既に素敵なレビューがいくつも上がっているので多くを語るつもりはありませんが、かといって脳内で処理するには愛が余りすぎたので(笑)若干今更ながらレビューさせて頂きます。
このシリーズは、三巻丸々を使って二人が愛し合う過程を描いているので、BLとしては比較的展開の遅い方だと思います。特に受けである理人がいつまで経っても自覚しないので、とにかく焦れったい……! 読み手はもう親になったつもりでハラハラする事必須です。
置き去りにされた過去、あしながおじさんの存在、その正体に隠された真実――そして「ゴルドが欲しい」という自分の目的、それに対する疑問、葛藤。今までの理人なら、乗り越えられなかったかもしれない。けれど、劣等感も迷いも、理人の全てを壊して暴いてかき集めて、最後に抱き締めてくれた久我の存在が、孤独な理人にとってどれだけ救いになったでしょうか。
理人の口から「美味しい」と零れた瞬間、もうどうにもなりませんでした。こんなに心臓を直接叩かれたような衝撃は本当に久しぶりで、そこから最後まで泣きっぱなしでした。生きたい、という理人の言葉に、なにより私が救われました。
ル・ジャルダン・デ・レーヴの人たちも叶本部長もサラも皆良い人たちだからこそ、理人に幸せになってもらいたい。そしてその隣には、いつまでも久我の姿が在ってほしい。登場人物たちの幸せを願ってやまない、切なくもあたたかい物語です。
最後に。
高遠さん、料理の描写が上手すぎです。
槇えびし先生の描かれる小説の表紙やイラストは以前から目に留めていたので、新刊コーナーでこの作品を見付けた時もほぼ表紙買いに近いものがありました(あらすじに惹かれたのもありますが)。
そして購入から一時間経ち、今このレビューを書いています。久々に「レビューしたい……!」という衝動が抑えられなくなる作品に出会えて、脳内が興奮状態です(笑)
このお話は最初から最後まで、主人公・諒一(28)の視点で進んでいきます。この諒一という青年、純粋天然ワンコと見事な三拍子。が、一応攻めです。ちなみに私は途中まで受けだと信じて疑いませんでした。だって28歳に見えないし……!
恋人に裏切られ多額な借金を背負わされた揚句、誰にも助けて貰えずに借金取りに追われる事となった諒一は、嵐の中一軒の茶屋を見付けます。
そこで出会ったのは店主の蓮と、見るからに危険そうなサングラスの男・律。そして諒一はそのまま住み込みで働く事となるのですが、何を隠そう諒一はゲイ。華奢でタレ目で(笑)どこか影のある蓮に、それはもう必然の如く惹かれていくのです。
…………で。
とにかく蓮が可愛い。諒一が悶えるのも無理はありません。だって色気が、色気がやばい……!
タレ目って何で萌えるんでしょうねー……黒髪癖っ毛って何で萌えるんでしょうね! 私としてはこの二人はリバに近いと思うので、是非ひっくり返ってほしいです。あと脇役のキャラクター達がまた物凄く良い味を出しているので、番外編も読んでみたいです……山下警部の現役時代とか(笑)
槇えびし先生はとても表情を描くのが上手い方で、ふとした瞬間の表情があまりにも切なくて美しくて、何度涙腺が緩んだ事か……かといって切ないだけでなく、ほっとするようなほのぼのシーンから思わず笑ってしまうようなギャグシーンまで、全てが魅力的で読者を飽きさせない実力を持つ作家さんであると感じました。
子供の頃から自分が普通ではないと理解し、故にそれぞれの孤独を抱えてきた諒一と蓮。冷え切った心を蓮に救われた諒一が、暗闇に取り残された蓮の心を救った時、二人の恋は漸く動き出す。これはそこに至るまでの過程の物語であり、未来へ繋がる物語だと思います。
攻めは我が儘で捻くれ者、でも可愛くてどんな発言も許せちゃう魔性の作家・由利先生。受けはそんな先生の男嫁、健気でちょっと天然な担当編集者・六車くん。
この作品の最たる萌えポイントは、“昭和”。
昭和ならではのレトロな雰囲気が、線が細く淡い絵柄の木下さんによって見事に表現されています。何より二人の服装がたまりません。由利先生の着物姿の色気大放出具合ったら……!
そして六車くんが初々しいあまり、由利先生が若干悪者に見えます(笑)
そんな主従関係(?)の二人ですが、所々にお互いの愛情(差はあれど)が感じられ、読み進めながら焦れったくてうずうずしてしまいました。由利先生はツンデレなんですよ! 典型的な好きな子いじめ、でも根本にある優しさを隠しきれていない……そんな部分を見せられたら、全力で応援したくなるに決まってるじゃありませんか。
仄めかされる過去は最後まで明確に語られる事はなく、終始ほのぼのほのぼのほのぼのしています。そのほのぼの感が木下さんらしく、読了後の後味の良さは表紙から受ける印象を裏切りません。
恋する由利先生と鈍感な六車くんとそんな二人を見守る飼い猫、どれを取っても可愛くて優しくてほっとする、おすすめのお話です。
私は好きです、こういうの。
まず受けですが、プライドが高くツンの比率が圧倒的に多い、なんとも攻略が難しそうな(笑)性格をしています。
あぁもう素直じゃねぇなこの野郎! と叫びたくなる程焦れったく、毎度毎度の間の悪さと見当違いの勘違いにハラハラさせられ、まるで親にでもなったような気分にさせてくれます。
次に攻め。 年下+パイロット。
……狡いぞお前!
