カルト教団が題材ということに興味を惹かれ作品を手に取りましたが、教団の描写に引っ掛かりを感じることが多く素直に作品に入り込めませんでした。
例えば神聖化されている燈主様(教祖)の永真がなぜ普通に高校に通えているのか、永真が肉食を禁じられているのに燈母様として崇められる彼の母親が信者の前でも普通にステーキを食べていることに教団内でどう整合性をつけているのか、燈主様に畏敬の念を抱いている春一の母が永真をファミレスなんて庶民的な場に誘えるものなのか…等、そういった疑問が教団の得体の知れない不気味さに繋がっているわけでも無くただただ疑問にしか感じられませんでした。
カルト教団が題材ということでサイコホラー的な内容を期待していると拍子抜けするかもしれません。
私のように教団の細かな描写が気にならなければ、人間ドラマとして大いに楽しめると思います。
ただ結末も、この瞬間の当人たちが幸せならそれで良しという意味ではハッピーエンドなのでしょうが、解体後の教団の後始末や信者たちの行く末を考えると一抹の不安が感じられ、単純に祝福して良いのか分からず何とも言えない読後感でした。