タイプの違う優しい2人のクロニクル
横浜から青山の大学通う千宙(攻め)は大学の入学式で一目惚れした秩父から通う菫(受け)と仲良くなりたくて、距離を詰めすぎず離れすぎずと絶妙な間取りで仲良くなっていきます。
通学が遠い菫が一人暮らしを検討していると知るや菫の気にいる物件を探し、ルームシェアへ持ち込みます。
タイプが違う2人ですがとても馬が合い、お互いを尊重しながら生活していくのです。
菫と千宙の2人それぞれの視点で、大学生活から社会人になってからの2人の生活を覗いてる感じ読んでいきます。
千宙は優秀で、それほど努力しなくても要領良く生きていけるタイプで就活でもたくさんの内定をもらっていました。
菫をとても大切にしているのですが、優しすぎて断れずに菫を泣かせてしまうこともありその度に後悔しています。
菫はほんわかのんびりというタイプですが、直感を大切にし、頑固なところもあります。
この話には悪い人が出てこないので、ストレスフリーで読めます。
同性の結婚が認められた世界線なので、初めから男同士とか考えることなく、普通に好きになって付き合うという感じに話が進むのですが、あらすじには書いてあるけど、本筋に同性の結婚が認められてるって話が出てこないので(最後の方にやっと出てくる)、同性同士ってことに誰も突っ込まないんだなーとちょっと不思議な気持ちで読んでいました。
2人が穏やかに時々困ったこともあったりしながら、これからも歩んでいくんだろうなとほんわかした気持ちで読めるお話でした。
初回限定フリーペーパー
北村がプレゼントしたクマリスのマスコットをどうやって手に入れたか。
北村がクリスマスプレゼントと一緒に篠崎にプレゼントしたいと思ったのは、篠崎がどうしても取れなかったと言っていたクマリスのマスコット。
今まで物欲がなかったせいでどうでもいい(北村にとって)ものは当たっていたのに、どうしてもプレゼントしたいと思ったマスコットは全く当たらず、ガラポン抽選を引いた数は優に100回以上。
同僚のアドバイスで神頼みまでして最後の最後で一等が当たり呆然とする北村の本気度がすこい。
こんなに愛されて篠崎は今度こそ幸せになれますね。
それにしても当たらなくて溜まりに溜まったボールペンとステッカーのその後の行方が気になります。
同棲してた男に貯金を全部持ち逃げされ、やけになって出会い系で男とホテルに行こうとしてやばいやつにひっかかり、必死で逃げてきた篠崎(受け)の前に現れたのは会社の後輩の北村(攻め)
北村の提案でセフレになることになるのですが、会社でも評判のイケメンで仕事もできる社内でも人気の男が何故?と思いながらも優しく
してもらって、2人の時間が心地よくて。
そんなおり、北村に告白されるのですが、今まで裏切られてきた経験から臆病になっている篠崎は‥
家庭環境により、子供の時から周りの空気を読んで生きてきた篠崎。
北村には最初から溺愛されてて、篠崎はとても幸せそうで、読んでてとても嬉しくなります。北村から告白され一層甘やかされても、父に母に恋人にと何度も裏切られてきたため、信じることができません。信じられると思っても、ふとした時にもしかしたら今度もと思ってしまい、苦しんでいる様子が気の毒で仕方ありませんでした。
今仕事に生かされてるとはいえ、こんなにいい男を自己肯定感の低い男にした、裏切り者たちに制裁を。
そして何度も出てくるクソ元彼。
どっかの海に沈めてやるって北村じゃなくても思ってしまいます。
しばらく、戻ってこれないところに送られたみたいですが、お金だけ返して二度と顔を見せないでもらいたいものです。お金は絶対返して欲しい。大事なことなので二度。
大学で講師をしている春也(受け)は、亡くなった恋人の俊を忘れられないままもう12年になります。
新学期に入り、俊とよく似た話し方をする友彦(攻め)を見つけます。顔も姿も違うのにふとした瞬間に俊思い起こすのです。
偶然なのか学外でも頻繁に会う友彦を意識し、その度に俊はの不在を再確認し、慣れてきていたはずの寂しさがより増すのです。
12年経っても俊を忘れられない春也が切なくて切なくてたまりませんでした。でも決して読んでいて苦痛ではなく、こんなにも愛した人がいない苦しみが少しでも和らぐといいと思いながら読んでいました。
どこが俊を思い起こさせる友彦に惹かれていって、でもいつも俊と比べてしまって、2人に対して失礼だと思ったりと、春也の葛藤をら我がことのように感じました。
奇跡のような出来事で、恋人がいなくなってから色褪せてしまった景色が再び色を取り戻せるまでを堪能できました。
めんどくさいと言いながら面倒を見てくれる神様や、親友の恋人を気遣って思い出話を共有してくれた越川もいい人(神)でした。
