じゃあ素直に満点つけとけよって感じなんですが。
まず、上下巻まとめての感想かつかなりラストのネタバレありということをお断りしておきます。
満点にしない理由も、満点に等しい満足感も、理由はリアリティです。
しつこいけどホントにネタバレします。
舞花ちゃんのお父さんが余命宣告された身だったこと、そしてその前に亡くなったこと。
これ、せめてどっちかにしてほしかった。
最期まで闘病しきるか、健康だったのに事故に遭うか。
中途半端にここで女性が絡んだのも、訪問医療を受ければよかっただけなのでちと納得いかない。
細かいこというと、がんといいつつズキンと胸を抑える描写も違う表現にしてほしかった。
反面、余命がわかっているから彼は伊吹くんにきちんと手続きを経て残せるものがあったし、残されたものがあっても心身ともに大変な介護の仕事をしている伊吹くんの不器用さ真面目さもより輪郭がはっきりします。
そこはわかっちゃいるけど。
また主人公2人が気持ちに正直になるきっかけは舞花ちゃんの事故未遂、そこには父親の事故死との重なりも大きかった。
必要な要素だったとは思うのですが、ちょっとだけこの物語の中では舞花ちゃんの父親だけが設定詰めこみの「漫画の要素としての存在」感を強く感じてしまいました。
そのリアリティ不足にすこしの不満です。
ただ、悪く言えば彼は主人公の過去の男でもあるので、やたらリアリティある存在感を発揮されても困るのもたしかで…。
佑真さんのお母さんも漫画的キャラですが、こちらは親子関係といい恋人関係といい、はっきりと関わってくるわけではなく、まして主人公たちに恋愛的からみはないために割りきれます。
とはいえ、舞花ちゃん父には不満で佑真さん母には納得なのもけっきょくは私個人の好みとしか言いようのないことですが、そこでどう感じどう星をつけるかは自由ということで。
一方で、身寄りがなく信頼できる他人に子どもの人生を預けてしまう、血のつながらない親子、こういうのはきっとわりとどこかではあることだろうなと妙にすっと入ったのは自分もマイノリティながらたいへん自由に生きているからかもしれません。
そして主人公ふたりが、気持ちが通じ合い互いに互いを守る存在と考え、子どもの舞花ちゃんもそれを望んでいながら同居はしなかった事実。
ここにこの物語のリアリティがあるとも感じました。
このあたりもくどくどと2人の選択の理由は語られません。
BLマンガだとストレートもゆるっと掘ったり掘られたり、あげく子どもがいようがさくっと同居もありがちなのですが、伊吹くんは年齢的には高校生で舞花ちゃんのパパ、これだけでも世間の目を考えるし、佑真さんとの年齢差、パパふたり、実は娘は他人、これだけ重なると別居は正解だったように思います。
ここで別居を選択できる冷静さは、そこまでケンカ親子や自由で行動力と理解のある子ども、泣き虫で寂しがりな主人公をさんざん描いてきたあとに際立っていました。
佑真さん親子も他人だったこと、2人が別居だったこと、ここは本当に極限まで無駄をそいだ表現で済まされてしまう。
そこに感動しつつ無粋なまでに長文を書いてしまいました。
この情熱で星4ってウソやろという気分です。
かわいい、とにかくかわいい。
鳥飼かわいい。
………だけではなんなので。
ストーリー的にはそんなに珍しくない、予想のつく展開が続くのに、そこはかもめさんというものか、2人の表情、言葉の選びかたなどで伝わってくる感情の質と量が違う。
矢島と鳥飼どちらも、とても当たり前のことで悩んでいて、とても当たり前のように相手のことを思いやって行動して、互いに、関係をリードしているようでされているようでもあり、もうこの2人にしかないフィット感で成り立っているこの絶妙な唯一無二感。
一巻では言葉の足りなかった2人が、言葉にするようになって。
互いの思い、大切にしなきゃならないことを確かめ合い深めあった2巻でした。
それにしても鳥飼のかわいさはなんなの。
ちゃんとレスキュー隊のたくましさ頼もしさがありながらのあふれでるかわいさよ。
矢島にドシッと乗るとこやちびっ子時代の写真を素直に欲しがるとことかたまりませんでした。
スケールの大きなお話、キレイな絵で読みごたえがありました。
前半だけなら☆4です。
でも後半がなー、なんとも駆け足で単純でもったいなかったです。
星を減らす理由は2つ。
ひとつは受けのリヨンがなんともふにゃふにゃしすぎ。
彼は幼少期にルカ(オリヴィエ)を救ったのが唯一にして最大の見せ場というほど、ほかは頼りないしむしろ迷惑。
賭け事にふけったり輩に絡まれたりしてはオリヴィエに助けられて迷惑をかけて、それはぜんぶ気持ちをはっきりさせないオリヴィエのせい…。
緊急事態に助けにきたオリヴィエを拒否した理由も、オリヴィエの気持ちがはっきりしないから。
恋愛脳すぎやろ、クーデター起きた国の軍人やで?
