先のレビューを読んで、中立なのにめちゃめちゃ面白い? どういうことかと気になって早速読んでみました。
なるほど、これは神か趣味じゃないか極端に評価が分かれそうな作品ですね。ちなみに私はヤンデレスキーなので、とても面白かったです。
普段はあまりレビューを書かないのですが、ヤンデレスキーとしてはどうしてもお薦めしたい。でも、うーん、この作品、ネタバレにならないようにレビューするのは難しいです。
できればレビューを読まず先入観なしで読んで欲しいです。
最初は丸木文華さんの『mother』や宮緒葵さんの『掌の檻』の二番煎じか、と思っていました。ミステリーも最初のレビューにあるようにすぐに犯人がわかってお粗末だし。
でも、それがですね、受けが気づかない犯人の正体を読み手が知ったうえで読むと、この延々と続くSMエロ調教は他の男といちゃつく受けへの嫉妬としか思えなくて、そこがとても萌えるんです。
SMエロ調教といっても暴力的ではなくて、苛められながらも受けはちゃんと快感を得ているので、そう痛い感じはありません。
で、このままエロ特化の快楽堕ちかと思っていたら、まさかのラストでした。
本当にラストが秀逸です。それもただ驚くだけではなくて、ビジュアル的に圧巻というか凄い。
意外な真実でしたが、後出しじゃんけんとか唐突な感じはなくて最初から読み返せばあちこちにヒントというか伏線があってなるほどと納得します。
マトモそうで歪な受けの描写も先のレビュー通り、説得力があります。
ここまでちゃんと計算しているのだから、この攻めの気持ち悪さも狙ってやっているのじゃないかと思います。
この気持ち悪さに拒絶反応を起こすか、いいぞもっとやれと思えるかで評価が分かれるかも。
それと当て馬をかわいそうとは思わないんですね。むしろこんな歪な受けとの関わりが切れてよかったんじゃないでしょうか。
なんというか、住む世界が違うというか。
本当にこの作品、ハマる方はハマると思うので低評価だからと読まないのはヤンデレスキーにとって勿体ないと思います。
確かに明るく楽しい話じゃないので、覚悟して読まないと結構精神抉られると思います。
しかし前作からのキャラひとりひとりがよく掘り下げられていて、ひとりひとりの行動はめちゃくちゃだけど納得がいきます。
カナエの兄、ユキも弟をレイプしたくてしたわけじゃない。
みなが運命に翻弄されて、それでも抗おうとしている。
それがたとえ自分自身を幸せにはしなかったとしても。
それでもカナエもオウギも、ユキもそしてルカも、自分よりも誰かを大切に思い、守ろうとしている気持ちがすごくいとおしい。
ユキがカナエをレイプしたことを後悔していないと言い切った理由に泣きそうになりました。
望まれなかった子供を手元に置き、虐待もせずに愛し育てているのがわかるシーンがあって、さらに涙。
起こってしまった過去を消し去って忘れることは、カナエそっくりのルカを手元で育てているユキには決してない。
予想もできない展開に次巻のユキ編への期待も高まります。
どうかみなが、それぞれの幸せを感じることのできるラストであって欲しいです。
BLとしては厳しい評価が多いけど、人間ドラマとして個人的に高く評価したい作品です。