1996年発表、「初田しうこ」名義での短編集。
「ラストキスから始めよう」
再会ものであり近親ものでもある。
同い年のいとこジェイクは黒人のハーフで、1年間の留学でケイゴの家にホームステイしている。
2人は6年前、子供の残酷さで酷い別れ方をしていた…
ケイゴは本当はジェイクが好き。だけどクロ◯ボとか言ってしまって、謝ることもできずジェイクに犯されている。
でもジェイクの方だって本当は…
…というまぁある意味両片想いの王道系。とはいってもほのぼの風味は無く、思春期のヒリヒリした焦燥を感じます。ラストは年相応の可愛らしさ。
「OUT OF BLUE〜汚れた天使」
殺人未遂の被害者としてショックで記憶が退行し年齢自認が子供になってしまった尚哉を引き受けている慶彦。実は尚哉は加害者の愛人で、隠れて慶彦とも関係していたが…
尚哉という人物の背負うものが重苦しい。両親、愛人、そして慶彦にまで殺意を向けられて、それでもどこか無垢なのです。
「ズルい男」
義兄弟もの。
澄ました秀才の義兄・将幸が男好きと知って脅して抱いた和也。
だが今は立場が逆転して将幸の誘いを断れない。和也は将幸に本気になってしまったから。
この短いページ数で、将幸の過去、苦しみ、和也の後悔、決意が詰まっている。
「瞬きの季節」
客に本気になったが結局は結ばれないホストの狩野。
やけになって運転中に事故を起こし、反町という青年にも怪我をさせてしまう。入院中に反町と親しくなるが…
短い中でこれほどのドラマが詰まっていることが凄い。多分反町は狩野の中で永遠になるのでしょう。
「吸血と給血と。」
異色のホラー風味。
異常なほど献血をし続けるリーマンの笛木。あるひとりのドクターに声をかけられて彼の部屋に通うようになり…
ドクターの相手が自分だけではないと知った笛木は、この後どう変貌するんだろう?
「ラストキスから始めよう」番外編「本編まで何マイル⁉︎〜ブラザージェイクの多難な日々〜」
ケイゴとイチャつきたいのに、おかーさんおとーさんがいてナニもできない、というジェイクの日常。
「メイキングオブ『ラストキスから始めよう』」
表紙がHになりすぎたらだめなの?でも何とかなるさ!というお話。
鹿乃しうこ先生のごく初期の作品。
さあ、しうこ祭りを始めますよ〜!
電子単話。
短い話なんだけど、すごく引き込まれた!これは私にとって掘り出し物。
主人公は、冴えない人生を送る28才の荻沼。
合コンに誘われて、本当は行きたいけど断る。なぜなら女性とうまく話せない、金がない、童貞、服もない。ないないない。
どんよりして部屋に帰ると、中に見知らぬ男がいて…
…と始まります。
このメガネ男は「天上生命体(天使)」と名乗る。そして、お前は2週間後に転生すると言う。そして。
俺、転生前の童貞を食うのが好きで、と言いながら荻沼を犯しにかかる。
しかしいざ挿入の直前、荻沼は体を動かして。
これは天使にとって驚きの反応。だって能力で動けなくしてますからね。で、必死さに免じて死ぬまでの2週間で彼女を作って脱童貞したら転生取り消し、を約束します。
荻沼は即行動を起こし、本当に1人の女性とホテルに行くまでの仲になる!
しか〜〜し!
荻沼は敗れ、メガネ天使にブチ犯されます。
それがもう良くて良くて、でも良いだけで幸せじゃない!こんなんじゃ死ねない!と抵抗。その態度に怒った天使は……
展開は予想外、こんな話ある⁉︎という荒唐無稽。
絵は上手いと思う。絵柄としても好み。エロは激しい。
短編だけど短さを感じさせない。この作者様を追っていきたいです。
コワイコワイ…
やっぱりこの作者様はただもんじゃない。
BLにおいて、三角関係なんて別に普通。3人でヤるプレイだってまあ普通。
でもこの3人は…
こじれてるし、行き止まってるし、息詰まるし、救い無いし。
とにかくヒリついて痛々しい。
まず冒頭。
男の子的に好奇心でAV鑑賞。それがゲイビで、見てた3人でぬるっと現実化するその過程。
このぬるっと具合がなんともザワっとする。
ここから深淵にはまりこんで、出られない蟻地獄のような関係が始まり…
心はきちんとした方向性があるからこそ、このカラダの関係性が痛い。
どうしてこうなっちゃうの…
…と違和感を感じてたら、出てきたのが過去玉井と小川の間にあったある事件。
はあ〜……そっか…と腑に落ちた。
腑に落ちたからって全然ほっともできず、こりゃ永遠に引きずるよなぁって思った。
要は2人の間の難しいこじれ。そこに宮島が加わった形での三角形なのかな。
この解決は確かに平和的かもしれないけど、私はモヤってるかも。
テーマとしては正直趣味じゃない、だけどこんな世界観を完成させていく先生の個性にはノックアウトさせられてる。評価は迷うけど「萌x2」で。
この作者様って、好き嫌いが分かれますよね。
この作品も、なんかすごくエグってくる。読み進めるのが怖いくらいに。
はじめは、恐る恐る2丁目にやってきて初めてナンパされる男の子…のイメージなんだけど、実は2丁目である意味有名人のワンナイトくん。
今夜はイケメンにお持ち帰りされて。
何度もこんな事を繰り返しているはずなのに、初めてのようにビクビクと怯え、初めてのように震えて受け入れて。
一方イケメンの方はこの子を飼うと言う。
それからの2人は爛れたようなセックス三昧。ていうか調教?
