「イエスかノーか半分か」の続編。
前回が計と潮の「なれそめ」と「嫉妬」がメインテーマなら、今回のテーマは「仕事」。
好きなこと・やりたいことを仕事にしている人と、仕事だからやっているという人。
潮は前者で計は後者。
そんな風に枠決めをしてしまって、苦しみ始める計。
発端は裏番組のMCに抜擢される木崎了。
計と同じ年に旭テレビのアナウンサー試験を受けて、落ちてしまったという経歴の持ち主。
アナウンス力もあり、MCとしても申し分ない活躍。
似た雰囲気で同じジャンルの人間である木崎を、猛烈に意識してしまいます。
「好きなことを頑張ってきた人間の咬ませ犬でしかない」
そう思い込み、絶対的な「やりたいこと」がないことへの劣等感で、計は調子を崩していきます。
視聴率は落ち、木崎の番組にも抜かれて、「やりたいこと」を仕事にしている潮に相談もできず、取材で木崎が潮の家にいることに、唯一の居場所を取られたような絶望感を感じ、正論で諭す潮を突っぱねて、どんどん負のループに落ちていくのです。
そんな状態で、慣れない現場の仕事に回され、精神的にも体力的にも疲弊していく。
それでも何も言わずに受け入れて、一切手を抜かずに仕事をこなしていく計の姿は痛々しくて…。
そんな計に、助け舟を出す人の多いこと!
後輩の育成や他人に無関心な麻生がランチに誘ったり。
木崎に気を取られていることに気づき「声が聞こえない」ときっちりと指摘する設楽P。
木崎との会話に絶妙なタイミングで割り込んだり、潮へナイスアシストな連絡をする竜起。
現場での計の仕事ぶりを認めて、体を気遣う錦戸カメラマン。(職人気質すぎて、現場の疲弊の原因ですが(笑))
休みをもらって、「ごめんな」と先に謝ってくれた器の大きな潮に弱音を吐くことで、ゆっくりと浮上していくのですが、「イエスかノーか」で潮が言っていた「ものを創る悔しさは、また別のものを創ることでしか晴らせない」という言葉が、この巻でも生かされていました。
「ものを創ること」が「仕事」に変換されて、それを実感し、救われていきます。
今作でも、計の毒舌は健在で、その炸裂っぷりは前作を上回るほど!
計じゃなくて、一穂さんの心の声じゃない?と思うくらい、ツボにはまるツッコミ。
しゃべるゴリラやコナン君ネタ、個人的には「どこの部族?」がドンピシャでした!
計が落ちて精神的にしんどい状態が続くのに、
読んでいてそれほどどんよりとこないところは、さすがの一言。
計の毒舌も、きちんと努力をし、追い詰められても弱音を吐かず頑張る姿があるので、全く気になりません。
つらくても悲劇のヒロイン的な感じは全くなく、どこまでもストイックな計は魅力たっぷりでした。
最後に出てくる「きれいな国江田さん」は、ちょっとしたサービスでしょうか。
きちんとした伏線であった壁ドンの、セリフのバリエーションは意味不明さが計っぽかった!
本番の壁ドンは2冊分の2人を表していて、ジーンときましたよ。
3回ほど出てくる、エッチシーンも愛があってよかったです。
最後は、番組も計もきちんと意趣返し的なまとまり方をして、スッキリ。
思っていたよりも全くイヤな奴ではなかった木崎に対して、
「俺に張り合おうなんて、3万年早いんだよ」
とぴしゃり!
仕留めましたよ、「エア・ケイ」で(笑)
普段はダメダメで変人ぽいのに何かやらせたら高スペックという設定に弱い私。
今回のヤコ先生は、まさしくその路線でした。
前作の「恋愛前夜」では幼馴染二人の間に入って引っかき回す、残念なオネエのアテ馬だったヤコ先生。最後の引き際で大人な面を一瞬見せたけど、ウザさ100%で好きにはなれなかったので、今作もあのテンションで乙女なヤコ先生にカッコいい包容力のある王子様が現れる感じの話だったら、ちょっとな~と思いつつ、手に取ってみたのです、が!
そこには予想を完全に超えた「男」なヤコ先生がいました!
表向きは相変わらずの残念オネエなのですが、実は仕事には妥協せず、落ち込んだ時も人に頼らず自分でリセットする方法を知っていて、甘えるヤツにははっきり物を言い、何だかんだ言いながら面倒見がよくて、情に厚い。包容力があるのはヤコ先生だった!!という感じです。
相手の貢藤も、見た目はヤクザの若頭コース一直線なのに、中身は純真で真面目。恋愛にオクテでウブな反応をするので、ヤコ先生の隠れた男心とドS心を刺激して、ヤコ先生、どんどん男全開になっていきます。
と言っても柔らかい雰囲気はそのまま。そこが凪良先生のうまいところ。
前作でナツメが「トキオが付き合った理由が分かる」と言っていたのが納得できるのです。
貢藤にひどい事を言う初恋の男をスマートにやりこめ、その後のフォローも思いやりがあり、ホントにヤコ先生、男前!
