「小箱」という言葉がすごくぴったりな短編集です。
思い出の小箱といおうか、物語の小箱といおうか……。
一作を除いてファンタジーです。その一作もあまりリアルさのない学園もの。あとがきを読んでも、本当にファンタジーがお好きな先生なんだなぁと思いました。
表題作は昔話ふうな語りでまとめられています。小学生時代は本といえばほとんどファンタジーしか読まず、世界観のぬるいファンタジーを見ると萎えがちな私なのですが、そういう世界観の隙はないです(一コマだけ作画が若干俗っぽい(?)と感じるところがあるのですが、若干です)。模様のついた角砂糖、おめかけさんたちの無国籍というか多国籍な衣装、ひとつひとつが綺麗です。
受はほとんど小さく細く可愛らしいです。一番すきな受は蝶か蛾かの眷族にされた子です。またそのお話で蝶か蛾かのお姉さんたちが受の感覚を味わっているシーンもおもしろかった。なぜ女の子は恋の話が好きなんでしょうか。
お話の進行も巧みなのでファンタジー好き嫌いかかわらずおすすめしたい作品です。
初めて雲田はるこ先生に触れた「窓辺の君」に次いで読んだと思います。
みみクンシリーズが非常によかったです。
BLを読むにあたっては性別について考えているときとそうでないときがありますが、みみクンシリーズでは考えながら読めておもしろかったです。とくに好きなのがみみクンの「あたしの性別は、いつだってあたしの邪魔をする。」というモノローグ。
とびきり可愛くて明るいみみクンが、実は生まれたときから肉体と戦ってきていて、また大人になって気持ちと戦い……という単純なかわいさ・かっこよさではあるのですが、それを一切湿っぽくも・ひけらかしでもなく語るバランス感覚にどきどきしました。基調は恋の話、みみクンのかっこよさと性別の話のスパイス。「海辺のカフカ」の大島さんエピソードを読んだ時の気持ちに近い気がします。
その後非BLで賞を取られましたが納得の技術を感じました。
表題作のモネちゃんも大好きです。
強迫症レベルの潔癖症の社長秘書と心療内科のカウンセラーのお話。出会いから、カウンセリングをしてもらうようになって、でもそれも終わっちゃうのか、というところで終わり。
宝井先生は絵柄がすごく好きです。透明感があって、社長秘書の城谷の異様に清潔な部屋の清潔さもとてもリアル。その分冷たいので、お話に人に感情移入したいとき向けではないと思いました。
でもその冷たさが美しさの理由なんだと思います。「セブンデイズ」を読む前はお話は読んだことがなく、ファンアートのイラストでためいきをもらしていたものです。
城谷の過去を知らないことには終われないので、2巻も期待しています。