記憶がない中でたしかに寸止めオリヴィエに振り回されている部分はあるのですが、それでも、少し考えれば「国でクーデターが起きるとともに記憶をなくした自分、そして常に寄り添う存在」が互いにただの庶民の幼なじみなはずがないと思うんですよね。
幼少期には如才ないとまで言われていたのに、記憶喪失とともに性格も変わりましたか? という感じです。
リヨンには、なにかいいインパクトがほしかった。
また、後半はスルスルスルスルッと展開しすぎです。
厳重な警備があるはずの軟禁状態のリヨンの部屋に難なくたどり着くオリヴィエ(ただし恋愛脳全開リヨンに脱出を拒否られる)、立ち聞きでサクサクサクサクっと明かされるクーデター第二弾の計画、ガチャンと立ち聞きがバレるずさんさ、やはり厳重な警戒どこいったで颯爽とリヨンのピンチに現れるオリヴィエ。
BLマンガでどこまでリアリティや物語の厚みを求めるか、という個人の嗜好と商業的価値? みたいなとこもあるとは思うのですが、もう少しなんとかなったやろー(ジタバタ)と思えてなりません。
作家さんがご自身の好きなものを詰めこんだとのことなので後半の展開はさもありなんですが、後半の物足りなさは前半の期待度の裏返しでもあります。
基本的にはかなりキレイな絵なのに、ときどき主に体全体の場面などは気持ち悪いほどヘンになります。
あの不安定さはなんなんだろう…。
いくらトラウマがあるとはいえ先生の行い(校内で2人の生徒と関係、しかも1人は自分の都合であっさり捨てる)はクズすぎだし、先生の現恋人くんと捨てられた元セフレくんが仲良しなのもご都合主義的だし、つかヒロくんいい子すぎるし、部活のレギュラーが危ういからって攻めくんが受けた嫌がらせは陰湿すぎるし、それをいい話みたくあっさり解決しすぎだし先生の先生はほんまにムナクソ悪い……つまりわりと不満の多いストーリー展開ではありました。
率直にいって先生パートだけなら星2つ、捨てられたセフレのヒロくんと幼なじみのパートがわりと良くて星4つ、最後にいろいろさらっていったママに星5つで、平均して星4個としましたが、それがよいのか悪いのか。
もし星4の評価につられて読んだらしんどいかもなあと思いつつ、な感じです。
そして、ママの話を読んでから振り返ると……たしかに勝手に思いこんでいたけど「そう」な描写はないわ!(ちるちるのカップリングも間違っている……のか…?)となりました。
ママのパートナーがかなり懐深いわ(笑)
お兄ちゃんの燈馬くんがとてもいいキャラなんです。
弟ラブがモンペ状態なのはおもしろいし、リーダー気質や正義感がかっこいいし、ちゃんと約束は守るし。
主役の2人がそれに比べると際立つ個性がないというか。
国立は一途さ、蒼馬は無邪気さなど魅力はあるにはあるんですが。
あと、国立と燈馬が付き合っているというのがフェイクなのはすごくわかりやすすぎる。
大事な点なのに。
国立のご飯まで燈馬たちのお母さんがめんどう見ているところなんてザ・説明セリフ(笑)
ちょっとこう、わかりやすく「まあ、イケメンで優秀な生徒会長の誰それ様よ」的な、モブに説明させてしまうところやフェイクのわかりやすさ母の説明セリフなどに拙さがもろに出ていて「もう少しがんばればもっとおもしろくなるのにぃ」という印象でした(ナニサマだ、すみません)。
これはたいへんよいものに巡り会えた! と感動レベルです。
まず絵がきれい。描き込みしっかり系野性味があって、勇者が本当に男前。
キャラの名前や設定がおもしろい。
出てくる道具類もかわいくて実用的で雰囲気がとてもしっくり。
そんなに複雑ではないけどすこーしだけ伏線というかだまされる部分もあってそうきたかーと驚きもわく。
そしてとにかくうぶ同士がまじめ相手と向き合いながら戸惑いながら惹かれ合う様が本当に胸にくる。
簡単にいうとときめく。
おもしろくて(コミカル的な意味でも引き込まれる興味深さでも)、絵がきれいで、シャレがきいていて、土台の世界観がしっかりしている安心感があって、読み物としてしかけもある。
最高か!