いや、これは反則でしょう。ページを開いた途端に眩しい程格好良いパイロット制服姿の攻めがお出迎えしてくれます。私はこれでやられました。えぇ、この作品を手に取った動機は大変不純です。
とにかくこの攻めがまた小憎らしくて無駄に色気たっぷりで、なんとも言い難く、こう……要するに萌えます。何でだろう。何でこんなに可愛いんだろう。
あらゆる勘違いからすれ違い続けた二人が再び結ばれた時は、思わず良かったねと呟いてしまいました。読み手まで幸せな気持ちになれるのは、この書き手さんのテクニックなのでしょうか。
このお話には最後にオマケの小話が付いているのですが、その扉に描かれているミニマムな二人がまたアホらしくて可愛いので、気になった方は是非読んでみて下さい。
砂原さんの新作だ!
と最初にこの作品を本屋で手に取った時、あらすじを読んで何事かと思いました。
15センチメートル未満って……身長の事かー!
身長差は萌えます。が、170㎝以上の身長差というのは一体……未知の領域過ぎる。
が、やはり砂原さんは砂原さんでした。
まず攻めですが、何とも感情移入のしにくい硬派な……というかむっつり君(こら)。なのに職業がドールハウス作家です。BLの職業設定でドールハウス作家、初めて見ました。
そしてツンデレ……というか若干性格の悪い気がしないでもない受けもまた、住宅模型などというちっこいものを作っています。このツンツンな受けが、とある出来事によって可愛らしいミニチュアサイズになってしまう訳なのですが。
なんだこの設定!
……なんでこんなに萌えるんだ!
攻めは本当に受けを大切にしていて、それが分かり難いながら実は所々のちょっとした言動に含まれているんです。
猫に襲われ逃げ隠れていた受けを救出した時の攻めの台詞は、BL界屈指の名言ではないでしょうか。
勿論、エロもばっちりです。15センチメートル未満だろうがなんだろうが、やる時はやります。これがまたムフフ……なのですが、それは読んでからのお楽しみという事で!
設定を見て苦手だと思われた方、私も初めはそうでした。ですが、まずは手に取ってみて下さい。きっと読了後には不思議な感動と幸福感が味わえる筈です。
まず、この設定で面白くない訳がない。
三十路を過ぎた准教授と料理の上手いカフェ店員、そして母親に捨てられたショックで喋る事が出来なくなってしまった子供。それぞれ魅力的なメインキャラクターに加え、脇を固めるキャラクター達もまた良いんです(特にわんこ達が!)。
離婚の原因が男との浮気という一見どうしようもない攻めですが、読み進めていくにつれその不器用さが憎めなくなります。受けは初め電波系かと思いましたが(クレマチスの精霊発言が)、なんとも健気で可愛い子ではないですか……!
言葉を失った子供を受けが救い、もう恋愛はしないと決意してしまった受けを攻めが救う。偽りの家族が本物の絆で結ばれていく過程も読み手を飽きさせる事なく、松前さんの魅力が最大限に引き出された良作です。
現在注目されている作家・一穂ミチさんのデビュー作であり、既に名作として広く知れ渡っている作品です。
デビュー作とは思えない程の出来の良さと卓越した文章からは、彼女(で良いのでしょうか……)が「書きたいもの」を渾身の力を込めて書き上げたのだという気迫が伝わってきます。
高校生と担任教師の恋愛、という言葉だけでは言い表せないどうしようもない切なさと美しさに、二人が結ばれた時には胸が一杯になって思わず涙してしまいました。
個人的な一番の見所は、物語終盤に登場する桂の元教え子であり志緒の先輩となる“栫”と桂の、志緒曰く頭の悪そうな会話(笑)でしょうか。桂の妙な子供っぽさというか、独占欲というか、大人の余裕を何処へ置いて来たんだと言いたくなるような阿呆らしさが、何故だかとても愛しくなります。
普段受けに感情移入し易い方でも、この作品に限っては攻めにきゅんとする事請け合いです。
一言で言うと、ツンデレと雪だるま萌え。
ゲイである事を隠して生きる教師・稜と、親友に恋してしまった高校生・悦也。障害の多いこの二人が結ばれるであろう事は表紙を見た時点で分かるのですが、その過程がとても可愛らしくていじらしくて切なくなります。
特に受けである悦也の子供っぽさが実に思春期の少年らしく、やきもち焼きな受け好きにはたまりません。
何よりも、物語のラスト。
「丸顔の君、紹介するね」
「この人……おれの彼氏なんだ」
悦也が雪だるまに向かって言ったこの台詞に、全てを持って行かれました。
教師と生徒という関係故に二人の関係を公言する事が出来ない悦也の寂しさが、どうしようもなく愛おしい。
また、三池ろむこさんのイラストが素晴らしく、二人の絶妙な身長差や表情は一層読み手をドキドキさせてくれます。
ありがちな温い年の差もの、と言ってしまえばそれまでですが、色々な意味で濃いBL作品が増えてきた今、心をほっと暖かくしてくれるような、そんな作品です。