やはり吉田ゆうこ先生は、ちょっとずつ相手と距離が近づいたり、影響を受けたりしていく様子を描くのが上手い!ページの中で世界が息づいているかのような、人物の体温を感じさせる空気感も大好きです。
純粋で余裕のない二人の、手探りな恋模様がじんわりしました。
正反対で、お互いそれを理解しているからこそ気遣っている様子が優しい(先生の描く、相手を大切に想う気持ちや振る舞いに、とことん弱い)。実は双方優しさや気遣いの度合いがとても近く細やかで、芯のところが似ているのが好き。
奥先輩の乏しい表情や、真面目で誠実な性格に無性に惹きつけられます。また、そこが一周回って面白さや可愛さにも繋がるのが強い。一転して、恋をして見せる崩れた表情も堪らない。うまく言語化できなくて歯痒いけれど、物語を通して魅力だらけで異様な吸引力の持ち主!
先輩に耳が生えた理由と、それをきっかけに自分を嫌悪したエピソードが、短くさらっとしていたけど納得感があり、なんだか印象に残りました。
後半での、イヌ耳付きで鏡と睨めっこする所の破壊力…!
保科くんはグイグイきてちょっと謎めいているので、最初は小悪魔タイプかな?と思ったけど、ピュアで優しい子でした。「いままで会ったどんな人よりもすき…」のところの純度の高さにやられた。
保科くんが見てきた優しく幸せな世界に、共にいることで先輩も連れていくような乗り越え方が素敵でした。
ケモ耳もシチュエーションと相まって可愛かったです。実際にはない状況だけど、そこへの向き合い方や共生の仕方がそれぞれとても自然で、固有の性質としてスッと入ってきます。普段ケモ耳ジャンルを読まない自分でも、読みやすく楽しめました。
大きな事件が起きるわけじゃないけど一つ一つの行動に人としての優しさや気遣いが滲んでいて、この二人を好きになります。ふとしたコマの表情や仕草が可愛く、愛おしいです。
静かな話だけど確かなぬくもりや尊さがあり、満足感高い一冊でした。
透明感と憂いのある絵が美しく、表情や場面の切り取り方に惹きつけられました。特に、各回扉絵の構図と、線の質感に滲むあたたかさがお気に入りです。
キャラがみんな純粋で優しく、気を遣いすぎる同士が少しずつ距離を縮める様子にじんわりし、幸せになってくれ〜と思いながら夢中で読みました。
狭霧は陽キャだけど無神経ではなく、開始すぐに嫌味のない人気者の説得力にまんまと堕ち、気づけば応援していました。なかなか自分を大切にしない様子にハラハラしました。
萩は表情がまとう艶に、狭霧さながら魅了されました。徐々に心を開き馴染んでいく様子が楽しかったです。
涙で繋がる、お互い囚われていたものからの救いになる関係が美しかったです。
また、個人的にこの二人のピュアさがとても刺さったので、描き下ろしでもじっくりと愛を育んでいる様子にホッとしました。
双子の藤や親友のウッチーとの関係も描かれているのが好きです。男子高校生らしい明るさと周囲から見た二人の関係の変化が自然に語られて、素敵でした。特典でも四人で仲良くしていたのが嬉しかったです。
純粋でとにかく可愛く、最後まで思いやりに満ちて優しい物語でした。幸せな気持ちになれました。
強烈な一目惚れから始まって、二人が気持ちをぶつけ合い、お互いに譲れない生き方がありながらもどうしようもなく相手に惹かれる様子が素敵でした。
どちらかに合わせて折れるのではなく、意志を貫きながらも愛する気持ちを認めるのが強く、最後まで両校のトップらしい在り方が良かったです。
描き下ろしの関係性にときめきました。緒川先生の登場人物たちの強さが大好きなので、二人にはずっと気持ちをぶつけ合いながらもラブラブでいてほしいです。
デート回は、遊園地ならではの高揚感とバレるかどうかの緊張のバランス、アトラクションを利用した画面構成に痺れました。演出力高い…。
ナギとハロウ双子もまた、違う生き方だけど大事なものは同じで通じ合っている様子が刺さります。
最初から最後まで、葛藤し移り変わるまりんの感情が切なく、流す涙が美しかったです。優しいが故に背負い込んでしまうところと、対立に町の在り方が関わっているのが、情と大義の両側面あって説得力がありました。
にこるも、底知れなさを感じ続けてきましたが、あたたかみや優しさがまりんといることで引き出された本物だったと知ってじんわりしました。
1話のまりんの涙の色気にやられ、そこからずっと最高にワクワクさせてもらいました。ロミジュリのヒリヒリに萌え、ページをめくるのが楽しくて仕方がない漫画でした。
本誌で追っていて予想外のタイミングでの完結予告が出たので、あれこれ想像を巡らせてしまいましたが。最終話を読んでみたら、清々しく綺麗に完結していて、意外と納得できました。
ですから、元の構想からどう着地したのかは先生のみぞ知る、なのですが、その上で。
先生のSNSでちらっとおっしゃっていたことを見るに、心身のための対処の一つとして、同時連載のうち片方を完結したのではないかと思いました。
先生にはご自分を大事にしてもらい、当面は他誌での連載を楽しもうと思います。そして、またいつかまりんとにこるに会えたら嬉しいです。
ここからが!
