1巻で3人の関係性にぐっと引き込まれた記憶も新しいうちに、続きが読めて嬉しいです。バッテリーの北斗と真琴、そしてマネージャーの鷲介が引っ張るチームで目指す甲子園。野球が主題の漫画でないとなかなか出場まで漕ぎ着けないのがこの作品も例外ではなく残念なところですが、試合の焦燥感や興奮、開放感と新たな闘志が彼らと同じ熱量で味わえたのは嬉しいです。
鷲介のおかげでここまで来れたと強く感じていた真琴。鷲介と一緒に戦えない今、何のために野球をするのかを見失い、立ち止まっていた彼が、北斗の言葉と行動で前に進む道をようやく見定められたことが北斗推しとして嬉しくもあり、鷲介の目線に立って切なくも感じ。でもやっぱり、鷲介の存在の重みもひっくるめて大事にしたいと言える北斗の器が大きくてかっこいいなぁと。真琴の中で北斗に上書きされない鷲介もすごいし、もう3人ともどうにか幸せになってほしい。そう願うのみです。
萌2に近い萌評価です。メイン2人がとても好みのビジュアルで、読み始めると同時に期待が高まりました。係長である一色は余裕のあるタイプの攻めかと思いきや、まったく驕りを感じさせない、部下の面倒見もいい素敵な上司でギャップ萌え。不眠症であるという八代も、それなりに人生経験があり擦れてしまったところと、一色に対する純情さが交互に見えるのが面白く。夢と現実の間で揺れ動く2人の展開を最後まで楽しく読めました。一方で、一色がノンケということもあり、夢はすごくても現実の2人はそこまで踏み込んだところまで進まないので、いつもの熊猫先生の激しさを期待すると少し物足りなさを感じてしまい。この2人が大好きになったからこそ、これからの2人も見てみたいですね。
ここに来てまさかのサンタクロースの登場で、若干世界線に戸惑いましたが、読み終わってみるととてもほっこりする、温かい巻だったなと思います。何より、迷子になってしまった子トナカイである、ギンコがとにかく可愛い。トナカイの姿でも人型でも、びびり屋なところがまさに子供という感じで、抱きしめたくなる可愛さです。彼に目をかける颯助に嫉妬を覚えるコマですが、余所者に気を許せないのは人間の性。時間をかけて相手のことを知っていけば、いつかは解消されるもの。最終的にはコマも含めて皆ギンコが帰れるように協力してくれて、ハッピーエンドの童話を読んだような気持ちになれました。颯助の分け隔てない優しさを好いていることを、コマが自覚していることを知れたのも嬉しかったです。
未の小波のことも密かに気になっていたので、彼に焦点が当たって嬉しいです。人型の時は白髪(銀髪?)に黒めの肌。西洋人のようにも見える、なんとも魅力的な風貌ですよね。彼が溺愛しているのが狼の黒太。羊×狼ということで下剋上的雰囲気があるのかと思いきや、黒太が狼というよりほぼ子犬で、成人の人型になっても純粋な男の子のままなので、ほぼ大人なお兄さんと未成年の子、みたいな空気でした(笑)。精神年齢に開きがあって、攻めが受けを猫可愛がりするような関係性は少し好みからは外れますが、加奈子という自分を大事にしてくれた女性を大切に想いながら、小波との関係を築いていくという黒太の気持ちは愛おしく感じました。
外伝ということで、正隆とコタの絡みはほとんどありません。秀一と八尋の行く末も本編を読んだ時に気になっていましたが、いざメインで読んでみると、秀一のあれこれ考えすぎる性格が好みからは外れるなと感じました。もちろん、彼の苦悩に理解の余地はあるのだけど。子供のような見た目でも、神使である八尋は人間の子供と同列に扱ってはいけませんし、そんな彼の想いにもう少し早く覚悟を決めてあげてほしかったなと正直思いました。人間の子供とは違うと言いつつ見た目は人の子で、一方の秀一は完全なる大人なので、濡れ場は少し罪悪感が(笑)。長い葛藤を経てようやく通じ合えたので、これからは存分に睦み合ってほしいですね。
この1巻ではまだ好意を自覚するところまでしか進展しないのですが、それでもストーリーにとても引き込まれました。佐藤先生の絵もとても綺麗で眼福ですし、メインであるカイとノアの性格や見た目のかけ合わせも好みです。奔放に振る舞うのに学年トップを保っているカイと、優等生だけど要領がいいタイプではなく苦労人のノア。恋心と閉鎖的な空間で自分の居場所を求める気持ち、そして成績に対する嫉妬が入り混じる複雑な思春期の感情がありのまま描き出されていました。ノアがカイにぶつけた気持ちは、確かにカイを傷付けるナイフのような言葉だったけれど、張り詰めていた糸が切れた彼の気持ちは痛いほどよく分かりました。シリーズでこの2人の関係性の変化をじっくり追えるのがとても楽しみです。
ページ数が300を超えていたので、アポロとフィーの過去が2人にもっと複雑に絡んできたり、娼館で大きなトラブルが起こって長引いたりするのかなぁと身構えながら読みましたが、ほとんど杞憂で、むしろ今までで一番純度の高い愛が描かれていました。お互い惹かれ合っていることを一途な好意と自覚し、自分のしたいこと、したくないことにただ素直になる。正直な欲求に従って行動する。2人に必要だったのはただこれだけでした。いつもの仕事へ戻っていくフィーの腕を掴んで引き止め、行ってほしくないと何も取り繕わない気持ちを吐露したアポロがいい男だなぁと。3巻通してカタルシスが感じられるような、そんな素敵な作品でした。