嬉しくない特性を持つ平凡男子が王子様系イケメン男子に見染められ、特別扱いされて恋に落ちるという少女漫画のようなBLでした。
主人公の一颯は本好きで人付き合いが苦手だけど、頑張って周りに合わせて陽キャグループにいるような、どこにでもいる高校生です。何故か見ず知らずの年上の男性にモテるという特性があります。コンビニのバイト中、客のおっさんに援交っぽいことを持ちかけられたり、本屋で大学生風の男に声をかけられ、腰を触られそうになったりします。まずその設定に、写真撮られてSNSで拡散されたら社会的に死ぬのに、そんなことする人いる?とリアリティのなさを感じました。か弱い少年ならまだわかるのですが、主人公は身長170㎝ある高校生男子なので。
それを知った弟の友達でバイト先も一緒の瀬尾が、偽装カップルになることを持ちかけます。瀬尾は瀬尾で女の子にモテすぎて困っていたため、そう提案したようです。瀬尾は「どうでもいい人にゲイと思われても構わない」という強心臓の持ち主ですが、強心臓のわりに、女の子に好意を向けられることは我慢できなかったようです。「俺、絶対、そういう意味で先輩のこと好きにならないから」と言って偽装カップルになりますが、舌の根も乾かないうちにわかりやすく主人公に好意を向けてくるので、切なさを演出するための作者の意図が透けて見えて、その発言を思い出して思い悩む主人公に感情移入できませんでした。
周りを固めるのが、主人公の不幸をネタにして陰で笑っている友人だったり、BLを押し付けてくるクラスの女子だったり、子供の頃から年上男性に好意を向けられ嫌な思いをしてきた兄に、「それどうにかなんないの?俺もいいかげん恥ずかしいんだけど」と苦情を言う弟だったり、「先輩が無理やり付き合わせてるんだったらやめてほしいです」と思い込みで正義感ふりかざす元カノだったりと、とにかく不快に思うキャラばかりなので、こんな嫌な人間しか周りにいなかったら男同士でも恋に落ちるよな、と納得はしましたが、読んでいて楽しい気分にはなりませんでした。
その元カノ(実際は偽装彼女)の余計な一言がきっかけで偽装カップルをやめようと主人公が言い出し、一旦はカップルを解消しますが、その後、瀬尾が主人公に告白し、本物のカップルになります。瀬尾が主人公を好きになった理由は、元カノのときと違って偽装彼氏になっても彼氏面をせず、素で話ができるから好きになったようです。
少女漫画や平凡受けは好きですが、こちらは主人公の特性や攻めの言動、周りのキャラなど、全てが主人公の恋が成立するために用意されたお膳立てに思えて、ストーリーに面白みを感じませんでした。
主人公にも、わかりやすく主人公だけ特別扱いする攻めにも、人として魅力を感じるようなエピソードが無かったため、キャラ萌えも薄かったです。主役の二人は周囲の人間と違って苦手に思う部分はなかったので、評価は中立にしました。
殺し屋の暁が殺しに入った料理屋でスカウトされて住み込みで働くことになった話の続編。1巻でも匂わせてありましたが、店長の葵と暁は過去に出会っていました。暁の殺し屋としての試験をしたのが葵で、以降、陰ながら見守っていたようです。葵への殺しの依頼も、怪我の後遺症で記憶が一晩でなくなることを知り、インパクトを与えるために暁の実家に自分を殺す依頼をしていたようです。
葵は暁の初恋の相手だから、葵の作った料理を食べると記憶をなくさずに済むと結論づけてありました。
葵の料理を食べることで記憶が持続することになり、暁は葵への恋心を抱くことができて、二人は晴れて恋人同士になりました。
ただ、エチシーンはなく、結局のところ最後まで攻め受けがはっきりしなかったので、そこだけでもはっきりさせてほしかったです。
1巻に続きほのぼのとしたお話でタイトルから期待した仄暗さや悲壮感はなかったので、肩透かしを食らった気になりました。個人的には殺し屋という設定じゃないほうがお話の雰囲気に合っていて楽しめた気がします。
タイトルは不穏ですが、表紙のイラスト同様、ふわっとしたお話でした。殺し屋の暁(おそらくこちらが攻め?1巻のみでは判定不能)が実家からの命令で殺しに入った料理屋の店長になんだかんだ丸め込まれて、睡眠薬入りのカレーを食べて帰ることになります。この暁くんは高校生以降、任務中の怪我が原因で一晩寝ると前の日の記憶を失くしてしまう病気にかかっているようですが、何故かカレーを食べたことを覚えていました。