敦くんが素直でかわいいし、日高さんの、内側を見せてくれないけど優しいという狡さも魅力的でした。
この甘くならず、期待を持たせてくるような終わり方も良いのですが。
敦くんが日高さんを好きになっていく様子にドキドキした分、今度は、敦くんを愛する日高さんが見たい!
敦くんの第一印象にかなりハラハラしたので、読み進めるうちに好きになれたことに驚きました。後半の展開は彼に感情移入し、本当に切なかったです。
日高さんも多くを秘めているし怖い人だけど、表情や仕草にどこか優しさを探してしまい、惹かれてしまう説得力がありました。どちらの人物も匙加減が絶妙。
お互いの友人関係にも触れていて(日高さん周りはちょっと心臓ギュッとしたけど)、二人だけの閉じた輪にならず、それぞれ違う世界を持っているのが面白かったです。
絶対好物なんです、ここからの関係性。(仮)が前提の中での、愛になるかどうかの駆け引きや綱渡りが、見たい!!ぜひともこれからの二人を知りたいです。
可能性の提示に萌え激ってしまったからこそ、逆に、続きが気になって仕方がなくなってしまい。この一冊としては萌評価に落ち着きました。勝手に期待値が上がりすぎてしまったが故、今後のために評価の上限余白を残しておこうと考えてしまいました。
続編、期待してます!!
ここまで聴けて、本当に幸せ。これに尽きます。
いつもながら、久礼野ハジカさんの言葉の力が強く美しい脚本と、キャストお二方の高い演技力と、双方が織りなす繊細な心情描写と説得力。全てを堪能しました。
六甲綾人と央田尋が積み上げてきた、時間と愛が沁みた。
央田先生、あなたはこんなにも傷だらけだったの。切なくなる一方で、支える立場が逆転した二人の関係の変化が最高で。
翻弄される生徒だったところから強かさと揺るぎない愛を持った六甲くんの成長は、新人だった八代さんとリンクしていて、相乗効果で大勝利だと思います。六甲くんの央田尋のための成長っぷりは素敵すぎます。
二人とも声に愛情や優しさが溢れていて、開始早々心臓バクバクしました。相手を理解しあって遠慮がなくなり、一緒にいることが馴染んでいて。対第三者シーンが何度か出る分、より際立っていた。何気ない距離感や間に、年月を重ねた二人が息づいている。
央田先生が美術教師である設定が、ちゃんと1人の芸術家として、その感性や生き様を描いたのが素晴らしい。
明かされる先生の過去や身を置いていた環境は、全然想像がついていなかったけど、とてもしっくりきました。恐らく久礼野さんは、登場時から央田先生の過去を作り込んでいたんだろうなと思わされる完成度。
第1話では、六甲視点のSSと照らし合わせながら、央田尋LOVEに振り切れてる六甲くんとは対照的な憂いや臆病さがジクジクしました。
辻の人物評と先生のモノローグが交互になるところが印象的。嫉妬する六甲くんは本当に可愛く、央田先生さながら生命力を眩しく感じました。
彼の感性がみる六甲の喪ったものとの交流が、美しかった。今回でまだ「海」は終わっていないと気づかされました。
第2話は冒頭で、名前の呼び合いに、さらっとした描写ながらタバコで燃やした話に悶えつつ。その後の失踪に、本気で安否を心配して心細さが隠しきれない六甲くんが、切なかった。
再会後、先生の傷が晒され、感情がぼろぼろしてる声に揺さぶられました。詩的な言い回しの多い央田先生が、「いなくなっちゃったら」と頼りない言い方をするのがある意味衝撃で。根幹にある絵描きの部分に、何重にも影響を与えていた六甲くんの影響力と、央田先生の愛の激しさに震えた。
