これまで惣一の負った苦しみの負債。
そして北海道に移り住んでからの2人の生活の静けさ。
負債に対し、なんて小さすぎる日常の穏やかさ。
もう、わたしの心臓は
持ち堪えることができなかった。
正負の法則というものがあるのなら
惣一の負債はどういうエンディングで
回収出来るのだろう。
物語のその先に、これ以上の幸せがあるのか…?
しかし惣一はもう、この負債を忘れている。
代わりに、嘉藤がその負債と記憶を負う。
嘉藤は負債を追うことで
はじめて愛を知ることになったのだ。
「……私の名前を知っていますか?」
「私を好きですか?」
「あなたが私を忘れても、傍にいますよ」
一度は風前の灯となった惣一の命に与えられた
残りの人生を、想う。
あんまりじゃないか!
勘定が合わないではないか!
もう、どれだけ愛しても、愛しても、
不憫で、悲しくて、苦しい。