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女性Sakura0904さん

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こんなにも愛おしいと思える攻めはなかなかいない

 一般文芸としても出版されているだけあって、BLのお約束的な要素がほぼない、非常に読み応えのある作品でした。と同時に、我々BL愛好者が物足りなさを感じる懸念もなく、男同士の関係性の萌えがこれでもかと詰まっています。改めて木原先生の心情描写の緻密さと、あらゆる面で現実的な部分を注視し、けっして過度に美化したり省いたりして書くことのない創作への真摯な姿勢が素晴らしいなと感じました。

 喜多川は堂野の何にこんなにも取り憑かれてしまったのか。ありがとうという言葉をたくさん言ってほしい、と子供っぽい直截な欲求を口にする彼でしたが、本当に罪を犯した人かどうかというよりも、堂野の心根が、今まで自分に関わってきた大人たちとあまりにも違うことを肌で感じ取り、最初から気にかかっていたのでしょうか。また、親しい間柄でさえ損得を考えて動くことはあるけれど、刑務所という冷たい空間の中で堂野は自分の存在だけで救われ、感謝を示してくれる。無条件の愛に触れたことがない彼は、まず堂野の無条件の自分への好意に途轍もない快感を覚えたのかな、なんて思いました。

 子供の何かを吸収するスピードは速いものですが、堂野の情を根こそぎ自分のものにしようという喜多川の執念は凄まじく、ちょっとやそっとでは頽れません。その周りを一切顧みないひたむきさは、彼が子供のままであることを堂野に強く印象付けます。それはもちろん「いい歳なのに未熟」「社会の常識が分からない」というネガティヴな捉え方もできます。一方で、「ほとんどの人間が成長と共に持つようになる諦念や妥協がない」「大人の世界に染まらない純粋な心のまま世界を見ることができる」というポジティヴな面もあります。堂野は喜多川の後者の部分を徐々に愛おしいと思い始める自分に気付き、刑務所でも再会後も、その感情が愛なのか何なのか悩むことになる。

 出所直前に芝に自分の今後を伝えず、出所後は結婚し子供も持った堂野の選択は、彼がどこまでも普通の人なんだなということをよく表しています。BL作品の登場人物だからって、刑務所で知り合った同性と添い遂げる覚悟なんて持てない、女性に欲情しなくなったわけでもない、妻子を養う生活に不満や疑問もない、ごくごくありふれた男性。安易に雰囲気に流されず、喜多川との関係を一度は断つことを選び、再会後もすぐ絆されたりせずに妻子を裏切ることのなかったその真面目さは、冴えない彼の唯一と言っていいほどの美徳でした。そんな彼が、喜多川との関係においてのみ、太陽や月のように輝く存在となる。そしてまた、彼にとっても喜多川の脇目も振らない一途な感情は、単調で時々絶望に落ち込む人生の中で、一定の光を保って温かな希望を見せてくれる、かけがえのないものなんだろうと思います。この2人の出会いは数ある物語の中でも私にとって忘れがたい、尊いものとなりました。

◆Holley NOVELS版『檻の外』レビュー追記
 講談社文庫の『箱の中』には続編である『脆弱な詐欺師』『檻の外』まで収録されているのですが、旧版『檻の外』に収録されていた書き下ろし『雨の日』『なつやすみ』がなかったので、旧版も買って残り2編を読みました。

 『雨の日』はあとがきでも仰られているように担当編集に甘い話を求められて書かれたということもあり、BL色が強めでした。これは確かに一般レーベルでは出しにくいかもしれませんね。でも、刑務所というしがらみ、麻理子という縛りのない、今度こそ本当に自由を手にした2人の濡れ場や会話は、些細なありふれたものでもとても愛おしく感じられました。

 『なつやすみ』は麻理子と浮気相手の息子である尚視点の話。片親の子のもう1人の親に会いたいという気持ちは痛いほどよく分かります。母と父ではやはり与えられる愛情にニュアンスがあって、子供はどちらも欲しいもの。喜多川や堂野が尚を連れ去ったわけでもなく、穂花との接し方から2人が子供の前でいちゃつくような男ではないと分かっているだろうに、ずっと感情的な麻理子には正直嫌悪感を抱きました。浮気相手との子を図太く認知までさせておいて、いざ堂野と尚が親子らしくなったら凄まじい拒否反応を示す。男に愛想を尽かした女性の現実だとは分かっていても、彼女に共感はできませんでした。だって、彼女の裏切りを知るまでは堂野も喜多川も彼女を裏切っていませんでしたから。

