Xで宣伝されていて、絵柄が可愛く綺麗、雰囲気も暗く、好みの作品だと思って購入しました。テンポも良く、読みやすくて面白かったです。
結論から言うと、闇系BLのように言及されているところもありますが、しっかりと救いがあり、とにかく辛い展開を好む人には合わないかもしれません。
上巻に関しては期待通り、ただひたすらに暗く、耽美な雰囲気が続き、上巻に関してだけいうと、神作品でした。
少しひっかかりがあったのは下巻で、結末としてはハッピーエンドなのですが、そこに至るまでの心理的な描写が不足していると思いました。ただ2巻で完結させるとしたらしょうがない部分もあるのだろうと思ったのですが、長くてもいいのでそこが丁寧に描かれているところも見てみたかったなと思いました。
以下引っかかった箇所の具体的な描写です。
両は嘘をついて幸太郎に優しさに甘えますが、結局嘘がバレて、一旦幸太郎は自ら離れていきます。そういった裏切りをされているにも関わらず、年月だけがたって、大人になったらそのことが流されているだけのように感じて、幸太郎の中でどう言う変化があってまた会いたいと思ったのかが、少し描写不足に感じました。
表紙からもわかる通り、しちみ先生の絵は非常に美しいです。その美しさがビッグバンぐらいの爆発力を放つのが本作品の描き下ろしです。
できるだけネタバレのない範囲で説明すると本作品の雰囲気は暗めです。こちらの気が滅入るような描写ももちろんあり、この暗さを浄化していくのか、それともされることはないのか、ハラハラしながら読んでいましたが、最後の描き下ろしのエピソードがその爆発力でもって全てを吹き飛ばしてくれました。
他の方でも言及されている通り、しちみ先生の中ではマイルド寄りでかつ話の内容もミステリー系で面白いため、お勧めしやすいなと思います。200ページと一つの物語を終わらせるには短いページ制限の中でとても綺麗な終わり方をしているので、読後感がすごくいい作品だと思いました。