デビュー作でここまでの画力がある方は中々いらっしゃらないと思うくらい、魅せる技術をお持ちの作家さんだと思います。
ストーリーの元になる材料、もといネタの部分もけして面白くない訳ではなく、タイトルの君の夜に触れるという物語の軸自体も素敵でした。
ただ他の方が言っているように、物語のボリュームが巻数とあっていない印象です。
そもそもいつの時代の物語なのか?
着物が出てくるなら昭和?大正?
モノローグなりなんなりで時代を明言できるタイミングはあったはずで、それがなく読み手の印象をミスリードしてしまい、時代設定が分からないまま違和感だけが残る。(描き下ろしと限定付属の小冊子でその時代だったんだ?と認識できる状態なので)
殺し屋の設定も、殺せないのに数年以上どうやってその家業をやってきたのか?
父親との確執の理由は?
家族のバックボーンは?
とにかく勿体ない印象。情報量と巻数のバランスが惜しいです。
強いていうなら、これは作家さんというより担当編集さんのミスかと思います。
ネームの時点で読者が感じるであろう疑問や違和感をまずは担当編集さんが指摘すべきで、作家さん自身も仰っていましたが、漫画自体描くことが初めてだったとのことですし、少なくとも担当編集さんがついたのなら、作家さんのためにも読者のためにも、画力だけに頼らず、どこかの漫画賞に佳作で入るレベルを目指すべきかと。少々辛口ですが。
繰り返しますが、ストーリーや作品そのものの材料や軸自体は素敵です。ほんと構成と演出、巻数とのバランス次第。勿体ないなという印象です。
ただ魅力的な作画をされる作家さんであることには変わりないので、今後に期待!また他の作品も見てみたいです。