他の方も書いていらっしゃるのであらすじは省略させていただきます。
まず第一に読後感が唯一無二の作品に出会ってしまったなぁという感じでした。(もちろんとてもいい意味で!)自分はハッピーエンドよりも、メリバとか仄暗く今後の展開を考えさせられる系の作品が好きで、今回も主人公が報われないという前情報だけで読み進めたんですが、本当にとことん報われなかったですね…。もちろん作中ずっと暗い訳ではなくて、心温まるシーンとか少しドキドキするシーンとかもあったりもするんです。でもだからこそその幸せな部分と報われない現実とのギャップが大きくて余計苦しくなりました。
おそらく少し知的な障がいをもつムラさんは、周りの人が言っているとこや起こっている事をあまり理解することができずにいて、自分のことを宇宙人だと思っています。そんなムラさんはいつか自分の惑星からの迎えが来るのをずっと待っているのですが、読者からするとムラさんは宇宙人ではないし迎えも来ないとわかっているからこそとても心苦しかったです。
カンさんとムラさんの距離がだんだん近くなるシーンはドキドキしてこれからどうなるんだ?と心を高鳴らせていたのですがさすが木原先生、2人が上手くいって幸せになりましたとはならない。そう終わらせてくるかぁーという結末でだいぶ心がやられました、笑
ムラさんのラストが明らかにその道は幸せや安定とは遠ざかるようなものではないだろうか、その先は破滅ではないだろうかという結末を迎えるので、このページで最後だとわかりつつも次のページに何か書いていないか確認してしまうほどでした。いやー、木原ワールド炸裂っていう感じで、読み終わった後静かに涙を流しました。
結末を見ると、今後おそらくカンさんとムラさんの2人が出会うことはないのかもしれない。ムラさんもおそらく遠い場所で大変な仕事をしていくことになるだろうし、カンさんもムラさんのことで自分を責めるかもしれない。でもそれが人生で、出会いもあれば別れもある。おそらくカンさんもムラさんもお互いのことは一生忘れることができ無いんじゃないかなと思います。本の小冊子の「ジブンの星」は結末を迎えた後のムラさんの心情が描かれていました。内容を読んで、あぁムラさんの中には一生カンさんが生き続けるんだろうなと思ったし、その一途にずっと思い続けるムラさんの純粋さが伝わってきてまた涙が溢れてしまいました。ムラさんの一途に待ち続けることができる愛というのは本当に美しくて、でも残酷ででもやっぱり純粋無垢さがキラキラしてて自分が忘れていたものを思い出させてくれます。何がガツンと強い衝撃とか感情を与える作品ってよりかは、じわじわと心に染み込んでいくような、ふと彼らを思い出してぼーっと外を見てしまうようなそんな作品です。
さいごに、この作品は確かに報われないし辛いシーンも痛いシーンも多いけど、その中にあるわずかな幸せとかささやかな人の温かみも感じさせてくれます。そしてそういう一つ一つの温かさを大切にしていこうと思わせてくれるものでした。
気になった方がもしいらっしゃいましたら、是非読んでみて欲しいです!(だいぶ覚悟が必要ですが笑)
木原音瀬先生素敵な作品をありがとうございました!