前作 愛罪アルファにてオメガ主人公を救わんと乗り込んできた
ミケーレの弟ルカが登場。
お兄さんみたいにスーパーダーリンじゃない。
普通の男の子だな というのが印象。アルファなのに?
容姿端麗は間違いない、けれど ややもすると放出されがちな「オメガ」
威圧感が彼にはないんです。
気になる子にツンケンされて尻尾下がっているような可愛い子なんです。
だからうっかりこの話がオメガバースだ って事を忘れそうに!
そう。気持ちよりも本能が判ってしまう、相手の事が。魂の相手だと一瞬にして魂は告げるけど、確かめようがない。相手の言葉行動に一喜一憂する恋するルカがいじらしく可愛い。
一方ツンケンが過ぎる位な年上の彼(受)は過剰なくらい毛羽立っています。
オメガバースの宿命、「オメガばれ」を防ぐために必死。
彼もまた「本能が知っている」から逃げざるを得ない 何故?
名前と立場がごく僅かに語られる故人が 受彼の背後にゆらりと見え……
(けっこう鳥肌ものだった)
死しても存在感厚く縛る「執着」が
役者である事を あり続けることを約束という縛が!
二人を隔てる壁はオメガだからアルファだからじゃない
それぞれに縛られたものから解き放たれないと向き合えない。
なつの先生だ……ほんと、アルファオメガは普通の人間で
手探りで相手を知ろうとするし
ごく当たり前に恋をして泣いて笑って
ごく普通に人間関係紡いでいくんだ という優しさを感じるのです。
愛じゃなくて恋を実らせたちょっとワンコなルカのこれからが楽しみ。
勢い専業主夫だって厭わないのでは?
小説世界の残虐非道な人間に転移してしまった普通の青年が
「終活」ならぬ小説の顛末通りに死ぬ役どころを成就させようとする。
悪逆ぶりが陰ったものだから敵役の人間にうっかり疑念を抱かれる。
偽物ではない。しかし本人でもない。
記憶かそれともかつて読んだ本の情報か。
自分でありながら他人でもある。
しかしこの世界では自分の「終わり」は定まっている。
自分でない誰かを演じて死ぬ という自虐!
このジレンマと描く文章の明るさが何処と無く乖離しているのが気になりつつ 本編を読み終えた。
しかし。
この作品の恐るべき本領は後日談にあった。
むしろBL作品的にはこの後日談の方こそふさわしい!
気になった方はその目で確かめて欲しい。
この作品 一筋縄でない。
予言の謎。異世界の謎がついに解ける「墜ちたる」下巻!!
上巻から引き続き 主人公と騎士の逢瀬は?戦いの行方は?
主人公が希望の象徴として「在る」事を踏ん張る姿はジャンヌダルクのよう。
彼に寄り添う赤髪の友の友情、愛する人の為戦に立ち向かう騎士の凛々しさに胸が熱くなる
赤髪の少年と赤の騎士のたどたどしい恋慕に微笑み
戦さ場ではキーになる登場人物がここぞというところで活躍する気持ち良さ!
敵国の女王が ただの悪役でなく描かれていて 沈みゆく国の王の悲哀を印象付けられ
最高潮は乗り込んで来た王女と幼王の対決の緊迫感!
設定の密度、破綻なく編まれた筋道、キャラクターの動きそれら全てで
最後の最後まで油断ない物語を引っ張り、本当に面白かった!!!!
ジャンル問わない本中毒の人間には堪らない本だと、本好き同胞の皆様に心からお勧めいたします。
分厚い本で 初見で手に取るには迷うと思う。同じ体裁で最近ラノベの大判書籍が大量に出ているものの内容的に?と思わざる力量のものがある為手にするのを暫し戸惑った。けれどもそこはカドカワの目利きを信じて!分厚い(二度目)に加えて二段組!よく練られたストーリー、ファンタジーとしては定番ながら 主人公を定点として、周囲の魅力ある人物たちが活躍する筋運びがとても読みやすくて好感。「予言」を成就させる道筋を語るファンタジーノベル性が突出しているのと、騎士様(攻)は清廉な心根でひたすらに主人公を崇拝しており BL的エロ成分は少ない。それは欠点になるだろうか?
亡国の危機にあるラーディアが舞台である。名家の庶子 混血の生まれにコンプレックスを抱く騎士が 異界から墜ちてきた少年に惹かれ庇護から愛を抱くまでになる。一方の少年も心許なさから頼るところから始まり心惹かれるようになる……全く持って普通、王道だ。
この本の何が面白いって、何も知らない異世界をストーリーを追うことで知ることだ。「北斗七星」「日本語」「始祖の7柱」等散りばめられた謎。滅亡の危機に瀕している国を「予言」された繁栄に導く経緯 。少年を補助する「火の悪魔」と呼ばれる賢者ポジションの青年、和名であるはずの「タケル」の名を持つ騎士、孤独な敵国家女帝、主人公以外にもいるらしい「墜ちたる者」
腹違いの兄弟の確執 、幼い王の聡明さ、様々な人の関わりや思惑がある上で「予言」が「導かれるように成就する」 不思議な展開である。まだ恋路も覇道も道半ば、後編がとても待ち遠しい。
つまみ食いのBLでなくて たまたまBLジャンルだっただけで、しっかりと読み応えのある小説、それを大いに評価したいと思います。
個性あるキャラクターのどことなくユーモラスな会話が今回も軽やかに展開するか と思いきや!
