今まで読んだBL小説でここまで右往左往振り回されるのは初めてでした。スポットが一つに当たる作品ではないので、
どうかあらすじも読まずに飛び込んで貰った方が楽しめるのではないかと思いました。
一体誰が誰と結ばれるの?と。
ここからネタバレで。
不憫な宮くんにぐっと感情が動かされる上巻でした。
そんな宮くんが幸せになるのは心から喜ばしいのですが、個人的に宮くんと高砂さんの恋愛プロセスよりも高砂さんと鼎さんのプロセスの方が重厚で、長年想いあってすれ違う二人が通じ合えるその舞台が整ったとあっては・・・と思ってしまいました。
宮くん、鼎さんがそれぞれ良くも悪くも障害になってしまったところがこの作品でどちらに傾いても気持ち良くなれない部分でした。まぁそれがリアルなんじゃないだろうか!
相手の幸せを思って身を引く愛に共感出来たのですが、本作で高砂さんが他者を思って身を引けてしまうくらいの愛ではというニュアンスの対比に衝撃を感じました。なるほどな!
下巻では国生くんの真っ直ぐな健気さがわたしの中でピークでした。国生くんは脅迫と体から始まった鼎さんとの関係をこれからどう紡ぐ中々ドラマがありそうで期待大です!
思うところは色々ありましたが、複雑に絡まり合い、錯綜する4人+万座さんの物語は文芸作品として素晴らしい作品でした。
題材が顔も見えないスーツアクターへの恋ですが。
顔という第一印象を抜いてどのように恋に落ちていくかがこの題材のポイントだと思います。
剛くんが不良キャラで恋のお相手が正義の味方という逆ベクトルが織りなす、恋の障壁はすごく良く描かれていてキュンキュンさせられました。
折上くんという揺さぶるキャラクターも定番ですがいい使い方をしているなぁと思いました。
ただ、惜しいなと思ったのは、顔バレまでを丁寧に描きすぎてページオーバーといった感じが否めないところです。
というのは、本編ではプラトニックに終了しているにもかかわらず、描き下ろしでサラリと肉体関係が見えてしまったところに要因があると思います。
読者としては剛くんからのベクトルが強い本編終了を見て、完全なるハッピーエンドは連想できなかったので続編では、wから剛くんへの気持ちの変化がえがかれることに期待が大きいところに、描き下ろしのwの気持ち置き去りのままの肉体関係暴露は置いてけぼり感が強く感じられました。
しかし、描き下ろしで一コマ、二コマ描かれた、ムネヤマヨシミ先生の美しいエロ描写に期待が奮い起って止まりませんので、2人の気持ちの動きから肉体関係までのストーリーを是非ともゆっくりと描いていただきたいと思っています。