依頼、何度殺しに入っても、憎めないところのある店長にのらりくらりと躱され、結局は店長の家に住み込んで料理屋で働くことになります。店長が裏家業の親玉みたいな人で二人とも過去に出会っているっぽかったので、過去の出来事が記憶を失くすこととも関係しているのかもです。
今のところあまりBL味は感じませんが、二人の因縁が気になるので続きも読んでみようと思います。
攻めはゲイで受けは無自覚ゲイで大学の先輩後輩。俳優としてBLドラマで再会し、役作りの延長で体の関係になり絆されていく感じのお話でした。体の関係については受けの白崎のほうが積極的です。
攻めの羽山は学生の頃に白崎に「羽山さん演技仕事しないんですか?ありえねえ。どうかしてますね」と言われたことがあり、白崎のことが忘れられない存在になったようです。強気な性格ってことなんでしょうけど、先輩に面と向かってそんなことを言う後輩の方がありえないと思ったし、「モデルの仕事は見た目がいいだけのやつがやればいいだろ」という台詞にもモデルを下に見ている感じで嫌だなと思ったので、受けにも、そんな理由で受けのことを好きになった攻めにも、キャラ萌えは薄かったです。
続きもののようですが、1巻だけでハピエンを迎えて綺麗にまとまっていたので、読後感はよかったです。
ページ数はわかりませんが、小冊子と合わせても通常のコミックより薄くて、最初はその薄さに驚きました。
本編は高野政宗の場合、小野寺律の場合、雪名皇の場合の雑誌掲載分で、書き下ろしが木佐翔太の場合4Pでした。
…そう。書き下ろしが雪木佐だったのですよ。
決して雪木佐が嫌いなわけではないですが、雑誌でも追いかけているからコミックは書き下ろしを一番楽しみにしていて、記念の20巻だし、ファンが待ちに待った0日回だし、と勝手に期待が爆上がりしていたので、書き下ろしを見て、ちょっと泣いてしまいました。
内容についても、「うーん」と思ってしまったところはありました。高校の頃に少しだけ付き合った二人が再会し、この一年、一から初恋をやり直してきたわけです。(現実世界では連載開始から15年以上経過していますが、お話の中ではまだ一年w)
許婚者が出てきたり、留学先の友人が出てきたり、大学時代に関係を持ったことのある親友が邪魔してきたり、転校先の香川に行ったりと、離れていた時間を埋めるように、相手について色々知ってきたわけです。その上で、お互いに、高校時代ではなく今の相手を好きになって、既に体の関係にもなったので、あとは律ちゃんが告白するかどうか、という段階に来ていたのですが…。
高野さんは既に覚悟を決めていて、律ちゃんが付き合うことをためらう理由は、「ハッピーエンドのその先に確証が持てないから」だと思っていました。
そして今巻では、来栖さんという高野さんのことを好きな小説編集部の女子が出てきます。このままだと手遅れになってしまうと思った律ちゃんが高野さんに「たかのさんを世界で一番好きなのはおれです」と告白し、ようやく二人は両思いになれました。
横澤さんのときと違ってちゃんと告白できたことは、この一年の付き合いがあったからだし、高野さんが律ちゃんが準備するのを待てるようになっているのにも成長を感じましたが(これまでを思い出してちょっと笑ったけどw)、小野寺家の跡取りの問題は解決していないので、律ちゃんが不安視していたハッピーエンドのその先についてはまだ納得の得られる答えを見いだせていないのではないかと思います。
好きだからとりあえず付き合ってみる、ができないから、これまでぐるぐる悩んでいたわけで、そんな律ちゃんに共感していたので、当て馬に煽られて焦って告白したことに、それができるんなら、横澤さんや灰谷さんの時点で告白してもよかったんじゃ、と思ってしまい、感動でスタンディングオベーションとはなりませんでした。
でも、女子から告白されているのを見て、焦って告白する、というありがちなシーンでも、これほどエモーショナルに描けるのは、さすが春菊先生だと思います。
ハッピーエンドのその先については、これから二人で一緒に解決していくことを信じて、これからも追いかけ続けます。