ちなみに、局部の隠し方は花です。
花があっち向いたりこっち向いたりで絶妙に隠してきます(ごく一部のページだけなんですけど)。
声を出して笑ってしまいました。
職員室の秘めごとはわりと好きです。
そのスピンオフとは気づかずに読みましたが、なるほどちょいちょいリンクしています。
高校生2人がとてもマジメに恋をしていて、でも高校生らしい、大人と子どものはざまらしい思い込みや暴走もあって、そうしたぶつかり合いをしながら将来をきちんと考えていく。
とても良いお話でした。
でもこの表題作だけなら☆みっつ、その理由は、受けくんがあまりにヤングケアラーだから。
下の三つ子か新しい赤ちゃんか、せめてどちらかはなしにしてほしかった。
あくまで私の個人的な好みにすぎませんが、あまり重苦しい話は好きではないので、あらすじでは知りようがなく避けられない部分で完全なヤングケアラーが描かれていて、さらに個人的にはそこまで過酷な環境が必要なストーリーにも思えなかったしきれいごとにまとめられていたのは参りました……。
同時収録の臆病虫の恋、こちらは逆に単独なら☆5個つけたいくらい!
かわいい、おもしろい、好き。
しょっぱなから「いやお前が泣くんかい笑」というはじまりで、その号泣していた臆病虫の前に数年後に現れた汚いモサオが王子になり、その王子が実は……虎視眈々。
いやでもあの号泣は胸にくる。
わかる、わかるよいっちゃん!
同時にこれを読めて良かったです。
ふたりのラブラブっぷりは文句なし。
でも星を5個にはできないのは、女性社員が胸クソ悪すぎだからです。
フィクションともっとわりきればいいんですけど。
にやまさんなんでこんなやなやつ描いちゃったんだよーと肩を揺すりたい気持ち(笑)
BLに出てくる女性は物わかりがよすぎるか悪すぎるか極端なことが多く、それはまあしかたのない面ではあるし、この作品に関しては、会社とバーだけというかなり閉じた世界で話が進むので、「ヒカルは王子様」(かつ本人はもとは女性が好きなストレート)という立場を明確にするには女性が取り囲むのがわかりやすい。
でも旅行先で、男の個室に招待するわけにいかないともっともな理由で断られているのにヒカルを部屋までつけまわし、現れた素顔のニンニンを隠し撮りして拡散する行動は本当に気持ち悪い。
そこからのさらなる拡散や根も葉もない噂は彼女たちのせいではないとしても、部屋まで追いかけるほど好きだったはずのヒカルが窮地に立たされているのに、ほとんどまともに謝罪はなく「そんなつもりじゃなかったんです〜」からの「このイケメン(ニンニン)誰ですかぁ(ニヤニヤ)」はほんっっっとうに胸くそ悪すぎました。
主人公のふたりは、「相手を守りたい」、その気持でいっぱいで自分の犠牲など犠牲とも痛みとも思わない。
その尊さはまぶしかった。
このきらめきをもっと純粋な気持で見たかった…ッ
とはいえ、こんだけ胸クソ悪くなるほど〈たかがマンガの登場人物〉に感情を揺さぶられるのは、作家の力量だとも思います。
3巻でも社内でイチャコラしてあれこれ起きたしふたりはしっかり反省してほしい(笑)
3つの作品がはいっていて、どれもこれも出てくる人物がゆるふわで、あなたたちちゃんと社会で生きていけますかと心配になりました。
お仕事BLなんてすけどね。
どれもいいお話でしたが、私は3つ目がいちばん好きです。
自身がゲイとは認めず、かといって女性と結婚して体面をとりつくろうこともできず(よくいえば正直)、45歳まできてしまった受けさん。
とりあえず語り合えるお友だち(純粋な意味で)を作ろうとアプリに登録したら、やってきたのはお友だち(大人な意味の)目的の青年。
でもずいぶん若い彼が、もじもじする45歳を笑うことなく、かといって過剰にかわいいかわいいとなるわけでもなく、すごくおおらかにありのままを受け止めるんですよね。
合間合間にキュンっとなることにムリがない感じです。
あんまり最初っから問答無用にかわいい全開の溺愛をされると「いやいや45のおっさんやで」と皮肉な感想を抱いてしまいがちなのですが、バランスよく楽しめました。
3作とも、受け攻めどちらかはとてもおおらかです。
相手を深い懐で受け入れます。
年齢差や経験の差でもっとも自然にラブにもっていくのが難しそうな3カップルめがもっとも緩やかにあたたかかったのがとにかくよかったです。