童話であり、まぎれもないBLであり、でもBLとカテゴライズして囲い込んでしまうにはもどかしい名作。
まず、普通に(擬人化という設定はあるものの)シンプルなストーリーで面白い。
天然で(鳥だけど)猪突猛進なコッコの勘違いコントみたいなやり取りもほほえましく面白い。
キャラ設定も、無垢なコッコとクズ系雄鶏オットのわかりやすい対比。脇役もコッコの無垢さをあたたかく見守る大人たち。主人公は主役CP二人(羽)なのだけれど、タイトル通り、無垢なコッコに絆されて変わっていくオットの物語でもある。
他の方々のレビューにも、泣いたというワードが続出しているが、私も当然泣いた。作者の同レーベルから出た『紅椿』でも大泣きしたけれど、今回もまんまと泣かされてしまった。
正直「泣ける!」とか煽られると素直に読めないひねくれものの私が、この作者の作品には毎回琴線を刺激されまくり感動してしまう。今回も、特別泣かせることを意識して描かれていなさそうなだけに、悔しいような嬉しいような…。
以前岡田斗司夫か誰かが、“感動とは罪悪感の解消”というようなことを言っていた。この物語は、誰もが持つ無意識下の罪悪感を発露させるのだと思う。
失ってしまった自身の無垢さをコッコに、コッコとオットとアリちゃんの尊さに、失ってしまった愛や優しさを重ねて、過去の自分自身や愛をもって接してくれた周りの人たちの真心に感動という名を借りた贖罪をしているのだろうか。
一昔前に流行った涙活とかなんとかいう安っぽい言葉があるが、流行に関係なく、本格的に心のデトックスをしたい人にはお勧めできる1冊。
怪しいパワーストーンを買うくらいなら、好きな飲み物とこの本1冊あれば良い。
それにしても三田先生の描く赤子の頬は何と愛らしいのでしょうか。