大人の三國は何考えてるかよくわからないけど、とにかく未智にお金を使う。
しかし、未智の方だってお金を使われ慣れているんです。
とにかく全編にわたりどうにも薄暗く不穏な空気感。
その元凶は未智の過去にあります。
判明してくるのは、未智がロリ人身売買の被害者のようであること。何も知らない幼児のうちからドップリ性虐待に浸かっていたようであること。
そして何より。
三國が関わってた⁉︎
…と、ここはドラマ過剰の仕掛けかな。何も三國やカテキョを過去に絡めなくてもこの話は成立するのに、と思ったけど、とにかく背景が酷い。
ラストはなんか枷が取れて霧が晴れたような顔をしてるけど、私には全然そんな風には思えなかった。読後感悪し。
でもこれこそがこの作者様の個性だし強みだとも思う。
元ホストのノンケが、男を愛するようになるまで。
元No.1ホストのハルが、女性客とのトラブルに懲りて男性向けの店に入店しようとするところから始まります。
ハルは軽い気持ちで面接を受けますが、ここはゲイ向けのセラピーサロン、受けあり攻めあり、添い寝ありコスあり本番もあり、という事でまずは体験と適性を見るために…とベテランセラピストの奏輔と実際にプレイすることに。
戸惑いだらけの男とのプレイだったが、奏輔に意識がトぶまでイかされて…
…と、もうここでハルは奏輔にちょっとときめいてるんですよね。ノンケなのにここはご都合かなぁとは思いつつ。
こんな感じで、他のセラピストや奏輔と一緒にマンションの部屋に同居して、Hの研修も続けるうちにどんどん奏輔に惹かれていくハル。
素直で可愛いところもあるハルに奏輔の方も…という流れ。
まああまり深みは無いですけど、包容力のある大人の奏輔はとても魅力的だし、Hの研修は想像以上にエロく甘い。これは恋しちゃいますよ。
セラピストになったハルと顧客とのHもあるので、地雷の人は注意。
全体に絵柄も内容も読みやすかったです。
「よくイけましたヤンキーくん」電子限定12P有償小冊子となります。
本編3話の「晩餐会」まであと数日…の時点のお話。
一臣にある部屋に呼び出された瑛二と時雨。
2人がヤらないから、と「フェロモンの最大値を出さないと出られない部屋」に閉じ込められた!
瑛二は焦るが、時雨は冷静に「お任せください」と手を差し出す。
tnkの先を紐で縛られて、感じる場所感じるやり方を熟知した時雨の手で一方的に翻弄される瑛二。
といっても挿入はナシです。指での前立腺責めでドライでイくが、時雨はまだやめない!
するとフェロモンの最大値が出て、ドアロックが解除され…
まだお互いの気持ちは通じてない段階。時雨の精神力に驚きです!
アニメイトやとらのあな等、色々な特典、リーフレット、ペーパー等を一冊にまとめてくださった豪華「特典小冊子」です!
