とのやりとりをもう少し描いて欲しかったです。
しかし桔晶が自らの札で創ったヒトガタとはいえ子どもの頃よりその身を帝に捧げ続けるシチュエーションには大変に萌えました。
マフィアというアンダーグラウンド物は多くありますがこの作品の魅力は受け攻めの関係性。
そして作者である妃川氏の色気のある描写。
攻め様のレオンはマフィアの次期ボス。受け様の恭一はレオンのファミリーとは対立関係にあるファミリーに属する暗殺者。
絶対遵守の掟に反して逢瀬を繰り返す2人。恭一は自身に暗示を掛けるようにレオンに逢うたび死す時は共に生を終えようという約束を繰り返します。
精神面で脆い恭一が崩れそうな度にレオンが掬い上げます。もうね、ホントこの攻め様が格好いい。
レオンはずっと共に生きる未来を諦めず恭一を支えます。
逢う度に周りにバレないように場所を変えて抱き合う二人。刹那的な交わりがもう堪らなく滾ります。
おススメの一冊です。