ディストピアとの戦いを題材にした一般小説(ヤングアダルト小説)ですが、
紫苑は一貫してネズミを愛していて後にキスします。ネズミも紫苑の気持ちを最終的に受け入れる感じ。
これは同性愛描写のある、ベッドシーンの無い一般小説だと思います。
唇にキスしている時点で友情とは考えにくく、性愛はあります。
でも精神的な愛情を重視して描いている。
BLレーベルならベッドシーンが無いのでこういう作風はやりにくいのだろうし、
一般小説で、しかも今よりとんでもない差別だらけのゼロ年代に発表されました。
その一方で人気がありアニメやコミカライズなどのメディアミックスも行われました。
アニメなどの展開は2010年代で、差別するほうがアホというのが常識になったのは2020年代の印象です。
その差別だらけの時代に発表した勇気を尊敬します。
とても美しく尊い愛を描いていると思いますが、ベッドシーンが無いだけに逆カプ問題があります。
ここには、イヌカシという性別不明の人物(身体的には女性である匂わせがありますが、性自認は不明)や
沙布という、いわゆる負けヒロイン・女性当て馬が出てきます。
沙布は脇役ではなく、紫苑ネズミイヌカシに次いで四番手くらいの主要人物だと思います。
天才的な頭脳を持つ強い女性ですが、紫苑に片思いしたり拉致されたり古典的ヒロインに見える要素もあります。
この沙布をあえて主要人物として負けヒロインにすることで、ヘテロセクシズムを否定するストーリー展開になっています。
性別不明のイヌカシの存在も、性別で決めつけてはいけないというメッセージになっています。
ゼロ年代の一般小説で、多様性のある人物設定やストーリーになっているところが先進的な名作です。
名作、歴史大作。だとは思うんですが…
絵も日本画のようで綺麗だし
(厩戸王子以外は作画がテキトーな時がありますが)
オリジナルな部分もあるけど歴史の勉強にもなるし、
厩戸王子は美少年で、王子というより女王様みたいな性格もいいし
あの髪型は今見てもいいデザインです。
あくまで同性愛要素のある歴史漫画なのでBL萌えがあるかというと…
すごく繊細な心理描写で素晴らしいのですが、
毛人はノンケの上に優柔不断な性格でみんなを振り回すし
結局は厩戸の失恋で終わるという残念な結末です。
厩戸も可哀想だし刀自古も可哀想です。
厩戸の新しい夫人の膳美郎女はあの状態で、読んでいて辛いです。
スッキリした絵だから読めますが生々しく重苦しい展開が多いです。
終わり方が不評だったということですが、
この終わり方ではそれも仕方がない事に思えます。
人間の苦しみや悩みを表現したかったのだろうなとは思うんですが。
毛人の息子と厩戸そっくりな厩戸の娘が結ばれてはいるんですが
これも不幸に終わります。
あまりにも娘が厩戸にそっくりすぎて
女体化で毛人×厩戸に再チャレンジしたような感じがなんとも言えず。
この漫画は考えさせられる話です。
疲れている時や鬱展開がどうしても苦手な方にはおすすめ出来ませんが、
体力のある時にチャレンジするといいかもしれません。
BLではなく一般向けなのですが、少年同士の同性愛描写が出て来ます。
光クラブの帝王ゼラ×美少年ジャイボには性行為の場面があります。恋愛ではなく忠誠のようなのですがニコ→ゼラもBL的に見えるかもしれません。
女の子キャラがロボットのライチとカップルなので
女性の存在が邪魔してこないのも良い所。
お話が暗く結末も悲劇的で、単純な両思いの同性愛は出てこないし、残酷な場面が登場しますが、
独特な昭和レトロの雰囲気で描かれた美少年の世界は一見の価値があると思います。
こういう濃い漫画はたまにしか世に出ないのです!
個人的にはもっと出て来てほしいノリなのですが。
サラッと読むとすぐ終わってしまうし皆死んでしまい何がなんだかわからないかもしれませんが、
「ぼくらの光クラブ」も一緒に読むとキャラが把握出来ます。
作者インタビューによると、悪いことをしたから少年達は全滅したらしいのですが、ただ悪いだけではなく大人の汚さに反発する若く純粋な心ゆえの暴走だったので、読んだ直後は、何も光クラブ皆死ななくても…と少し寂しく思いましたが、キャラ皆好きになりました。おすすめです。