この本を購入したのは作者買いです。崎谷さん、大好きなので。
BLやライトノベルでなく、
純文学の中に、主人公と彼に心をかける男との、友情や保護欲が書かれているものがあります。
H描写もないのに、BL以上にエロさを感じたり、心情が胸に染みたりします。
逆にBLやラノベでも、マスメディアで話題にのぼる芥川賞などの、芸術とよばれる作品より、余程素晴らしい作品もあります。
BLは、流行っても異端のジャンルであると思いますが、そのせいか作り手、読み手の距離が近く感じます。
なので、BLの中の珠玉の名作に出会ったときの嬉しさは、本好きさんにはたまらず、ハマルと抜けられません。
この作品は、同人誌に発表されたものの改稿とのこと。
本筋は商業としての縛りがなく、自由に書かれていらっしゃるのでしょう。
暴力描写や近親相姦もあるため、人を選ぶ作品だとは思います。
でも、それを越えお勧めしたい作品でもあります。
作品の主人公は痛いです。入院するほどの怪我をしているのに、それ以上に心が痛いです。
傷ついた動物が警戒心を抱くように。
彼は人を信じることができません。一人で自分の武器を作り、それを信じることしかできないのです。
彼に関わる弁護士も心に傷を持っています。
2に共通するオディプスコンプレックスに近い感情は、怒りをぶつけるべき対象が片や壊れ、片や既に死んでいます。
既に立ち直った弁護士は、傷をおった少年に代償行為のように手を差しのばします。
主人公が自分が壊れそうになりながらも強く、弁護士は自分の気持ちに混乱しながらも、それを上回る強さで彼を包みます。
脇のマサルが本当にいい奴で、可愛い彼女作って明るい家庭を持ってもらいたいなぁー。
主軸の3人が、それぞろのやり方で傷を持ちながらも心が強く、腐ってないのも良かったです。
日常から、かけ離れた話しなのに、自分が持つ、どうにもできない傷や、寄り掛かることができる人がいる幸せに共感できました。
もし今がどん底でも、いつか差し延べてくれる手が見つかるか、乗り越える強さを持てる気がします。
私の読後感は、とてもよかったです。
誰もBLにそんなこと望んでいないと思いますが、個人的に、H無しでも(本音は有りで)もっと深く掘り下げられた作品として、読みたくなってしまいました。
コミック派です。
前巻の鬼畜な終わり方からずっとヤキモキしていました。
9巻は、8の続きから。是の中で一番好きなCP、彰伊×阿沙利メインの巻。
ちなみに次席は守夜×隆成です。
1巻を除き、8巻まで和記の命じるまま、出会い、惹かれ会う紙様と三刀家の血筋の人とのお話し。
「紙様」と言魂使いは惹かれ会う運命、奇跡を信じる熱を失った、人形師和記。
何もしなくても、起きるときは起きるのに、切実に願っても、信じて、死に物狂いで行動しても、現実は奇跡なんて起きない。
9巻は、それでもあきらめない彰伊の話し。
ありったけの思いが、無駄になって更に気が沈むかも知れない行動が、起こした奇跡。
阿沙利の言葉通り、いい男になったね。
全てあきらめ厭世的な、和記は知らない、気付かない振りをしていたのかもしれない奇跡は、今までのストーリーの中にも実はある。
でも今回の奇跡は、目を反らす訳にはいかない。今度は和記の番。
今回、奇跡の瞬間、第一声が、罵倒なのが阿沙利らしくて大好き!
これからも、彰伊を振り回しながら悪口雑言、神出鬼没、エロくて凶暴な阿沙利さんでいてほしいです。