ガチ兄弟3作目にして、
BLお家芸の記憶喪失かい…と、
突っ込みながら読みました。
記憶喪失、獣で読んだばっかり、ていうかほんと多いよな、
突き詰めて行ってゼロに戻すそのこころは?
と思ってたんだけど、
これが意外にも良かった。
何もかも忘れてしまった弟のために、
正しい道をやり直そうとする兄なんだけど、
弟を愛してると自覚してたから、
なんで僕をこんなにしたくせに全部忘れた?
その遣る瀬無さに心がズキズキします。
ほんとくるしい。
弟は兄に思うところもあるんだけど、
逆に余計まともになろうとして、それが兄を苦しめる。
哀しみがやり場のない怒りに変わって、
ついに耐え切れずに爆発するとこも、
離れ離れになって、
また再会してぶつかり合うのも、
なんか、ああそうだね、納得できるなって思い。
この無茶な設定でこんなに人の心に訴えかけるなんて、
丸木先生はすごい人だ。
なんとなく、
弟は記憶喪失ていうか人格障害が起きたのではないかなと思った、そういう生徒いたしね。
何のフラグなのかはわかりませぬが。
いやーぶっ飛びます。
これBLじゃないだろー極道小説だろーってくらいの容赦のなさ、えげつなさ、ていうか、痛いから!!色んな意味で!!
全編男臭い内容とコッテコテの関西弁にしびれる…自分を「わい」ていうBL初めて見たよ…間違いなく男が恐れ、そして惚れる九堂のアニキにメロメロです。土下座したくなる、本物の鬼畜。鬼。間違いない。
廉も勝気で負けてないんだけど、しかしほんとに九堂の相手は命がけって感じ。
これを読んだらもう他のヤクザものなんか鼻で笑っちゃうくらい甘いね…これぞ極道。きれいごとなんか一切ないあまりにもリアルな世界。強烈すぎる。
この話、続編が二つあるんでそちらも続けて読むといいです。が、さらにエスカレートしています。心のご準備を…
というか、きちんとしている?というか、
もはや純文学、
くらいのきちんと組まれたプロットを感じました。
二人の気持ちの時間軸にずれがあって、
(憎しみから好意にかわるまでの)
その時間差、温度差にリアリティーがある。
北川目線で読むので、前半は2回絶望を味わい、
やるせない気分になります。
後半はようやくじわじわ幸せになるんですが、
ほんと牛歩のごとく、いこかもどろかみたいな感じで、
ちょっと浮上しては落とされて、みたいな…
氏家の愛情表現が乏しいというか、
北川への遠慮がすごく、自己評価が低いので、
決して好意がないわけではないのに、
なかなかもどかしいです。
あと、この作者の方、他の作品もですが、
なかなか昭和枯れすすき的なわびしい雰囲気の描写が上手いので、それがさらに寒々しく感じさせてくれます。
だからこそあたためあう二人みたいな、
お互いがお互いしかいない、みたいな。
重いは重いですが、
なんだか読み返したくなります。
がんばって坂を登れば、
ある時点から下りで楽になるから、
それを味わいたい、変な中毒性がある。
時間長くなりますけどw