単行本未収録の読み切りを個人出版で電子書籍化した、との事。
アンソロジー「明日、死ぬ」の収録作品です。
主人公は医大生の優彦。
夏のある日、隣家の幼馴染・紡が急にやってきて「俺の葬式のリハーサルやらない?」と言ってくる。
優彦は心底驚く。だって紡はもう何年もガンで闘病して入院中なのだ…
紡は楽しそうに優彦に「お葬式の後にやって欲しい事」を語る。
まず骨を盗む!
それから2人でいつも遊んでいた海辺で。
ちっちゃなぬいぐるみを参列者にして。
優彦が追悼のスピーチ。
スピーチの後は、遺品を燃やすこと。
最後に骨を海に散骨してね。
「あと遺言 俺のことは忘れて」
笑ってて
他の誰かを好きになって
たまに思い出して
そしてかかってきた一本の電話。
優彦はリハーサル通りに紡のしてほしいお葬式をやり遂げます。
私いい歳ですが、本当に大事なひと、本当に大好きな友だちが亡くなったことありません。
優彦の心を思うと、心が痛くて涙が込み上げました。
でもこの話にはまだ続きがあります。
これは紡と優彦に起きた奇跡なのか。
良かったね、なのか、これから先もずっと⁇、なのか。
紡は可愛らしく笑っています。
ARUKU先生やっぱり凄い。凄い。凄い。
このシリーズももう6巻目ですか…
内容的にはまあ正直、時折起きる小波乱、だけどそれをものともしない瀬尾と名取のラブい関係!というところ。
さて、6巻では「原点回帰」がテーマとなったそうです。
私に言わせれば、ずっと原点が守られていますって。
瀬尾=男優キョウは女性人気も上々で、今度は写真集が発売されることに!
その撮影でハワイに行ったり、写真集お渡し会があったり。
名取はキョウ人気に嫉妬しちゃうけど、瀬尾はいつだって名取を強く深く想ってる。
ここがこの作品のとにかくいいところ。
一見クールで醒めてるような瀬尾だけど、名取にはとにかくストレートに愛を伝えてる。まあ主にカラダで。
そんな2人に今回降りかかる波乱は「ストーカー」。
キョウの大ファンの男の娘が、もはや妄想に支配されてキョウは自分のカレシだと思い込んで行動する…
怖いね〜。推しがこじれてこうまでなる狂信ファン。
もちろん、2人は無事だし、愛も変わらず。
瀬尾は男優だけあって体は綺麗でテクもスタミナも高レベル、だけど名取とのHにはそんな小手先は無関係。まっさらで剥き出しの愛情と欲望とで名取の隅々まで味わい尽くし、自分も名取に与えているのがビシビシ伝わってくる。
そんな2人のストロングスタイルが大好き。
ケーキバースの長編読むのは初めて。
という事でちょっと構えて読み始めたけど、「捕食」と「被食」の本当に恐ろしい部分は描かれてないので結果的に安心して読めました。
主人公は、学校ではモサいけれど実はSNSでキラキラっ子インフルエンサーのeveをやってる周(あまね)。
そんな時、通っている学校に電撃引退したアイドルのRENNが転校生としてやってきて…
…と始まります。
コミカルなのかな…と思いきや、世間では無差別傷害事件が起きていたり、RENNの引退の真相、周の抱える過去などが見えてくると、意外なほど重苦しさが横たわっている。
皇(RENN)はフォークで、グループのメンバーを食べたい欲求が怖くて引退に逃げたし、周はケーキで、小学生の時に弟と一緒に襲われた経験がある。
はじめは周の打算で皇をインスタに載せる代わりにキスでケーキの体液を与える、という関係、でも次第に2人の行為は熱を帯びてエスカレートしていく…
この辺は王道的展開。
皇は本気なのに周は自分なんてというテッパンの誤解とすれ違いとか。
また、皇は周に一貫して甘くて捕食欲に葛藤する描写なし。
だから読者もカニバになっちゃう⁉︎とかの不安も無く安心して読める。
周が昔の犯人にまた襲われ…という転もしっかりあり、そこから皇と周の結びつきが強固になる展開も王道。
「食べる」が完全に性的な行為に置き換えられて、エロも濃いめ。
絵柄は綺麗。皇はカッコよく周は可愛い。
ケーキバースの中では薄めなのかもしれないけど読みやすさはあります。「萌x2」で。
Dom/Sub大好き〜という事で、本作。
主人公は、Switchの東乃。
大学生だが、Dom専用のプレイクラブでSubキャストのサポートをする黒服としてバイトをしている、という設定。
ある日、VIP客でDom性が特に強大な西條という客が来て…と始まります。
Subキャストの代わりに東乃がプレイの相手となり、Subとしての快楽を知った東乃は西條に想いを募らせ…
…という感じで、2人の出会いからの恋愛への流れはまあまあ想定内というところ。
東乃はSwitchを中途半端な存在と思っていて、完全なSubではない自分は西條の相手にはなれない、と初めから諦めている。
しかし西條の方も本気で東乃を…という両片想いを経てのハッピーエンド展開はめでたし。
絵柄はとても良い。特に西條の造形は非常にカッコいい!
