アラン王国第三王子のクリスは遊学のため、身分を隠して兵学校へ入ることになります。そこで出会った世話係のジークと恋に落ちるのですが…この部分が少し性急すぎるかなと思います。告白までの過程にこだわる人にはおすすめできないです。
でもストーリーの作りこみと絵の綺麗さにはあっぱれです。守られる者と守る者、それぞれの視点から心の奥に抱える弱さや失望が描かれています。一見完璧なジークも孤独を感じていたり、いつでも明るいクリスも必死で自分の居場所にしがみついていたんだと思うと深いです。2人でいっしょにいても埋まらない穴があるというかんじ。
そういう点から見ると恋物語というよりも王子と騎士という立場の話が主体で2人が結ばれても闇がつきまとう…というかまだまだ始まったばかりなのでホッと息つく場所がないですね。
いろんな見方があると思うけど確かにBLじゃなくても十分おもしろい話だと思います。濡れ場もありますが、この関係バレたらどうなっちゃうのと読んでるこっちは別の意味でどきどきです。
1巻で区切りのついた一見と糸くんに替わり2巻は曜明と火弦、大輝と沢斗が中心。
曜明火弦編は曜明視点からの妾だった母のこと、腹違いの今は亡き兄のこと、火弦のことなどが語られ、だいぶ物語の背景が見えてきました。
過去の回想で曜明がお兄さんを大事に思っていたことが伝わってきたし、だからこそ今の優先順位の一番が透子と羽美なんだね。それに嫉妬する火弦のモノローグが切ないんです。はやくこの忠犬ワンコの笑顔が見たいな。
大輝沢斗編は大輝が失くしてしまったという三か月間の回想。ひげのない大輝かっこいい!ケンカしてばかりだけど(沢斗が一方的に怒ってるだけだけど)昔の沢斗は今より素直でほんとツンデレですね。志乃様と大輝のおじいさんのつながりも気になるところ。
糸くんはきっと自分が男の人しか好きになれないとわかったとき誰にも相談することができなくて心細かっただろう。そんなときに初めてのハッテン場で悪い人に出会い、お母さんに最悪の形で知られてしまった。でも何も言わず、糸くんの好物を作ったり、再婚相手の厳しい言葉から糸くんをかばってあげる母親の優しさには唯々涙でした。
ここから落ち込んでばかりいられないと親元を離れて自立することにした糸くんの強い心に感心。
たどり着いた田舎で一見に出会い、色々とエロいことをされちゃうわけだけど、一見は悪い人ではないし「家族になる」という糸くんが一番欲しかった言葉を言ってあげたんだなと思うと祝福してあげたくなりました。
いつかお母さんたちに一見のこと紹介できるといいね。
他のCPも幸せになれるといいな!
ところで志水ゆき先生はラブモからのファンですけど、絵が上手くなりましたね。上から聞こえたらごめんなさい。でも本当に。美麗です。