comicoで全話拝読しました。
タイトルは10年だけど、攻の涼生と受の知念が付き合っていた年数は14年。
そのうち、涼生が部下の智貴や他の人と浮気しだして、知念の心が揺れ始めたのが4年。
だからタイトルは君を愛した10年なのかな。
14年前の出会った頃の涼生と知念の恋愛は明るく輝いていましたが、涼生の裏切りから少しずつ壊れていった愛は決して元に戻らなかったという悲しいお話。
涼生を見限って一人病死を受け入れようとした知念は、自分を深く愛してくれる主治医の斉藤先生のおかげで穏やかな最後の日々を過ごすことができます。
それでも、斉藤先生の腕の中で穏やかに微笑みながら知念が呟いた最後の言葉が、「授業が終わったら一緒に帰ろうね」なのが考えさせられました。
この「授業が終わったら一緒に帰ろうね」については、ここのコメントを拝見して、原作の中国語版小説に興味を持ち、翻訳ツールを使いながら読んでみました。
以下は原作にあって漫画では省略されている描写ですが、
・治療を諦めた知念が何度も繰り返しみる混沌とした夢の中で、ある「少年」が知念に手を差し伸べながら告げる言葉が「授業が終わったら一緒に帰ろう」
・本編の最後でもう帰るはずのない知念を部屋で待ち続ける涼生の前に現れた17歳の知念の幻に対して、涼生が朦朧と手を差し出してかける言葉も「授業が終わったら一緒に帰ろう」
混沌とした夢に対して知念はうなされていましたが、斉藤先生の腕の中で「授業が終わったら…一緒に帰ろう…」と呟いた時は微笑んでいました。
私はこの描写から、結局知念も今生においてかつての美しかった涼生との愛に執着があって、もう愛が戻ることはないのに捨てきることもできなかったのかなと思いました。
それは愛した期間の長さ故なのかも。
ただ、心理描写は読み手の想像に委ねられているものだと思うので(知念が最後に微笑んだのは死を受け入れたからともとれるし)、機会があればぜひ原作小説を読んで考えてみていただいた方がいいと思います。
死にネタが好きな私には大変刺さる作品でした。
最後に、他の方がコメントで書かれている同作者の「再没人遇见」(中国語小説)で僅かに涼生のその後が触れられているのですが、涼生が智貴と浮気をして知念を苦しめた4年という数字が因果応報的な意味を持ってくるので、機会があればそちらも読んでみるのもおすすめです。