が、精神的にSwitchである苦悩はあるけど、2人の関係性は従来のDomxSubと同じと言ってもいいかな。もっとSwitchの特性が出れば良かった。
評価は「萌x2」で、絵も良しストーリーは順当、エロも十分。ではあるけれど、本作に限らずDom/Subモノってプレイ/コマンドが即、性的なものになりがちな部分が引っかかる。
本作では高級プレイクラブと言いつつ結局高級風俗?本番行為もSMもどきも有り?みたいだし、キャスト保護のためとはいえバックヤードで黒服やオーナーが見てるんだよね?
なんだかなぁ。
元はアンソロジー「東京戦慄奇譚」の1編としての読み切りが、その後続いて1冊となって…という作品。
だからテイストはホラーっぽい。そしてSFっぽくもある。
というのも、一緒に暮らす恋人が人間ではない、というお話。
視点は禄斗。
幼馴染で恋人の七海の様子がおかしい…
…と始まるんだけど、実は禄斗の方が…という物語が始まります。
アンソロ掲載部分の第1話では、禄斗がどうやって生きているのかだけが提示されて宙ぶらりんだったけど、2話以降禄斗の「食料」は七海が調達している様子が明かされて、いよいよホラー味が増してきます。
禄斗は明るくてワンコで、でも嫉妬してる時は殺気が凄くて、そんなところも怖い。
そして、読んでいくうちにクリスチャンらしい七海がここまでしてしまうのは正に禄斗への愛であり、禄斗にそばにいて欲しいんだという心が伝わってきて、段々哀しみの色が見えてくる。
禄斗が自分の真実を知り七海がある決意をする展開は、本当にこれしか無いの?と思いながら読みました。
5話の解釈は…
禄斗は七海と同じようには死なず、またさまよって新しく「寂しい子」の前に現れた…そんな風に読みました。
途中で出てきた同族とは違って、「禄斗だった個体」はただ寂しい人を笑顔にしたい、そんな存在なのかな。
ラストに向かって、怖さよりもただ哀しさが漂って…「萌」で。
へぇ〜、この2人がねぇ…という気持ちで、まず「青と碧」を再読。
あ〜尊い、と再確認し、うん、この吉田くんならあるかもね?と思いつつ本作へ。
しか〜し。
表紙のような笑顔いっぱいとはちょっと違うよ。
私の好みは、ストレートに愛を語り真正面からぶつかり合うストロングスタイル。
対してこの2人は…
駆け引き、ですよね延々。
といっても、本作は単によくあるBLではなくて、大人になってできた友人との新しい関係性のお話だと思うのでこれはこれでいいんだと思う。
ただ、飯田はクールなようで幼い頃からのヒネクレをずっ〜と引きずっちゃった人物。
飯田を素直にさせるのはなかなか難しそう。
先に素直になった吉田の方が誘導していく感じ?
頭のいい飯田は、ある日急に「駆け引きは時間の無駄だ」とか悟りそう。
ケンカップルと深いところで繋がる相性は矛盾しない。だからこの2人は青と碧とはまた全く違うニコイチの姿を見つけていくんだと思う。
ここではまだまだ駆け引きの強さが目立つので私の評価は「萌」。でもすごく面白いし新しい視点を感じる。
激カワ・ちょいエロのライトラブコメ、第18巻。
今回は、朝春が中心の巻です。中心どころか朝春だらけ!