過去、先生はその愛し方を伝えられず、理解されなかった。これまでの二人の痛みを伴い喰らい合うようなコミュニケーションが、欠けた者同士であることが、同じ土俵で愛しあえたことが。どれだけ央田先生にとって救いだったのだろう。
この5年間孤独に寄り添われていたのは、央田先生も同じだった。取り戻そうとするわけでも、貸し借りでもなく、共にいることそのものに充足感を得ている。それを実感して、これまで積み重ねてきた物語が、さらに煌めいて感じました。
会話しているうちに光が差し込むような、浮上してくる心の機微が自然で。気持ちの受け渡しが生々しかった。切り取れば特殊な台詞でも、何の違和感もなくストンと入り、人間ってこうだよねと思う。
「ずっと一緒にいた」重み。六甲くんの安心感たるや。信頼関係と相手への想いが、堪らない。
陰で淫な空気と傷痕がつきものだった二人の、ただただ素直に相手を求め合う純愛が可愛かった。ここでくる、集大成でありながらも溶けるようなまろやかな交わりはずるい。
あの央田先生が、未来について語れたことに感動した。もうこの二人は、二人でいる限り最強で、安心と思えた。
キャストトークも、演じ手ならではの感慨が滲むお話に、余韻と感謝で感極まってしまう。八代拓さんと新垣樽助さんだったからこそ、六甲綾人と央田尋はここまで辿り着けたんだと感じました。
大好きな二人が、ずっと一緒に幸せでいてくれることを願っています。
衝撃だった。
音声だけで、人の感情をこんなに揺さぶることができるのか、と。
次々と情景が頭に浮かんで、映画なんじゃないかってくらい、情報量が多い。ノーBGMの臨場感と相まって二人の実在感が凄まじく、本当にどこかで生きているような気がした。
演出も、脚本も。何より、八代拓さんと新垣樽助さんの、表情も感情も距離感も、何をしているのかされているのかも伝わってくる演技がとにかく素晴らしく。
聴き終わってから、呆然と過ごす日々でした。
キャストトークが、聴けなかったです(しばらくしてから聴いたら、毎度ながら別人に明るかった。内容とはあまり関係ありませんが、テーマトークが声優さん好きとして興味深い内容でした笑)。
何この二人、愛しかないじゃん。
前回まで『男子高校生』ということもあり、ストーリー的に六甲くんに重きが置かれていたような気がしますが、今回は二人の物語が描かれている。
お互いの相手がこの人でよかったなと、しみじみ思いました。
・Crushing on you
家での先生の笑い声ひとつひとつがどこか無防備で、心の殻が何枚か薄くなってる!と悶えました。家や絵から央田先生の内面を感じ取れる六甲くんが、素敵。
絵に関して、脳に直接流し込んでくるような表現が見事だった。
六甲くんに央田先生が必要、と思うことはたくさんあったけど、央田先生の理解者もまた六甲くんで、唯一の存在なんだな。
毎度ですが、このカップルは行為と感情が絡まっているので、ディープでも聴きやすく楽しめます。匂い立つ色気は、本当にさすがです。
・さよなら、childhood
…BLCDって、すごい。
六甲綾人と央田尋が、ここまで辿り着くなんて。心が震え、感動しました。
二人のはじまりを彷彿とさせる状況で、今まで何度も繰り返されてきた言葉が、全然重みや意味合いを変えて聴こえる。
