原作既読です。原作から既に涙腺を刺激する内容ですが、そこに音がつくことで、完全にトドメを刺されました。感情に訴えてくるお芝居を聴かせていただきました。
コメディちっくな掛け合いも台詞の言い方も良くて、クスッと、ニヤッとできました。
中盤から終盤にかけてのあさひと爽の掛け合いが特に素晴らしく、ずっと聞いていたくなりました。あさひの過去についての語りやそれに対する爽の「いま楽しい?生きてて」の言い方、凄く好きでした。あさひと爽が互いに気持ちを伝え合う遣り取り、その声のトーンや言い方など全て最高でした。
そして、何よりも、回想で描かれる7年前の爽と亮二の物語は、ただでさえ原作での描き方が良いところに、より深みが足されたように思えました。まさか『夜夜中』が聞けるとは思わず、こうした部分が音声化の醍醐味でもあると思いました。
キャスト様方について、まず、高佐役の田中章貴さん。優しそうだけど、強かな大人というキャラクター像にぴったりなお声とお芝居でした。あさひと爽の物語をそっと支える役割をしっかりこなされていたと思いました。
次に、雪平亮二役の羽多野渉さん。食えなさそうなところもありつつ優しく、生きづらさを抱える傷ついた「子ども」である爽にフラットな距離感で向き合う「大人」として、とても安心できる温かいお声とお芝居でした。歌声も見事でした。
そして、八神爽役の阿座上洋平さん。傷を抱える繊細なキャラクターを演じるのが上手すぎます。独白での感情の乗せ方が凄く良く、心の内側に触れているような気分にさせられます。若い頃を演じるとき、声を現在より高めにして若さを表現することはよくある方法だと思いますが、今回、17才の爽はそこまで声の変化を感じず、話し方というのか、声の出し方で17才の子どもを感じ、そういう表現が好きだと思いました。
最後に、柊あさひ役の石谷春貴さん。お声から感じられる包容力が凄かったです。真っ直ぐに爽を見て、気持ちをぶつける強さと眩しさを感じるお芝居が素晴らしく、聞いているこちら側まで救われる気持ちになりました。一方、あさひの過去からくる屈託さの表現も見事で、ツッコミやポソッと零す声、振り回されてアタフタする声、いろんなお声が聞けました。「無茶ぶり―」「絵本強請る子供か」の言い方が特に好きでした。
「翻弄系小説家とのロマンスについて」は二人の出会いから始まり、爽が中心の話ですが、これは是非とも恋人らしい二人やあさひについてより深掘りした内容の続編「相愛系小説家とのロマンスについて」の音声化も期待したいです。
原作全巻既読です。原作の繊細で、風景画のような、彼らの生活の景色を眺めさせて貰っているような、静かで淡々としながら温かな、あの雰囲気をどのように音声化するのかと思っておりましたが、期待以上の完成度でした。
まず、ベンジャミン役の斉藤壮馬さんですが、落ち着いた低めのお声がとても良かったです。浮世離れした雰囲気をお声だけでもここまで表現できることが凄いと思いました。105歳という年齢だけみると年上受けですし、落ち着いた感じもありつつ、「元天使」ということで、未知に対する無邪気さで大人を振り回す幼さも感じ、年上感と年下感の両面があるように思わされ、甘えたくなるような甘えさせたくなるような絶妙なお芝居に感じました。とても魅力的なキャラクターとして表現されていました。
次に、ターナー役の阿座上洋平さんですが、優しく穏やかなトーンで、良い意味で普通なお声がとても良かったです。ベンジャミンが浮世離れした雰囲気のため、そこに対する「普通の人間」と言いますか、普段からそこに居るような実存感のあるお声を感じられて、凄く好きでした。道で元天使を拾う形になるわけですが、拾われる側として、この人ならついて行っても大丈夫だろうという安心感や信頼感を持てると同時に、ただ優しい人良い人だけで完結せず、自身の性質に後ろめたさをもつような、及び腰がある様子も感じられるお声とお芝居に思えました。とても人間らしいけど生々しすぎないキャラクターとして表現されていました。
彼らの掛け合いが心地よく、耳に優しく、とても聞きやすいからこそ、安眠導入剤にもなり得そうなとても染みわたるお声たちでした。続きのお話も音声化の機会があると嬉しいです。
BL作品を「読む」ことはこれまで何度も楽しんできおりますが、BL作品を「聞く」ことは本作品が初めてとなります。そのため、BLCD初心者のレビューだと思っていただければ幸いです。
これまでBLCDに手を出さなかったのは、濡れ場を音で聞くことに気恥ずかしさがあるからなのですが、原作既読の本作品については濡れ場が控えめなことを把握しており、キャスト様も好きなお芝居をされる方々だとわかっていたので、意を決し購入しました。
購入は大正解でした。原作の良さが旨く表現されており、本を見ながらCDを聞いても、CDだけに集中しても楽しく面白く聞くことが出来ました。ただ、本を見ながら聞くと、構成上カットされる台詞も目に入り、原作ファンとしては「この台詞も音声で聞いてみたかった!」となりもするため、そうした気持ちを持たず聞きたいのであれば、まずはCDだけで楽しんでみるのが良いのではないでしょうか。
個人的に、本作品はラブコメ寄りだと思っているのですが、原作でクスっと笑えたところがCDでもクスっと笑えて、テンポ感など、キャラクターの掛け合いがとても良かったです。もちろん原作同様、クスッと笑えるシーンだけでなく、真剣にグッと胸に入るシーンはCDでもバッチリでした。
濡れ場が少ない作品ではありますが、濡れ場がしっかり見たい方は、「いちゃラブ増量盤」に手を出されるとより楽しめると思います。濡れ場が少ないから購入したはずですが、通常版が良かったので、「いちゃラブ増量盤」にも手を出しました。通常版でまず先に二人の馴れ初めをじっくり聴かせていただいていた後なので、濡れ場を音で聞いても気恥ずかしさより微笑ましさが勝ちました。可愛いカップルです。
最後に、キャスト様方についてですが、メインのお二人も脇を固める方々も皆さん、声質、お芝居と、聞き心地のよいものでした。各キャラクターにしっかり合っていました。桐生も大前も落ち着いたお声だったのが個人的には聞きやすくて、嬉しかったです。
桐生については、誘いをふっかけるようなときに出す、低めの色気のある声から通常モードの落ち着いた声、気持ちが高まったときなどに高めになる声とバリエーション豊かで、その声色のギャップが楽しかったです。全然隠し切れていない大前への感情が伝わってきて良かったです。
大前については、基本は落ち着いた声ですが、所々可愛げのある言い方、声を出すのが良かったです。感情の起伏が少ないキャラクターなので、淡々とした話し方、声ですが、ストーリーが進むとどんどん感情が声に乗っていて、「この人、桐生のこと滅茶苦茶好きですよ!」と言いたくなる声色で最高でした。
桐生も大前も、格好良さも可愛さもあるキャラクターだと思いますので、それをしっかり魅せてくれるお芝居をしてくださり感謝しかないです。原作ファンとして元々好きだったキャラクターたちにより愛着を持てる音声化でした。