社会派の筋立てに頭を一撃。
軽やかさに忘れていた。彼らの職場が24時間動いている放送局の、報道という現場の重さと激務を。スペシャリストとしてのプライドとプライペートな感情とコンプレックスとその向こうにある愛情、どこに愛が存在するのかすら見過ごしそうな緊迫感に固唾を飲んで読み進めた。
辛かった。腹もたつ。でも読み進め、設楽の殺し文句「俺をお前の男にしてくれ」で天国に変わりました。最高です。
それにしても。
設楽さんは若い優しい子をくわえ込むと頭から信じていたので(この間入ってきた圭君のライバル君とか)まさかまさかまさか!!!!(三度繰り返して動揺を強調)
栄さんもっとおっさんかと思っていたのです、それも!!!!!でした。
読み応えある一作で大満足です!
頭から聖数があり聖獣があり黙示録世界を思わせる描写が溢れて
先生には珍しくオカルティックな素材を散りばめられている。
血飛沫飛び散る展開になりながら 決してファンタジーアクションにならず
クローズドな世界を構築してしまうの展開はやっぱりナツの先生の特色だと思う。
隠されるモノ在ってはならないものを最初から「閉じ込める」目的しかなかったのだこの物語は。
これを残念と思う向きもあるかもしれない。
それとも驚くべきは 語られるべき内容の濃さ(たとえばマリコの事、天輪の事など)
2~3冊分くらいのボリュームで書かれても良かったのではないかと惜しむ。
クローズドな世界とは 主人公二人の「閉ざされる」運命である。外界と隔絶される彼ら、 たった二人きりで生きる世界を幸福だと思う自分がいる。これは作者の罠かしら?
ヨハネの人間臭くない清浄さにキャソックを装備すると最強に美しいと思います。
また神谷はやつれ姿がセクシーなやられキャラで、人間として美しいのはマリコ。
読むとき彼らが持つ「生きてきた」色合いがそれぞれに見えて味わい深いです。
朧げに語られるヨハネの母と生気強いマリコの対比はあるいは聖母とマグダラのマリアを比するか。
ならば御子は? 読みようによっては謎かけられているようにも読めて二度美味しい作品でした!
本能と理性と激しく揺れる感情と。なつの先生は正面からオメガバースの大命題を持ってきたな というのが一番の印象です。
彼、彼方はまだ成人してないだろうし、恋もこれからというのにまさに青天の霹靂、大津波に襲われるのだ。たった数日、たった一夜の出来事が彼に混乱と絶望とをもたらす様子が 本当に痛々しい。
現れたアルファ、突然の変転、本来なら時間をかけて心を通わせ「伴侶?」の人となりや互いの愛情を育む時間さえなかったのだ。
「運命の伴侶だから」というアルファの言葉を 姉への裏切り罪悪感に苛まれる彼がどうして信じられようか。突然すぎて、余りにも突然に降りかかった事柄に 彼の心が追いつくはずもない。
彼の思いや行動が後ろ向きだと非難できようか?彼の混乱が治り自分の心に落とし所を見つけられるよう 癒され成長する時間が必要だったろう。あのアジールで。
一方、行間に浮かぶ彼の母親の 物事を見据えて静かに行動する姿に感動したし、またマッシモという「かすがい」の存在の心強さでありました。彼らの存在が二人を結びつけ、 十年かかったけれどやっと伴侶ミケーレの気持ちに彼方が追いつけた物語でありました。
さて、読み終わってから前作「蜜惑オメガは恋を知らない」を再読してみると 今作と対になっている作品だと思えて仕方ないのです。心が追いつかない、情熱と本能の狂熱で走るオメガとアルファの関係性、それ故のオメガの悲しみ、アルファの悲しみは共通して語られておりますが、前作アルファの恒星とミケーレは実は表裏一体、もしかしたら恒星に「ありえたかもしれない」ことだと思えたのです。だから恒星がどうして智宏から一時離れたか などが陰のように浮かび上がってくるように見えるのです。
えだまめ先生の描いたオメガバースは人間(ひと)の思いと身体の欲するものの差を丹念に描かれており、とても人間らしい愛の讃歌、また生の歓びを謳うような特別なオメガバース作品だと思います。
前作から待ち遠しかった一作でした。