作品のタイトル通り竜や妖精など"空想上の生物"たちが存在する、オーストラリアの都市ブリスベンが舞台の現代ファンタジーです。
ワーキングホリデーでオーストラリアを訪れた主人公の礼一が、様々な出会いを重ね自分の人生を取り戻して行く様は読んでいて思わず感動しました。作品全体のまるで翻訳小説のような雰囲気も実に魅力的です。
これだけ聞くとまるで一般小説のようですが、この作品はそれだけではありません。有り難いことにしっかりとBL描写も盛り沢山です(成人向け描写もあります)。恋愛感情を含め多くの思いをまっすぐに向け合うキャラクター達の様子は、オタクとして萌えつつも、つい羨ましく感じる程でした。
作者の方は実際にオーストラリアで過ごされた事があるそうで、恐らくそこで忘れ難い出会いや経験、感銘を受けたであろうことが作品にも遺憾無く発揮されています。作中にアメージンググレイスという言葉が出てきますが、きっと作者の方にとってオーストラリアでの日々がそう呼べるものだったのでしょう。
本作はそんな作者の方の実感が非常に籠もった、血の通ったBL作品だと思います。
世の中には "それをBLでする必要があるのか?" と思われる方がいるかもしれません。ですが私はこんなロマンスもファンタジーも全てがソウルフルなBL作品にずっと出会いたかったんです。
BLはフィクションですが、同時に物語は人生でもあるので(笑)。
自分のようにソウルフルなBLを求めている方にはぜひ読んでいただきたい一冊です!