 でも、彼女の言う通り尚は幸せな子供だったと思います。喜多川の大らかな愛情と、堂野の丁寧で優しい愛情に包まれて、毎年夏の数日間だけ積み重ねていった2人の父親との思い出。そして、尚と触れ合うことで喜多川と堂野も穂花を亡くした痛みを和らげることができただろうし、男2人の生活でも子供を持ったような気持ちになって、お互いいろんな辛い経験をしてきたけれど人生そんなに悪くないなと思えるようになっていただろうと思います。麻理子や田口とは別に、尚には確かにもう1つ家族があった。他人に理解されずとも、この3人だけが分かっていればそれでいい。喜多川の隣には最後まで堂野がいてくれて、けっして悲しい終わりではなかったと、一片の疑いもなく信じています。堂野と尚の関係がいつまでも続くように祈りました。

あらゆる面でバランスがとれている

 今回は波乱はなく、大学生活終盤の2人の日常を追うようなストーリーでした。歯痛で情緒が不安定になる楢崎、野良猫を追いかけてしまう寺島、お互い可愛らしいですね(笑)。寺島の行動力のあるところはとても魅力的だけれど、大切な人を悲しませないように自身を危険に晒すような行為には慎重になってほしいです。この件でも、卒業旅行のタイでの夜の会話でも、それぞれがいかに真剣に相手とのことを考えているか、改めてよく分かりました。大学生なんてまだまだ子供だけど、そういう言葉が出てくる2人は恋愛に関してはかなりレベルが高いところにいると思う。時々長年連れ添った夫婦のようにも感じるくらいです。一方で、楢崎の溺愛ぶりもずっと変わらなければ、寺島も毎回新鮮に照れるし、相手へのときめきが冷めることもなく理想のカップルだなぁと。社会に出るこれからの2人も応援したいです。

ありえない、なんて断言できないから

 楢崎も寺島もそれぞれ厄介な問題を抱えたまま始まった9巻。昔終わったと思っていた出来事がまったく予想もしない方向から芽を出してくることってありますよね。別に楢崎は何も悪いことはしていないのだけど。でもやっぱり、一度は関係を持った人と何度も会うのはいい気はしないかも。寺島の嫉妬が見えなくて寂しかったのだとしても、みのりにはまた別の想い人がいたのだとしても、一連の流れにはちょっともやもやしてしまいました。

 一方、寺島の方も教え子の柊真に「懐かれる」を通り越して好意を持たれてしまい、あまり他人を責められる状況でもなく。彼の警戒心のなさは十分理解できるんです。歳が離れているし、そんなに会う頻度も多くない塾の講師と生徒の兄弟という関係性だし、そうそう同性を好きになる奴なんていないだろう。でも、確率の問題じゃないですもんね。講師と生徒の身内という関係性だからこそ線引きはきちんとして、相手が女性でも男性でも、子供でも大人でも、恋人が不安になるような隙はつくらないよう努める。パートナーがいるということはそういうことなんだ、と私もはっとさせられました。喧嘩をしたわけでもなく、お互い1人で悩んでいただけだったけれど、また一段と絆が深まった巻だったと思います。

ブルスカファンなら買うべし

 本編の同人誌として出されていた作品の総集編ということで、濡れ場多めというか、メイン2人の話は100%濡れ場だったかも? 本編はなんだかんだ毎回波乱があって、よくよく振り返ってみると蜜月期間的なところって少なかったかもしれません。そこを補完するのに買って損はない1冊だと思います。あんまり濡れ場が続くと胸焼けすることもあるけれど、この2人を包む空気感ってあまりどろっとしてないというか、汁気も少ない静かな雰囲気の中でじわりと汗が滲む、そんな描き方なのでまったくそんな心配もなく。最初から最後まで楢崎の寺島を可愛い可愛いとひたすら溺愛する様子と、彼の1つひとつの動作に感じて蕩ける可憐な寺島を楽しめました。

