冴木が同居を提案した時点で、実は既に両想いだった2人。なんだけれども、それぞれモヤモヤと胸に抱いている感情がなんなのか確定しないまま、大学生活は続いていく。はっきりしているのは、2人だけの世界に誰も入ってきてほしくないということ。こう書くととても閉鎖的な関係のように感じるけれど、2人の世界はもっと密やかで優しく薄い膜に覆われた殻の中にいるようなイメージ。ちょうど単行本の中表紙になっているイラストのように。その膜にある日突然、部外者(胡散臭い准教授 笑)がヒビを入れてしまう。近づいたようで、離れてしまいそうになる2人の距離。「恋」だと確信するまでの2人の気持ちの遷移がとても細やかに描かれているので、ついつい感情移入してしまう。恋が成就した後は、表紙に描かれている青空のような2人が並んで走る晴れやかなラスト。名作としか言いようがない、つまり名作です。