昭和の耽美、アングラ、浪漫等お好きなかたにはおすすめです。
ただ、知的障碍者が昭和初期頃にどのような扱いであったか、むかしの田舎の名家の跡継ぎがどんな立場であったか、などの知識の有無。
父から愛を受けられずに歪んでしまった主人公を悪ととるか哀れととるかで、
この作品の印象も随分変わって来ると思います。
育郎の”畏れ”は漠然とした記憶の靄の中に、檻の中に居た蘭造が己の父を誑かし愛までも奪った。
非力な兄のどこにそのような力があるかわからない。
知らず知らずのうちに自分も取り込まれ、餌食になるのではないかという不安。
だから振り払うように暴力をふるったり、詰ったりしてしまうのではないでしょうか。
誰もしあわせになれる要素がなく、とことん闇堕ちしてゆくばかりですが、
和装やら主従やら背徳やらが好きなかた、どっぷり嵌まって滾れるのではないでしょうか。
因みに私は昭●元●落●心●中が好きで、その登場人物の菊●古さんに主人公の育郎がソックリだったので
そこに萌えてジャケ買いしてしまいましたが個人的に大当たりでした。
古典文学やら団鬼六の美少年がお好きなかたにもおすすめします。