酔った寺島の強引さにドキッとした

 久々に読みましたが、楢崎の視線ってこんなに甘かったっけとちょっとびっくりしてしまいました(笑)。すごく落ち着いた雰囲気をまとっているのに、寺島に向ける視線がいつも静かに熱くてとびきり甘いですよね。寺島の知り合いのアレックスに愛の巣に居候されますが、互いを嫉妬させるようなキャラではなく、人懐っこい元気キャラで周りとのやりとりを楽しく読めました。楢崎兄とは寺島との関係がバレ、一旦すれ違ってしまいますが、この巻でしっかり誤解も解けて一安心。弟のことを案じるがゆえの、家族らしい感情だったと思います。彼に楢崎への気持ちをありのまま話した寺島がかっこよかったです。

不安はゼロにはならないけれど、安定しているよね

 楢崎の家族皆に温かく受け入れられた寺島に、ほっとしました。ゲイカップルの理想の家族との付き合い方ですよね。男女夫婦と変わらず、兄弟の子供と遊んだり、両親と気兼ねなく食事したりして。現実でもこういう光景が増えるといいな。

 新たな展開としては楢崎の元家庭教師のみのり、寺島のバイト先の教え子の兄弟がそれぞれ波乱を巻き起こしそう。みのりは2人の関係性も楢崎に恋人がいることも知らないので、楢崎がきちんと線引きしてあげない限り彼女がすり寄ってくるのはまあ仕方ないのかなと。9巻でしっかり決着をつけることを期待しています。教え子の兄の方は拗らせると危なそうですね。当て馬にやきもきはさせられますが、その分濡れ場はお互いの熱量が高くて、楢崎を焚きつける寺島、煽られて激しく抱いてしまう楢崎が見れたので満足でした。

優しい世界

 2巻までは護られてばかりで王族として自分が貢献できることもなかなか見つけられずにいたアークでしたが、最終巻にして大活躍だったのではないでしょうか。シモンの薬によって操られ謀反者となってしまったユリウス。でも、アークは実際に斬りつけられてさえ彼を疑うことなく、何か事情があるはずと信じ続けていました。10年以上の歳月で培った絆は並々ならぬものだったのですね。ユリウスもすぐ自我を取り戻しましたし、シモンの企ては下剋上ではなく王族のことを思いやってのことで、安心しました。アークは子供のような純粋な性格のままだけど自分の役割をしっかり見つけましたね。溺愛攻めとファンタジーな世界が好きな方にはオススメのシリーズです。

攻めが揺らがないので安心

 アークはこのままほとんど仕事らしいことをせずに皆に守られて生きていくのかな?と思っていたので、魔素の濾過に挑戦してみようとしたのは良い傾向ですね。周りが心配するのは分かるけれど、もしダメでも何か別のできることを見つけてほしい。シモンとリオがそれぞれに画策するので(この2人は組んでいるようで組んでいないのがなんとも不思議な関係性ですが)、ずっと穏やかな日々というわけにはいかず。でもまだ決定的に亀裂が入るような事件は起こっていませんね。謙虚なのはいいことですが、自信のなさは時々悲劇を生むものです。アークがしっかりした自分の軸を持てるようになるといいなと思います。

まだまだ成長が楽しみ

 異世界転生ものですが、設定が難しくなく終始読みやすいです。転生したアークをそうとは知らず慕うユリウスの美貌が光っていました。こんな人に毎日好意的な目で見られたら、誰でも絆されてしまいそうです。主従関係というと個人的には慇懃な従者と傲岸な主人(夜は逆転)や、お互いの背中を預け合って辣腕を振るうような関係性が好みなので、アークの一片の曇りもない純真さ、いつまでも主人らしさが出ない性格は少し綺麗すぎて物足りないかなと思いました。友人として付き合うなら彼のような人は理想ですが。ただ、アークもユリウスへの気持ちを自覚したので、2巻以降はいろいろ感情が乱れるところを見れそうで期待が高まります。

割と絆されやすそう……?

 同級生の探偵×元ヤクザというなかなか面白い組み合わせでした。ヤクザといっても組の幹部連中にがっつり絡んでいたわけではなく、鉄砲玉扱いだった八一はまだ随所に幼さの残る、良くも悪くも中身はまだ子供のままのようなキャラ。央甫にとってはその無鉄砲さが放っておけなくて愛おしいんでしょうけど、危なっかしいトラブルメーカーという印象が強く、まだ受けとしての魅力はそこまで感じられませんでした。央甫にそういう雰囲気を出されて赤くなるところは可愛いですが。央甫と八一の昔の関係性や八一の組での話もまだ表面的なところしかなぞっていないので、1巻だけでは評価が難しいというのが正直なところです。ミステリー要素もあるので、次巻以降の展開を楽しみにしています。