先生が淡々と、残酷に、楽しんで追い詰める場面は、六甲くんが本当に可哀想で。
だけど同時に、先生の声が優しげにも聴こえるのが、どうやったらこの塩梅になるのっていう。
六甲くんの絞り出すような悲痛な怒りに、胸が締め付けられた。対する先生の「すげえ、いぃ」が苦しそうなのに美しくて壮絶で、六甲くんが目の前に意識を引き戻すのに納得しかない。
その後はもう、あやすような央田先生の声に滲む、綾人への愛情が深くて。この人は本質的なところで、なんて優しい人なんだろう。
また、その愛情を受け取る六甲くんの声が、視界が開けるようで。
ここのお二人の演技は、圧巻でした。それぞれの感情が、肌感覚で伝わってきた。
先生は、六甲くんを容赦なく追い詰める一方で、自分も(本当に)死にそうになるくらいたくさん差し出している。
愛を確認した後に望むのが、「痛み」なんだなぁ、と。
お互い愛しているからこそ痛みを与え合うという、この関係性が好き。
声にも言葉にも愛情が満ち溢れてるのに、物音や央田先生の息遣いで、はっきり痛みや苦しみも伝わってくる。だけど上品で、気持ちよさそうで、幸せそう。きっと彼らは常識から外れているんだろうけど、人間らしくて、美しくて、優しかった。
すごく深い人間ドラマ。六甲くんのこども時代は終わったんだな…。
開放感のあるラストに、聴くたびに泣きそうになり、余韻に支配される。
そして今回は初めて、央田先生に余裕や包容力だけでなく、歪みの中に潜む弱さや自己卑下が感じられて。でも六甲くんが意図的か無意識か、それを包み込むような言葉を瞬時に返していて、グワッときた。
今まで教師と生徒として、央田先生が六甲くんの傷を受け止めてきたけど、これからは一対一の対等の人間として、六甲綾人も央田尋の傷を受け止めるんだなと。
央田尋の過去が気になる。
こんなに素晴らしい、ある意味の「結末」を迎えた上で、続編があるということ。だけど、全然がっかりしない。むしろ、まだまだこの二人を見守りたい、と思う。それはきっと、CDの中で彼らがしっかりと生きていて、その後も人生が、二人でいることが続いていくことを感じさせるから。ターニングポイントではあるけど、はじまりであって終わりではないのだと思う。
続きも絶対聴きます。
素晴らしいとしか言いようがない。もう、あまりに登場人物たちが生きていて。圧倒的な存在感、生身感に、今回も溺れさせていただきました。
内側で抱える感情、表に見せている面、そして抑えきれず漏れた感情。これらを矢代さんにも百目鬼にも共通して感じて、すれ違いにギュッてなりました。
最初に漫画を読んだときは、矢代さん側の辛さを強く感じました。
しかし、音声だとわずかに漏れた揺らぎもはっきり表現されるので、その分百目鬼側の「見せていない感情」の存在をより意識しました。性欲処理として矢代さんに触れるときの、平淡に聴こえる声にも、今どんな気持ちなんだろう、と思いを巡らせ。
結果CDでは、どっちの気持ちにも感情移入して、すれ違いが生々しく、辛かったです。
百目鬼以外との会話では、わりと今まで通りの余裕たっぷりの矢代さんだったので、音声化ならではの表現を手放しに楽しめました。もはやヤクザパートが癒しにさえ感じました。聴いている最中、何度かっこいい〜美声〜色気がすごい〜と思ったか。
・最序盤、脱衣所での神谷とのやりとりで、漫画だと表情と『にや』という擬態語で表されていた笑みが、音声では「ん〜ふふ〜」ってなってたのが可愛かった!
