読了後の方向けだろうレビューです。すみません。
面白かったねを共有したくて……。
まず最初に、“イド”の遺言というタイトルでしたので、二重人格で性に奔放であるというトップ、和耶の主人格ではない人格が登場した時点で「あぁ、彼が居なくなるのだな」と予想はついていたのですが、ついていたのに、裏切られたような感覚になりました。
結末をここで語るのもナンセンスな気がしますが、興奮冷めやらぬ、ですのでどうか多めに見てください。
和耶が「諒雨(ボトム)が好きなのはおれじゃなかったんだ」と勘違いしたまま、そのまま別人格を殺して主人格が別人格を演じるなんて普通考えつきません……。そういうタイトルの回収の仕方をするのか〜!!と脱帽しました。
これまたひと味違うヤンデレを浴びたなと……。
「諒雨がおれ以外と一緒に居るのは嫌だから」と友人を騙したように、諒雨の事も騙して生き続けるというのはダークでいい味がしますね。
ただ、行動原理が基本的に“諒雨の唯一でありたい”なのがいじらしくもあります。
男に乱暴された辛く苦しい過去(直接的シーンは無いです)をひた隠しに生きてきた事や、別人格に交友関係を乱された事等で自己完結型(ネガティブ)の自罰意識強め自損思想なのが全マシすぎて個人的性癖にぶち刺さって抜けそうにありません。
面倒臭い男なんて面倒であればあるほどいいですからね。
遺言の件はダブルミーニングにもなっているのかな?
時間を空けて冷静にもう一度読み込みたいです。
尺があったらもう少し掘り下げられた所もあったのかな?と思わないでもないところもありましたが、伏線回収の鮮やかさに個人的には大満足の作品でした。
表情の描き方、雰囲気の作り方が突出してお上手な作家さんで、線の引き方も柔らかく、登場人物の顔も上品さとかわいらしさが共存していて魅力的でした。
髪の毛先のペンの抜き方が艶っぽいですね……。
パースの乱れもなく、読みやすいです。
ただ、流し読みするタイプの方は話が理解できなくて難しいと感じてしまうのではないかな。
丁寧にストーリーを構成されている作品だと思います。
数日前に1~3巻までをまとめ買いして一気に読み、本日4巻が配信されたので読んできました。
人の……と言うべきか、級友であり親友、そして想い人の命を握るという事がどれだけの重さなのか、人の人生を己のひと声で変えてしまう事がどれだけ罪なのか……。タキがずっと考え続けているのを見てきた中で、「どうしてタキはねじ曲がったり折れずにいれるのだろうなぁ」と思ってきたのですが、想像よりずっとやわらかく繊細な約束をよすがにしていたのだと気がついてしまい、思わず涙が零れました。
彼らを不自由にするしがらみから恐らく叶わないだろう約束の儚さ、それをずっと胸に留め大切にしてきたタキのいじらしさに胸が熱く、苦しくなりました。この約束がタキの心をあたためていたんだろうな、とも。
自身の飢えた衝動では無く意識の無いまま、バッドトリップでタキに無理を強いている事を自覚し、距離を置き、スグリにも「タキを近づけるな」と厳命していたクラウスの想い。けれどその想いを尊重して尚、後に自分も後悔、若しくは罪悪感に苛まれると分かっていながらタキの想いを汲むスグリも本当に人間くさいと言いますか、皆それぞれ不器用に生きているなぁと感じました。そこがいいですよね。
己の罪は己の罪である。他人に背負わせたり擦り付けるものでは無い。という所はこの漫画を通して1つのキーにもなってるんでしょうか?
各々が簡単に答えを出せる関係や立場ではないからこその味わい深さなのだと思いますが、見ている分にはハラハラドキドキ所ではありませんね……。はやく元気になってくれ……。
流麗な線と画力の暴力とも言える描き込みと構図、恐ろしいです。どのページを見ても綺麗で整った画面作りが徹底されているのにドラマチックで、シーン毎に空気感や温度がありました。もうこれは紙で買わないと勿体ない作品ですね。買ってきます。電子より紙ですこれ!!
相変わらずと言うと偉そうな響きがありますが、どれだけ色んな作品に触れてきたかで、この作品の意図や描写を受け取れるかがモロに出そうだな……と初見時思ったくらいには流し読みや1回の読み込みで理解出来るほど簡単な作りはしていませんね。BL漫画では久しぶりに映画を見終わったような充足感と余韻がありました。次巻が楽しみです!!
ブツ切りの感想かつ長くなりましたが、もしお目通ししてくださった方と読後すぐの気持ちが共有出来ていれば幸いです。