「アニメイト 12P小冊子」
一臣そっくりの幼児におっぱいを吸われている夢を見た唯人。
目覚めたら一臣本人が乳を吸っていた、という一編。
夢で見た子供の事を話すと、ダメだ!お前の母乳はオレのものだ…とか言い出すお話。
「とらのあな 4Pリーフレット」
カバーはカラーイラスト。(本作の表紙の絵柄。メイド服の唯人のパンチラ)
中身は、優雅にお茶を飲みながら唯人に似合うコスプレを妄想する一臣。で結局いつものメイド服がイイ!となりました。
「ホーリンラブブックス 両面イラストカード」
片面高校時代の2人のイラスト1枚。
裏面は、同じく高校時代、昼寝中の一臣を見ながら(みんな一臣とセックスしたがる そんなに?)と思いながらキスしてみようと顔を近づけてみるけれど…という1p漫画。
「コミコミスタジオ ペーパー」
もしも一臣が執事だったら、のお題で、唯人が坊っちゃまに逆転して一臣が溜まる前に強引に処理をしようとしてます。
「竹書房特約店 ペーパー」
走って追いかけて。読書してるのに引っ付いて。ケーキを食べさせてもらって。よしよししてもらって。さてご主人様はどっち?一臣って大きな犬みたい…という1p漫画。
「書泉 ペーパー」
モノクロイラスト。
メイド服の唯人が一臣の頬にキスしてる。一臣は嬉しそうに優しく微笑んでいます。
とにかく2人の甘々な様子。微笑ましくて可愛いです。
「よくイけましたヤンキーくん」のスピンオフ!
アノ加賀美家の長男(瑛二の兄)の一臣のターン。
「よくイけ〜」の序盤で、加賀美家の超豪邸内の自室でお茶を飲みながらメイド服の処理係と合体していたあの人です。
実はあのメイドさんは一臣の同級生の唯人。
なぜ唯人がユイとなったのか。そこを描くのが本作です。
出会いは高校。
当時から一臣には大勢の取巻きがHの順番待ちをしているような状態。なのに何故か一臣は唯人とばかりいたがる。唯人にはさっぱり訳がわからなかったが…
…と始まります。
それは、なぜか唯人には加賀美家の強大フェロモンに耐性があったから。
1人だけ靡かない唯人は一臣にとって特別で、唯一の「友達」。
ところが、唯人の父が事業に失敗して大学進学を諦めた時、突然一臣が借金の肩代わりをしてくれて自分の世話係になってほしいと頼んでくる。
確かに一臣は唯人に下心はある、しかし、フェロモンが効かないからこそ安心して一緒にいられるわけで、その辺の一臣の片想いは結構切ない。
一方唯人は唯人で「特別」でいるためには一臣を好きになってはいけない、と。
それなのに…
いっときフェロモンが効いてしまい、ガツガツのゴリゴリに抱かれる唯人!
…となると、真面目な唯人ですから。自ら「恋人」ではなく「処理係」として一臣のそばにいる事を選ぶのです。あゝ切ない…
切なさは一臣も。愛する唯人を性処理係として処遇しなければならないのだから。
そんな切ない期間を経るけれど、唯人って心の芯はすごく男前なんですよね。
ハの字眉毛の男の娘姿の下で、強く自分の意志を持ってる。結局その唯人の心が一臣を救うんですよね。
エロシーンはかなり激しいけど純愛のベースが揺るぎなく、意外なほど感動。
「よくイけ〜」のトンデモ兄さんも真人間だったということで「萌x2」で。
冒頭がとにかくトンデモない描写/展開から始まるので、こりゃダメなヤツかも…と思いつつ読んでいくと…
いや「神」かも⁉︎くらい面白くて引き込まれていきました…
主人公は瑛二。
通学中の電車内で集団痴漢に遭っているところを1人の男性に助けられる。
その男は瑛二の事を知っているらしく、なぜこんな事が起きているのか原因を知りたければ、と瑛二を「実家」に連れていく。もとい拉致る。
瑛二は母子家庭だけど、実は超名門「加賀美家」の次男だった!
…と始まります。
本作はオメガバースではないけれど、この加賀美家はいわゆる超強α家系のような存在といえばわかりやすい。
ともかくその血が覚醒したからには瑛二も加賀美家の一員にならなければ。つまり一族の秘密を囲い込もうというわけ。
要するに加賀美一族は全ての能力プラス精力/性力が常軌を逸している。
まだDTの瑛二はその強大な覚醒精力をコントロールできない。だから周囲を狂わせて結果襲われているというのです。
そして、とりあえずは朝起きて処理、出発前に処理、学校でも1時限毎に処理、と一日に何度もヌかなければならない生活が始まるのですが。
この辺り、トンデモギャグの方面で展開もできる話。しかし本作はどちらかというとシリアスめ、葛藤を描く方に舵を切っていて、切なさや覚悟も読み取れるような骨太の筋立てになっていると感じました。
生活全般そして「処理」の世話係・時雨との関係性には萌えます!
主従の中で、凄まじい精力/フェロモンの中で、「愛」を持って抱く。このアツさ。
時雨最高。ストロングスタイル最高。