・城戸修也に圧力をかけるときの、巻き込まれ竜崎への不名誉発言までの一連の流れがすごく色っぽかった! この直後の七原が一切動揺してないのが、日頃の苦労が偲ばれてセットでお気に入りです。
また、声のお芝居ではありませんが、綱川が奥山の関わりを知って退室した後の『バキ』が思ったよりかなりおとなしかったです笑。
平常運転な場面があるからこそ、百目鬼にだけ戸惑う矢代さんが浮き彫りになり、実際本人もそれを無視できなくなってきている。
「どうでもよくて どうにもならなくて」の力ないモノローグに切なくなりました。
一転、井波と意外と穏やかな関係を築いているのが、矢代さんの強かさを喜べばいいのか、自らの意思で自傷行為を重ねていることを悲しめばいいのか、複雑でした。
そのため、帰りに遭遇した百目鬼には、かなり怒ってるね!?愛だね!?とテンションが上がり、救われました。
この間に差し込まれる、お久しぶりの杉本と七原の会話は、信頼関係を感じて1番癒されました。ふたりとも大好きなキャラです。それぞれの視点から矢代さんと百目鬼を見て、考えているのが嬉しい。
「性欲処理」の部分は、今までで1番くらい?思ったより矢代さんの声が大きくて驚きました。翻弄されていて、感じてしまうのを制御できないのが伝わってきました。
今までのどの矢代さんとも違って、4年前の百目鬼とのときとも違う種類の焦りや戸惑いがあって。感情がぐちゃぐちゃになっていて取り繕いきれない様が切なかった。
個人的に、新垣さんは濡れ場の感情表現、相手との関係性をキャラや状況によって絶妙に表現されると思っていて。さすがでした。
家族以外の「力」呼びは、音声で聴くと結構ダメージ大きかったです。多分間違いなくママとはそういう関係じゃないと信じているのですが、「駆けつけますから」といった言葉が百目鬼の口から出ると…。矢代さんの居心地の悪さを肌身で感じました。
ラスト1分は、圧巻でした。CDで状況補完として追加された、矢代さんが百目鬼の名前を呟く(想う)台詞の、呆然具合。百目鬼の、抑えきれず漏れた激情。お見事でした。
特典とトークは、とにかく楽しくて、これがあってちょうど現実界に戻ってこられる、絶妙なバランスでした。
特典は単行本のペーパーでは予想できない面白さでした。おふたりの演技力が高いがゆえに起きてしまった、悪魔の組み合わせというか。
百目鬼声だと、いつもの矢代さんと同じことを言っているのに、とても変態に聴こえました。新垣さんの矢代さんだと、どこか上品に聴こえるんですよね。抜け感がないだけで、こんなにも親父臭い、面白キャラになるのかと。
トークは毎度ながら、本編と全然声も人柄も違うな…と思いつつ、非常にほんわかしました。おふたりの分析力の高さに、なるほど、と気づかされることが多かったです。
また、CDブックレットの新垣さんのコメントが本当に素敵で、感動しました。この方が矢代さんなのが、奇跡だと思いました。
異なる媒体ならではの表現が素晴らしく、またひとつの正解を教えてもらえて、囀るはやはり原作とドラマCDあわせて楽しみたいと思いました。
ボーイフレンド17が素敵だったので、吉田ゆうこ先生の他の作品もと思ったとき。試し読みで、天馬を演じる椿の強烈な説得力に惹かれたのがきっかけです。
物語の軸に天馬が存在しつつ、椿が中心の物語。椿が徐々に変化していく構成が、扉絵やカバー下も含めて綺麗。ひとりでは何もできなかったところから、天馬を追って死ぬことも、幹さんを一番にすることもできない「裏切り」を経て(多分ここまでが『いけない子』。悪いという意味と、深読みすると「逝けない」という意味もある?)、天馬からの解放を迎える。
椿の演技力に説得力があったし、ガラッと変わる表情に惹きつけられました。視線の力でハッとする。彼にのめり込んだ幹さんに感情移入できました。演じることを通して椿が人の心を理解していくのが自然。
また、エピソードの積み重ねが丁寧。特に、ファミレスで想像するシーンが、天馬との思い出としても演技に入り込むきっかけとしてもリアルでよかった。そこから繋がる自殺未遂のときの幹さんの「想像してくれ」がお気に入り。
死者を仲介にした人物配置が面白かったし、ラストはとてもドラマティックでした。
そして、描き下ろし『smile』が本当に好き。天馬を間に置かない幹さんと椿のふたりの関係にグッと寄っていて、本編ではあまり描かれなかった椿からの視点や、幹さんがどんな人かがわかって、いい関係だなと思いました。愛しさが残る読後感。