まず最初のお話は、「視える」おばさまに守護霊が強い!と言われた直後に、様子のおかしな立てこもり男を落ち着かせるストーリー。
どうやら守護霊は仏らしい…
そんな朝春最強エピソードの後、輝のお付きのタコ(滝米花)が絡まれた女性を助けて半グレにボコられてしまったお話。
ショックでイキる輝を宥める朝春。
半グレの居場所を突き止めて侵入すると滝米花がいて、一緒に捕まって朝春は媚薬を盛られてしまい…
…と危機一髪展開もありつつ、一冊としては順当に2人のラブラブが拝めます。
今回「朝春回」という事でカバー下も全部朝春尽くし。小鉄子先生の愛が伝わってきますね。
絵もストーリーも安定で読みやすさも抜群、あっという間に読めちゃう。でも満足感も十分です。
地球に潜り込んでいる宇宙人が関わる、ほのぼのSFファンタジーの2巻目。
第7話〜10話まで収録。
宇宙の中では大変貴重な「星降石」を盗まれた康介。
でも実はそれが本物ではなくて、きっと犯人がまた来るぞ?という事でテフラ・ノジ・レティみんなで康介を護衛する事に。
やはりやってきました、別の宇宙人!
3人は彼を捕らえて一旦自星に帰る事に。
往復で約半年、テフラがいなくなってしまう事になりました。
テフラはもう一度優しく康介に告白して、半年後に返事が欲しい、と。
さて、その後の康介はぽっかりと時間が空いたのでサークルに入る事に。
そこは「鉱物・化石研究会」。
部長とその友人の2人だけのサークル。そこに、康介は優希を誘って入部します。
早速鉱石採集キャンプに行く4人。
そこで部長とその友人がラブラブだと知った優希は、康介に重大な告白をする…
優希のぶっとびな真実は読んでいただくとして、宇宙規模のモテ期に突入の康介がなんかかわいい。
次巻で完結予定とのことなので、楽しみに待ちたい!
ところで、実は本作、配信時に私が何度も登録依頼していたのに毎回理由もわからずはねられ、あきらめていました。今回登録されていて非常にうれしい。申請してくださった方ありがとう!
ほのぼの同居BL「ただいま。」のその後短編集その3です。
3話収録。
「ベーコン作って食べる話」
章平がベーコンステーキ食べたい、と言って、まずベーコンから作るお話。
2人で塊り肉買って、砂糖と塩胡椒をすり込む。
翌週(!)燻製の過程へ。60分いぶす。
その出来上がったベーコンを大きめにカットして、ステーキとして焼く。
レンもビックリの美味しさ。またやりたい!やりましょうね〜。
というお話。平和。
「思い立ってお祝いする話」
古い手帳を見ていて、今日が「お付き合い記念日」だったと気づいたレン。
章平は、ならお祝いしますか、と料理のできないレンもお手伝いして急遽グラタンを作る。
家にあったちょっといいワインをあけて小さなパーティーになりました。
章平と一緒で毎日幸せ、と本人にちゃんと言うレンが素晴らしい。
「章平が留守番する話」
お正月、レンが実家に一泊することに。
お留守番の章平は読書して、ひとりお雑煮。お風呂に入って、また読書。
一冊読み終わってさあ寝るか。ダブルベッドの片側で眠る章平。
起きてひとりの朝食、そしてストレッチ。なんかヒマ…
そこに、ピンポーン。
レン帰宅!
早速章平手作りのお雑煮を美味しそうに頬張って、章平もやっぱりひとりより一緒が美味しい、って笑って伝えます。
3編とも日常の一コマで、特にオチなどはありません。
エロなしでほっこり。安心して読めます。
章平が整える「ていねいな生活」が優しい空気感ですね。
下巻。
蛍と晶にそれぞれ降りかかっている危機とその打開/決着がスリリングに展開していきます。
読んでるとホントにハラハラ。ホラー/オカルトというよりも、捕まった晶はどうなるの⁉︎このまま殺されるの⁉︎的なサスペンス感。
さて、本作の大きなテーマであるオカルト的な2人の能力。
過去と未来の交差が2人がお互いを救う鍵になるわけだけど、読んでいくとただ「過去と未来」という一本の道に2人が立っている訳ではない事がじわじわとわかってきます。
つまり…
…時系列もずれたパラレルな世界線が存在している。
これは難しい。
だってさ。先にある世界線の中の蛍が、過去危ない目に遭った晶を見る。そして過去に干渉しに行く訳でしょ?
そうやってやってきた蛍は、晶にとっては未来の蛍だったわけで。
実際複雑だなぁと思う。
ハラハラ感と、間に合った〜!というカタルシスはありました。
よく読んでみれば、ひいおじいちゃんの言葉とかにヒントがあったのかな。
多分…ひいおじいちゃんは未来も過去もパラレルも見えて、でも「ひとり」だから自分が身を投げ出せばそのまま死んでしまう。実際死んでしまった。でも2人なら!
そして、晶の言うとおりどんなパラレルの道を通ろうが、結局は結ばれる未来があったのでしょう。
絵柄は相変わらず端正。サスペンス感が楽しめました。