タイトルは本作から引用しました。
今作では主人公であるクロとルカだけでなく、1巻から登場していたノアとウェレの話が沢山描かれています。何故かαとΩが存在しているのか、ノアは何を目指していたのか。1巻から根幹にある世界観についての一つ一つが丁寧に語られていました。
1巻と2巻を読んで、消化しきれなかった人こそ3巻を読んだ方が良いのかなと思います。
村に戻った後の人間の対応に多少ご都合っぽさを感じましたが、本作に則って考えると豊かになったからこそ神様達にも優しくできて、何よりもクロ達が寄り添おうとしたから呼応してくれたのかなと。
全体を通して、恋人や番のような二人だけの横の繋がりではなく、親子や種族のような縦にも横にも大きくて強い繋がりを感じるお話でした。当然ですが、基本的にBL漫画は恋愛模様をメインに描かれます。そんな中で突然変異オメガバースとしてありとあらゆる種の、命と絆が描かれた本作は凄く鮮烈で正しく大作だと感じます。BLの枠に囚われず、神話のような話が創られていました。
個人的には意識されているのかは不明ですが作者様の細かく描きすぎない所がとても好きです。あくまでもキャラに語らせる形を取られているように見え、それがよりこの作品を活き活きとさせているように感じました。BL漫画を、恋愛模様を読んだと言うよりも、二人の、生命の歩みを観たようです。
具体的な描写の話で言うと、オメガバースとはいえ妊娠出産についてかなり踏み込まれている印象でした。他の方も書いていますが、多くの作品は子供が出来た描写はあれど、時間を飛ばし家族が並んでいる描写をすることで出産を意味しています。しかし本作では妊娠しているルカの話や、出産時の描写までかなり詳細に描かれていました。(なんなら2巻と3巻はルカが妊娠しているからこそ描かれた内容でしたしね。)ここまで細かく描かれている作品はそうありませんから、凄く新鮮で面白かったです。妊娠出産というディープな話ではありますが、物語が壮大だからかそこまで辛気臭くならずにまとめられていました。なので苦しそうなのが苦手な方でも読んでみて欲しいと思います。
長々と書きましたが、本当に鮮烈な一作だと感じました。BL初心者さんも、玄人さんも、ぜひ読んで頂きたい作品です。
美しい彼、待望の新刊。
番外短編集の方で続編の話をしていたこともあり、期待していた反面もう出ないのでは……と思っていたので新刊は本当に嬉しい限りです。
形式的には美しい彼4ですが、番外編での内容がかなり出てくるためそちらは必読ですね♪
前作は役者としての清居が中心だったのに対し、今作はカメラマンとしての平良にスポットが当てられていました。どんどん変わる平良を取り巻く環境、平良の感情。そんな中で常に変わらずに存在する清居の存在。初めのうちはどこか不安定だった二人の関係が今作ではとても強固になっていると感じます。清居の平良に対する好きの気持ちもとても明確になったように思いました。
両者ともに、どんなことがあっても二人でいることは前提として考えているようでとても愛おしかったです。3巻からの成長が凄まじい……!
二人は恋人として完全に結ばれ、平良もしっかり恋人として清居を見ているように思えます。ですので今作は二人の恋愛模様よりかは、キャラクターの成長の話でしょうか。二人でいることは前提になったからこそ、これから先どうやって二人で過ごしていくのかを意識させられました。
それと今作の清居、めちゃくちゃ可愛いです。以前から野口や杏奈に乙女だなんだと言われてはいましたが、今回はよりそれが際立っているというか……笑 とにかく清居が乙女で一途です。一巻のキングと大きく印象が変わりましたね笑 基本的に清居はずっと恋に悩める乙女でしかないんですけど、そんな中でもきちんとキングの強さがあって。平良の清居への愛や信仰心はもちろん絶対ですが、清居の惚れ込み方もなかなかでなるべくしてなった恋人なんだと思います。
一方で恋人としてのイチャイチャは少なめな印象です。濡れ場は今作一切ありませんでした。ただ凪良ゆう先生の方向性もあると思いますし、今作の話の重さ的にも色々あるのかなと。あとは挿絵の少なさにも驚きました。こちらも事情はあるのでしょうが、やはり美しい清居が見られないのは残念ですね。
私はBL作品でもキャラクターの成長を見るのが大好きなので、今作は大満足でした。以前より恋人らしくなった二人を読みたい方ももちろん満足できる一冊だと思います♪