とはいえ、越川は12年もずっと俊を思い続ける春也を見ていて俊が羨ましくなったのか、それとも12年も親友の恋人を気遣ってるという時点で元々春也のことが気になってたのか途中当て馬のようになってしまっでしたが、きっといい人なんだと思います。
少しづつ距離を詰めようと思っていたのに、友彦の出現で焦ってしまったんだろうな。
初めは気まずいかもしれないけど、これからも良い関係が続けられるといいなと思います。
作者様は地味な話とあとがきでおっしゃってましたが、派手さはないけどじんとくるお話でとてもよかったです。
元教え子 ✖️ 元教師の20年越しの再会
20年のコールドスリープを終了した元高校教師の真人(受け)。
無事に目覚めた真人の前に現れたのは元教え子の渡良瀬(攻め)でした。
20年の年月は残酷で12歳年下だった渡良瀬は8歳年上の頼れる立派な美丈夫になっていてびっくり。
様変わりした世間で生活していくためのフォロー担当として渡良瀬は真人の前に現れたのでした。
真人は、当時未知のウイルスに感染し治療法の確立までコールドスリープすることになります。本来は2年のスリープまで安全が確立されておりその予定だったのですが、真人の体質が長期コールドスリープに耐えうるという検査結果により、20年の長期のスリープの治験に参加することになってしまったのです。
その時は体調は悪化の一途を辿っており、コールドスリープしてもらえないのではないかという懸念から承諾したのですが、実際20年後にぽいっと放り出されて、自分だけが浮いた存在な感じになり不安定な気持ちになってしまいます。
そんな真人をフォローするのが渡良瀬です。
渡良瀬は真人がコールドスリープに入る直前に卒業した元生徒で、担任も何回か持っておりとても懐かれていました。途中告白までされてしまうくらい。
コールドスリープに入る直前に2年で終わると連絡していたため、約束を反故にした気まずさがあったのですが、渡良瀬はすっかり忘れているようです。
大分慣れた頃、十分な謝礼で働かなくても良いのですが、社会から隔絶された気持ちになり仕事がしたいと思うようになります。
当時違法な治験だったこともあり、死亡扱いになっており、自分というものを取り戻したいと思うようになるのです。
命を盾にしたコールドスリープの期間延長提案は人道に反します。
天涯孤独な真人は治験者として最適だったのでしょう。
タイミングが悪かったんですよね。
当時違法だったため真人は戸籍も抹消されて存在を消されたのに、今ではそれも合法となり治験者たちは盛大にお祝いされるというこの差。
渡良瀬がそばにいなかったら病んでたのでは。
真人が歴史が好きだった理由。
必要だったからと思い込んできたけど、よくよく紐解いてみると、もらってなかったと思っていた両親の想いとかちゃんともらってきたんだとか歴史がやっぱり好きだったんだとか、教師の仕事は好きだったんだとか、時間はかかったけど理解できて良かった。
渡良瀬はこの20年の間、真人を探し続けていたようですが、ちゃんと経験もしてきたようでした。恋人がいたのはずっと真人を探し続けて疲れた頃だったのかなとか、今フリーだったのはたまたまなのか恋人に別れを告げたのかとか想像が捗ります。
20年後の世界にも慣れてきて、色々うまくいって、渡良瀬と恋仲になり、「答え合わせは人生の最後にしよう」とプロポーズされて、人生の再出発という感じで終わっていたのが、卒業式で歌われるあの歌が思い出されてしみじみしました。
高校のミスターと準ミスター
小さい時から可愛い可愛いとチヤホヤされ女王様(王様じゃないんだ)のように天狗になってた美鶴(受け)がいきなり陰キャになったのは、高校で自分より騒がれているイケメンの一ノ瀬(攻め)に一目惚れして告白して玉砕したことがきっかけでした。
それ以来、前髪や分厚い伊達メガネで顔を隠し人とも付き合わないで、ガリ勉するようになってしまった美鶴。友人と呼べるのは幼馴染の喜一だけ。
高校3年になり、夏期講習へ通うようになった時、一番前の席を陣取り、勉強体制に入っている美鶴に声を変えてきたのは、一ノ瀬でした。相変わらずキラキラしたイケメンオーラ全開ながら、検事になる夢のため難関大学法学部を目指して真剣に勉強しようと夏期講習にやってきており、美鶴に質問してきて一緒に勉強するようになり距離が縮まっていきます。
過去、自分を全否定してきた一ノ瀬に美鶴は怯えるのですが、全く美鶴のことは覚えてないらしく自分の顔目当てではない勉強を一緒にする仲間として接してくる一ノ瀬に怯えるやら嬉しいやら。
雑誌掲載の2編と短編1編になります。
両視点で話が進むので2人のことがよくわかります。
