可愛いものが好きなことに
コンプレックスを持っている戸張くんと、
マイペース自己中で
本心が分かりづらい乾くんのお話です。
私は特に女装萌えがあるというわけではなかったのですが、
線の細い綺麗な絵柄が好きなので
店頭で目にとまり購入しました。
読み終わってまず、
こういうのを待ってた!と思いました。
女装がメインのお話というよりは、
2人の物語が女装をきっかけに進んでいく、
というような印象を受けました。
女装萌え重視の方には少し物足りないのかなとも思いますが、
2人の心の変化にしっかり焦点を当てている素敵な作品だと感じたので、ぜひぜひおすすめしたいです。
※以下ネタバレと個人的な解釈です
女装している戸張くんの写真を本人に見せ、
一緒に出かけないとネットにばらまくかもよと脅したり、
かと思えば自分の元カノに、戸張くんにメイクを教えてくれるよう頼んだりと、
何を考えているか分かりづらい乾くん。
彼が分かりづらい原因は、
マイペースで自己中な性格にもありますが、
1番の理由は「戸張が女装しててもしてなくてもどっちでもいい」と考えているからだと思います。
彼にとって「女装」は
戸張くんに興味を持ったきっかけにすぎず、
女装で出掛けられて嬉しそうな戸張くんも、
知り合いに見つからないかビクビクしている戸張くんも、
普段の暴言多い男の戸張くんも、
全部全部可愛くて好きなんだなと思います。
乾くんがどのシーンでも、結局「戸張」が好きなところにとても萌えを感じました。
そして更に萌えを感じたのが、
当の戸張くんがそれを理解できていないところ。
彼は自分の女装に自信があるようで
実は全然無かったんだというのを、
乾くんの元カノであるりっちゃんの存在によって自覚したようです。
結局どっちの自分にも自信はなくて、
そんな自分に構ってくる乾は、きっと滑稽だと笑ってからかっているだけだと思ってしまいます。
この部分の2人のすれ違いが本当に良くて、
「戸張が好きだから女装とかわりとどうでもいい乾」と
「どっちの自分にも自信がなくて考えすぎてる戸張」の
正反対さにキュンとしました。
この正反対の部分が向かい合うシーン。
戸張くんが、クラスメイトに女装していたところを目撃されてしまいます。
「乾に脅されて女装したんだろ?」と聞かれ、
躊躇いながらも「うん」と言ってしまいますが、
近くで聞いていた乾くんは
「俺が戸張を女装させて連れ回した」
「面白いから」
と戸張くんをかばいます。
ここで戸張くんは、
「面白がってからかわれていただけじゃないのかもしれない」と気づいたんだと思います。
自己愛が強く、傷ついたり笑われたりするのが怖い戸張くんですので、
向き合うには少し時間がかかったようですが、
自分のコンプレックスを気にもしないで一緒にいてくれる乾くんによって、
少しずつ自分に自信を持つことができたみたいです。
エロ度については、
えっちシーンはなく、キスが何度かと
途中服を脱がせようとするシーンがあるくらいです。
精神的にはゆっくりペースの2人でしたので、
この1冊の中ではこれで良かったのではないかと思います。
きっとこれから戸張くんも少しずつ素直になれて、
幸せに過ごしていくカップルだと思いますので、
番外編などでもっと甘めなシーン見てみたい気もしますけどね 笑
あと。
乾くんの元カノのりっちゃんが
本当にいい子で可愛かったです。
私にとって、
何度も読み返してしまう素敵な作品でした。
ムノさんのファンになる1冊でした。
物足りない方もいらっしゃるかもしれませんが、
是非一度手にとってみられることをおすすめします。