ただ、演技中でもない素の状態の新をみて、マネージャーだった幹さんでさえ驚く、というのに少し引っかかりました。天馬の一番近いところにいたのが椿、という表現でしょうが…。生前の天馬と関わりのあった二人で、それをきっかけに出会っているけど、幹さんは思ったよりその他大勢側だったのかと。天馬と幹さんの関係、というのがもう少し語られると、より入り込んだかな。
絵の持つ力というか、表情や言葉と相まってつくられる空気感が、物語の説得力を生んでいる。静かで仄暗いけど、月のような一筋の光と、ぬくもりがある。空気感が圧倒的な個性になりうるのだと、吉田ゆうこ先生の作品で知りました。
また、演出力に長けていらっしゃる(雨の中椿が自殺未遂するところ、広告で天馬の顔が初めて出るところなど)ので、シーンの力がとても強く、無性に惹きつけられる作家さんです。また新刊が出たらチェックしてみようと思います。
読むたびに誰目線で読むかが変わり、感じ方も変わるので評価に迷いましたが、個人的な好みとして、幹さんの掘り下げがもっと読みたかった気持ちもあり、神寄りの萌2に落ち着きました。
最初、表紙とタイトルにちょっと気後れしちゃいましたが、読んでみたら安心の緒川先生ブランドで、甘さと切なさが絶妙な至高の一冊でした。
歳の差や親戚関係がときに気安いやりとりになり、ときに距離を感じて切なくなるのが萌えました。背徳感は感じなかったです。
ギャグみたいにエツローが何度も怪我しちゃうところと、エツローや家の孤独感と。この振り幅をどちらも描ききり、かつ絶妙なバランスなのがすごい。
お話と、日本家屋のひとつ屋根の下という状況の親和性が物凄かったです。設定に無駄がなく、全部が噛み合う完成度の高さ。
弓太の黒目がちの瞳やサラサラの黒髪が、普通でありながらも綺麗でかわいい。少年だけどめちゃ色っぽい不思議。
表情がいちいち可愛くて、男子高校生が不慣れな家事をこなし、頑張って料理を上達したり、これまでのエツローのことを深く考えたりするのが健気で。いい子。
とんでもなく魅力的です。エツローの心を揺さぶったのも納得です。
対するエツローは、だらしなく見えて、添えたメモの字の綺麗さや手際よく料理をする姿に、凛としたところや人間性の誠実さを感じさせるかっこよさがある。とりわけ、書に集中する張り詰めた空気のギャップたるや。
それら全てが家族を喪った孤独に基づいているので、狡い大人な面も沁みました。
懐に入れてもらえない弓太の寂しさも、大事だからこそ手放そうとするエツローにも、どちらにも感情移入しました。だからこそ、ふたりで乗り越える場面はじんときました。
依存ではなく、寄り添う生き方。最高の関係です。
おトメさんも、おうちの子として迎え入れられてよかった。
濡れ場もふたりの間にある心理的な一線というか、壁というかにリンクしてどんどん溶けていく感じが、色っぽいと同時に優しくてあたたかくて。素敵でした。
エツローの過去、ふたりの出会い、現在、そして未来と、単巻ものとは思えない深みと人生の重みを感じ、没頭しました。
幸せな余韻に浸れる読後感です。
最後に一つ。読み終わった後にめくったカバー下の幼い弓太に心臓を射抜かれました。油断した最後に特大級の可愛さが待っていました。
アホかわいい、という魅力をこの作品で知りました。テンポよくて可愛くて、ページをめくるのがとても楽しかったです。緒川先生の漫画力はさすが。
あまりにもチョロくて常に感情表現が振り切れてる藤間くんがとにかく愛しい。のはもちろん、御徒町が表情ではぬぼっとしていて何を考えてるのかよくわからないのに、態度や言葉のかっこよさ故か、不思議と藤間くんへの愛をひしひしと感じます。双子のツッコミや応援も最高です。真澄くんと先生はやや気の毒ですが(笑)みんな素敵で幸せな時空。
全体に、とにかく可愛くキュンキュンします。特に、ふたりでくっついてお弁当食べてるところが最高に可愛いです。
普段がラブラブで可愛い分だけ、復讐部分でのわずかなすれ違いに苦しくなったり、逆さまのキスにドキドキしたり、アクセントが際立ちました。
緒川先生の中で1番明るい作品です。頭空っぽにして、ニヤニヤしたり応援したりしながら楽しんで読めます。とにかく明るいものを読みたいときにおすすめな、パワフルで爽やかな一冊です。