人の幸せ、不幸せは他人には到底分かりえない。
どんな傷を抱えて、今を笑っているのか。
どんな希望を夢見て、今日まで生きて来たのか。
でも、そんな他人同士が何故か惹き合う瞬間があるのです。
陸君も巣我ちゃんも、出会うべくして出会った
そんな気がします。
目に見える傷や怪我だけが痛みじゃない。
見えないものの中にこそ、痛みがあります。
この作品は痛いです。
すごくすごく痛い。
それでも報われる喜びと安心感と希望がここにはあります。
だからこそ愛しく、優しい気持ちになれるのです。
ただこの痛みは、恐らく、傷のない人には分かりえないもので、
そんな人には正直、どうにも刺激が足りないのかもしれません。
でもそれは幸せな証拠です。
梶本先生の作品は、今を生きる、同じ何かを抱える人たちの希望です。
きっと寄り添ってくれます。
だからもっともっと色んな人にこの作品に出会ってほしいな…
この作品に描かれている愛し方は、
まず恐らく万人が理解できるものでなく、
嫌悪する人も、拒否感が先に立つ人も、
もしくはこの感覚自体、理解が出来ない人も居るかと思います。
身体は交われずとも、視線を交わし、言葉を交わし、心を通わせる。
ただ、お互いその身には欲望が存在し、
熱くなる身体と滾る欲望の向かう先、昇華の仕方が万人とは異なるという事。
そんな二人の情念の行きつく先は一体どこなのか…
卓越した画力で生み出される精巧で耽美な愛の世界。
肉体の交わりだけがSEXではない。
服を着たまま、言葉を交わしただけの二人が、
何故こうも扇情的でエロティックなのか…
本仁先生、渾身の作品です。
グラン・ギニョール
それは人の業と情念が渦巻く醜悪で美しい、怪しくも甘美な世界。