ちしゃの実先生の作品はどれも神ですが、中でも好きなのはこの一冊の後半、冬未ちゃんと洋一郎のお話。
1ページ目、男が好きでセックスが好きで、そんな自分は嫌いじゃない、という冬未ちゃんのモノローグから始まるのが最高!
ビッチ受が好きなのですが、辛い過去の反動で…とか、お金のために仕方なく…とか湿っぽいよりは、こういう、エッチは趣味です!よろしくお願いします!みたいなタイプが良いです。
冬未ちゃんも、過去に何もないわけではないのですが、それはそれとして今の自分自身を可愛がっているのが、冬未ちゃんのいいところです。
それから物語は二人の再会(というか我慢できなくなったお迎え)からめくるめく、幼馴染らしい遠慮のない応酬が続いたかと思えば、痛いほどに相手を求める本心が語られる回想など交えながら、怒涛の勢いで進んでいきます。
このちしゃの実ワールドは説明できないです、もう読んでくださいとしか。
洋一郎はどれだけ横暴でも冬未ちゃん呼びなんですよね。きっと低くていい声だろうに、26歳の男を冬未ちゃん冬未ちゃんって。
ちしゃの実先生はワードのセンスが絶妙で、読書が楽しすぎます。このお話での私のお気に入りは、
あ〜〜残念殺せねぇ〜〜!!
オーケー別世界
今どき乱パなんて深窓の令嬢でも嗜んでるよ?
声に出して読みたい日本語です。
すごいな、読んだのは7月だけど、まだ続刊あるけど、自分の中では間違いなく2020年イチになるだろうと確信しています。
いや、そう言っても予想もしない化物が出てくるのがBL界ですけど、それでも!
無駄なコマがないのに、続きが気になるのに、読み終わるまでにすごく時間がかかった。大事に読んでるな、今。と頭の片隅で思いながらじっくりと読み進めました。
そもそも、めちゃくちゃ漫画が上手ですよね。ちょっとしたストレスもなく夢中で読めてしまう。
トレヴァーの子供の頃のエピソードは、悲しいわけでも、感動のシーン!とかでもないのに、久しぶりにこんなにってくらいに泣きました。強いて言うなら、なんだか懐かしいような、どこかにあった感情が揺さぶられて、というか。
ラブストーリーとしてもロマンチックで、BLとしても最中の肌の赤みがエロくて、もう言うことなし…!と天を仰ぎながら本を閉じました。
ジーンの行方は、こうならいいなという希望的予測はあるけれど、そうではない覚悟もして、結末を見届けたいと思います。
年の差ものが好きなので、とても楽しんで読めました。
京一さんの話し方が心地よいです。全体的に、言葉選びがすっきりしていて読みやすいですよね。月村奎先生のよう。
直己くんが来なくなった休日、京一さんが一人で自宅の庭で謎のきのこ?をカメラで撮っているシーンで、お金持ちで有名人なのに、なんて孤独な人なんだろう…と説得力を感じました。そして蟹のクッキーには可笑しいやら切なくなるやら。本当に、直己くんと過ごす休日は大切な時間だったのでしょうね。
京一さんの家族は本人の語る通りにだいぶ容赦なく壊れているけど、この優しい京一さんが家族はいないと切り捨てる一言も、佐久間さんと二人きりの静かな空気が伝わってくるようでした。
そういった、何気ない描写がいくつも印象に残るお話でした。