読む人の心に深い余韻を刻みます。傷ついたふたりが再生していく希望の光を見せてくれるような作品でした。二人の不器用で切ない恋愛は、「死ぬための恋」から「死ぬまでの恋」へと変わっていき、そこに込められた想いに希望を見出すことができました。
印象的なのは、登場人物の心情が非常に丁寧に描かれている点です。「一緒に死のう」という言葉の裏には誰かとつながりたいという切実な思いが込められているように感じ、胸に刺さりました。クライマックスでは、仁が悠季をかばい傷つき、入院中に自らの過去と対面するシーンがあります。父の愛情に気づいたことで、仁は自分自身を赦す一歩を踏み出します。この過程は「愛すること」と「生きること」に対する仁の意識の変化を象徴しているように感じました。
また、悠季が仁と一緒に「生きたい」と願うようになる姿も、心に残ります。二人の成長と愛の本質を強く感じさせられました。
この作品は、一見して暗い物語のように思えますが、読んだ後には前向きな余韻が残ります。そこには人間が愛して成長し、再生する力があることを感じました。同時に、「人を愛するとは何か」「生きる意味とは何か」という課題が心に残り、考えさせられます。 「生きていく」という選択をする意味を考えさせてくれる作品でした。
324P一気読みでした。二人の関係性に最後まで目が離せず、また創作に携わる人間の心の機微まで繊細に描写されていてとても共感しました。これで良いのだろうか、こうすればウケるかもしれない…そんな余計なものを捨てて画面に向き合う。それが出来たのは、お互いの存在があってこそ。
強気で喧嘩っ早い受けというのも好みでしたし、完璧に見えて心の闇と執着を持っている攻めも魅力的でした。それぞれのバックボーンもしっかり描かれていて、説得力があります。
受けの視点が読者がまるで入り込むかのようにぴったりとシンクロしていて、感情移入して読みやすかったのも大きかったです。
読みながら浮かんでくる攻めの行動や思考の違和感が、最後明かされる場面ではここでそうきたか!と思わず唸りました。
BLの中で描かれる成長物語がとても好きなので、作品を通して、ふたりの成長
そして愛を育む関係性を楽しめるお気に入りの作品になりました。