会話もテンポよく進み、懐かしい小ネタも挟みつつ(若い人には分からないかも…)、ライトな感じに読み進められます。
貢藤がヤコ先生を「オネエの皮をかぶったセクハラ親爺」と思っているのに大爆笑です。
トキオに恋愛相談したり、つぐみとのコラボの話が出てきたりと、既刊ファンに嬉しいエピソードもあります。
そして最後の最後のHシーンの微Sなヤコ先生の攻めっぷりときたら!!
前作と今回の表紙からは想像できないヤコ先生がいて、楽しめました。
待ちに待った2巻。とにかく表紙から規格外。
今までたくさんコミックを読んできたけど、こんな夜の遠景の表紙は見た記憶がない!
主人公たちが遠目でよく見ないと分からないなんて…。
そんな2巻はきな臭いヤクザ間の抗争のはじまりを予感させる出来事からはじまります。
七原ったら竜崎組と揉めちゃって、やっぱり我慢できなかったのね~。しかたないなぁ…と思っていたら、
どうやらもっと根が深そうな問題へと発展しそうな気配…。
七原の治療中、影山との会話で矢代の気持ちに感付く百目鬼は、
ふだんボーっとしてそうなのに、すごく鋭い!
影山への気持ちを察したのがきっかけだったのか、少しずつ尊敬以上の気持ちが芽生え、
自身ずっと拒絶し続けていた性的能力に復活のきざしが!
百目鬼の初体験を聞きながら、自分でシちゃう矢代に、思わず勃ちそうになっちゃったり、
エロ映画の女優さんが矢代に見えてきちゃったり…。
でももし勃っちゃったら、頭のそばにはいられない!と思って我慢したり、拒絶したり…。
1巻では人形のような百目鬼がだんだんと表情が出て、葛藤をはじめ、
人間らしさが出て来た気がする。
そして事件。
彼の忠誠の証は「何もそこまで…」と思ってしまったけれど…。
でもヤクザの世界なんだもんね。
その百目鬼には、普段飄々として決して本心を見せない矢代が、チラチラと素を見せ、
それがなんとも可愛い。
久々登場の久我にヤキモチ焼いてるっぽいところもニヤニヤしてしまいました。
矢代が百目鬼に言う色んな「バカ」バージョンがすごく好き!
2巻では矢代を知る手がかりが、あちらこちらにばらまかれていました。
影山から見た矢代。三角の若い頃の回想から入る「黄金時代」の矢代。
ヤクザの世界に入るきっかけが影山だった事。
「ちゅーちょすんな」と紙幣を握るシーンは、影山に関してだけは熱い気持ちを
さらけ出してしまう矢代に、胸がキリキリと痛みました。
矢代がドМで淫乱で変態なのは、影山も言っている通り自己防衛なんだろうな。
小さい頃の性的虐待から自分を守るため、正当化するため、
義父が言う「悪い事をしている」ことへの自傷行為でもあるように思えて。
過去の矢代。竜崎組の下っ端に輪姦されてる時も、他の組員さん達とヤってる時も
まったく楽しそうでも嬉しそうでもない。
ホモではない、男が好きなわけではない、
男に性欲とともに好意を向けられると吐き気がする。
それなのに影山が好きであり、その事が孤独であり、絶望でもある。
ページ数たったの3ページの矢代が振り返る過去。
「もう十分知った」と言う言葉が重く圧し掛かってきました。
色んな場面での彼の動向やモノローグで、一筋縄ではいかない、
そんな矢代がより鮮明に浮き彫りになっていました。
一途な矢代。恋愛を拒絶し、諦めきってる矢代。
影山でさえ自ら遠ざけた矢代が百目鬼の好意を知ったら、
どうなる?どうする?
考えてみたら竜崎も三角も七原も、もちろん百目鬼もみんな矢代矢代。
彼が大好きで仕方がない様子が可愛いです。
あの天羽さんまでですから(笑)
若き日の竜崎の「矢代大好き」な感じが可愛く、1巻での印象が変わりました。
後、三角さんに話しかけられた時に矢代が「変態」で返事をするところが、
かなりツボです。
まだまだピースがバラバラでこの先の展開が予想できません。
百目鬼がどうからんで、今後どういう風に着地するのか。本当に目が離せません。
ああ、3巻が待ち遠しい…。