可愛すぎて、中学校までは色々と騒ぎになり、
美鶴は天狗になってたけどそれは周りも悪くて、両親に愛されて大事に育てられた素直な子なんですよね。だから、ひどい言葉で(告白も酷かったからおあいこではあるけど)振られた時、自分の全てが否定されたと思ってしまった。
女王様であることをやめたのはよかったけど、ちょっと振れ幅がひどすぎて可哀想になりました。お陰で高校生活は楽しいものにはならなかった。
最終的に一ノ瀬と恋人になったからいいのかな。
お互い好きな人によく見られようとして、すれ違ったりするのが、微笑ましいやらもどかしいやら楽しく読ませていただきました。
美鶴に喜一という幼馴染がいて本当に良かった。常にフラットな状態で接してくれる喜一の存在は大きかったです。
これからも何かあれば喜一を間に入れて仲直りするんだろうな。
そしていつか喜一の恋を2人で応援するんだろうな。
想像するだけで楽しいですね。
それにしてもこれを読んでる今まさに受験真っ只中。
受験生がいる我が家では、一向に勉強しない我が子にイライラしてしてばかりなので、こんなに一生懸命勉強する2人が羨ましい。
ちょっと不思議なのは、一ノ瀬には何度もスカウトが来ていたようですが、美鶴は母親がモデルだったのに、子役モデルやってなかったことです。一般の人でも、それだけの騒ぎになるくらいならスカウト来るだろうし、知り合いに業界の人がいるだろうし声かかってもおかしくなかったと思うんだけど。
女王様なんだったら声かけられてたらやってたんじゃないかしら
幼馴染の長ーい恋
猫と話せる能力のある猫美(受け)は人と話すのは苦手。
今は祖母から引き継いだ猫専門の古書店を営む傍らこれも祖母から引き継いだ猫関連のよろず相談処で生計を立てています。
そんな猫美を何くれと気にかけてくれるのは小学生の時からの幼馴染の陽平(攻め)です。
能力容姿全てにおいてハイスペックな陽平がなぜずっと仲良くしてくれるのか不思議に思う猫美です。
ある日、陽平から猫屋敷についての情報が寄せられ、猫が心配な猫美は陽平とともに様子を見に行くのですが‥
実は猫美の祖先が猫神からその能力をもらっており、祖母からの遺伝の能力で、名前は初代の名前からもらったものです。
いくら初代からの名前だとしても、猫美という名前をつけられてなんて可哀想なんだだろうと思いました。まだ女子ならともかく男子につける名前ではない。どこかの妖怪の名前じゃないんだから。実際小学生の頃は揶揄われたようです。
猫美の能力は祖母よりも強く、実際に話さなくてもテレパシーのように考えるだけで猫と会話できるので、その弊害として人との会話が苦手になってしまいました。
これがのちに陽平になかなか本心を伝えられず、陽平がかなり可哀想な目に遭うのです。
陽平は登場時からあからさまに猫美のことが好きだとわかるのですが、人との交流が圧倒的に足りない猫美は情緒が育ってないないせいで、自分も相手も気持ちがわからない。
そのため面と向かって告白されてやっと認識するに至ります。
ただ、高校の時も一度告白して断られていますが、これは陽平が悪い。
典型的な好きな子いじめをしてきたせいで、猫美は嫌われている前提で陽平が自分を構う理由を考えて折り合いをつけています。ただ嫌ってなかったのが意外でした。
自分がやるのはいいけど他人たとえ大人が相手でも許さないマンだったおかげでしょうか。
普通のお話ならここで嫌われて終わりでしたね。
だから、高校で告白しときの温度差がすごいことになってました。
好きな子いじめしてたときの記憶が美化されてて、陽平は照れて告白してるけど、猫美にとって不審にしかないという。
ショックだったと思うけど、自分の過去の行いのせいですね。
とはいえ、これだけ面倒を見て告白して、返事はいつでもいいと言いながら、これだけ引き伸ばされたら流石に可哀想になってきました。
猫美は猫美で自分も陽平が好きだと気づいたのに、ウジウジしてるのにイライラしましたが、いざいたそうとしたときの斜め上の思い切りの良さには笑ってしまいました。
心の中で完結してしまって外に出さないせいで、誤解されすれ違うのには可哀想を通り越してイラッとしたし、頑張っている陽平の方に感情移入してしまいましたが、失うかもと思ってやっと自分の気持ちを素直に言えるようになって2人が恋人同士になった時は長かったねと陽平に肩を叩きたくなったお話でした。
そして猫と人との絆や猫夫婦の一途で深い愛には涙しました。猫夫婦の奇跡のような話はほっこりするやら泣きたくなるやら本当に良かったねと声をかけたくなるお話でした。
初々しい初恋が可愛い2人
人よりちょっとズレてる八重沼奏(受け)は自覚なしの美少年でみんなから遠巻きにされています。
1人でいるのも苦痛ではないけれど、やはり寂しいと思うようになった今日この頃、選択授業でいかにも陽キャなイケメン二宮(攻め)と友人になります。
二宮は奏のことを全て肯定してくれて、何を言っても受け入れてくれます。二宮の隣はとても居心地がいいのです。
二宮の方も、周りの空気を読んでばかりの人間関係に疲れてきていたところだったので、自分を飾らないでいい奏の隣はとても自然なことのように感じます。
「友人」として仲良くなった2人はお互いどんどん惹かれていくのです。
奏と二宮の両視点で書かれているので、お互いの気持ちがよくわかります。
新学期の自己紹介でぬが漬けが趣味だと言った奏の渾名は「ヌカち」。
美少年すぎて人から遠巻きにされているのですが、本人は自分の空気の読めなさなどのせいだと思ってきます。
見た目の美しさから勝手に勘違いされていた奏が自分のせいだと思っているのは母親のせいです。
母親から「空気が読めない」とか「会話が噛み合わない」とか「いいのは見かけだけ」とか言われ続け、周りを不快にさせるくらいなら黙っていようとなってしまい、見た目も相まって孤高の存在のようになってしまうのです。
二宮は自分の見た目の良さを自覚しており、反感を買わないように周りに合わせて話す内容笑うタイミングなど計算しながら皆に囲まれています。最近はそのことに疲れを感じるようになってきています。
思いがけず知り合いになった奏に対してはそんなことを考えなくてもいいことに安らぎを感じるのです。
「友人」といって仲良くしていたことや、男同士だからと言うのもあってなかなか2人とも認められなかったのですが、お互いが同じように少しづつ好きになっていく様が、可愛らしくもどかしくたのしいです。
誤解なんかあってちょっとよそよそしくなったりもするけど、奏が泣きたくなる時にはちゃんと一番にそばにいる二宮が頼もしい。
そして、クラスのみんなも決して奏にいじわるしていたわけではなく、ちょっと誤解してだけで、誤解が解けたからにはこれからの一年楽しく学生生活が送れるんじゃないですかね。よかったよかった
それにしても、顔しか取り柄がないとか他人が言うならわからないでもないけど、母親が言っていいセリフではない。
母親の呪いが奏に寂しい学生生活を送らせててたのでしょう。
確かに反応が遅かったり空気が読めないとか心配になるかもしれないけど、そこは親がそれでいいんだよと言って育てるべきなのに。
二宮が本来親がやらなければならない全肯定をしてくれたからこそ変わることが出来た。
大人になる前に二宮に出会えてよかった。
そして、奏におばあちゃんと言う理解者がいてよかった。
おばあちゃんには長生きしてもらいたいものです。
お互い初めて見た印象が輝いているなんて一目惚れ同士だよね。
こらからも、ゆっくり仲良くしてもらいたいです。
とても読みやすくBL初心者の方にぴったりなお話だと思います。
ハラハラいたりイライラしたりすることはありませんが微笑ましい可愛らしい話としてゆったりとした気持ちで楽しく読めました。
乙女ゲームの攻略者でありラスボス王子 ✖️ バッドエンドしかない主人公
ミシェル(受け)は10歳の誕生日に前世の記憶が蘇り、自分が死ぬ前やっていたバッドエンドしかないゲームの主人公に転生していることに気が付きます。
このゲームはΩの主人公の兄が王子アルベルト(攻め)を庇って死に、両親も嘆き悲しみ死んでしまい、天涯孤独になってしまった主人公がアルベルトに復讐するため攻略対象者をΩのフェロモンを使って籠絡していくというもので、どのルートを通ってもバットエンドになるという酷いゲームでした。
絶対死にたくないミシェルは、1番の前提である「王太子を庇って兄が死ぬ」ということを回避した後、覚えてる限りのフラグを折まくります。ミシェルは生き延びることができるのか。
記憶を取り戻して8年ずっと、折っても折っても生えてくるフラグを折続けたミシェルが本当に気の毒でした。
そもそも1番の原因の兄の死というイベントを回避したのだから、もっとほかの人を頼れば良いのにともどかしい思いでした。
アルベルトとの婚約者をそのまま継続されたことで、いつバッドエンドに移行するのか気も休まらないミシェル。
このまま逃げ切れるかと思ったのに、こんどは裏ルートが解放されて大ピンチに。
前世ので引きこもりになってしまった原因が全く反省せず今世でも邪魔をしてきたのには、ほんとうに驚いた。
こいつだけは許せない。永遠に地獄の業火で焼かれるといいと思う。
前世でも今世でも長らく苦しめられたのが、もう少しなんとかならなかったものかと思いましたが、最後にやっとハッピーエンドになった時は長い闘いに勝利したミシェルに拍手しました。