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女性桜の夜さん

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かわいいなあ、静ちゃんは。

対になっている5巻の表紙と比べると、露出度は半分以下なのに色気は10倍の男・久慈静。(ごめんね朔ちゃん)
外側はこんななのにね、蓋を開けてみれば可愛い静ちゃんの詰め合わせ。
私がBLの中で見たい“男の可愛さ”って、こういうのだよなと思う1冊でした。

1巻の頃から、すかした顔して朔を大好きなことも意外と必死なことも感じてはいたけれど。こうして改めて本人視点の回想を読むと、想像以上に青かったんだな。
感傷的で頑なで、独りよがりのまま終わらせてしまった片恋。
孤独と閉塞感の中で、人生を学び、愛について考えた8年間。
自分から一歩を踏み出した、再会の夜。
不器用で、誠実で、切実で……なんともまあ可愛くて、愛しい。
パンイチで正座しちゃってるのも、通りすがりのおっさんに励まされちゃってるのも、家に連れ帰った朔を前にソワソワしちゃってるのも、みんな可愛い。
キス魔になってるのも、椅子に座りに来ちゃうのも、「頑張って」と言われて神妙に「うん」と答えちゃうのも、みんなみんな可愛いよ、静。

この巻を読んでから1巻を読み返すのも楽しい。朔視点で描かれた静とのギャップに微笑んでしまう。あんなに本音を出せずにいたのに、今はこんなに素直になれて……という感慨も。
そして久慈父が大学に行ってしまうエピソードは初読から印象的だったけど、あの台詞がこんなロングパスで繋がってくるなんて。
長く続いているシリーズだけど、ちゃんと全部が地続きになっている。「ん〜〜」が口癖の先生、前にモノマネされてたな。
嶋田さんへのカムアウトもすごく好き。家族のことや仕事の愚痴もぶっちゃけて話せる、彼女のキャラやこれまでの関係性が下地にあってこその、ああいう流れ。原さんに明かしたときとはまた違う信頼関係を感じられました。嶋田さんの咄嗟の対応力もお見事!さすが教育者。多治見さんの告別式で、朔を気遣ってくれたのも嶋田さんだったんだな。

同じMRから翻訳業を目指すのに、静と朔ではいろんな面で格差があるなーというのも初期から気になっていたけど、ここに来てなかなか痛烈な形で突きつけてきました。でもイヤな感じにギクシャクするわけではなくて。
40歳すぎても、両想いになっても、まだまだ学ぶし成長する。着々と人生の伴侶になっていく二人、素敵でした。

無愛想イケメンから漏れ出す可愛さったら。

まずはとにかく瑛人がドストライクでした!
中身がほとんど見えない1・2話の、目つきが悪くて無愛想で不遜なところも好みだし、3話でチラチラと内面が見えてきてからがほんと可愛くてハマっていって、とどめに6話の瑛人視点で悶絶。無愛想なまま、不遜なまま、微妙〜に正孝に懐いていくのがすごくいい。「夢に出てきて鬱陶しかった」なんて、瑛人すぎて可愛すぎる。
そもそも顔がいい。初登場のエレベーターの場面で、正孝と同時に「イケメン〜〜」って思ったし。そのルックスで実は子どもじみた負けず嫌い……正孝より一瞬前に「こいつ可愛いじゃん」って思っちゃった。瑛人のこの青臭さ、大学生特有な感じで好きです。

正孝のほうはチャラ系クズなんだけど不思議と愛着持てて、普通なら嫌悪感が湧くようなエピソードも笑えました。彼独自の「善く生きる」というモットーも何となくわかる気がする。
ただ、個人的には“大好き”とまではいかず、“嫌いじゃない”で留まってしまったかな。
家庭環境が原因で自己肯定感が低い、という設定が私にはしっくり来なかった。
幼い我が子の好きな本を「変」「役に立たない」と笑顔でバッサリ切り捨てて兄のようになれって……病みを感じるレベルの毒親で、何か複雑な事情(兄は先妻の子とか)があるのかと思ったら特に説明はなく。本当にただ兄が超優秀なだけの話?
自信を失くして好きなものを好きと言えなくなった…わりに、大学はしっかり哲学科に入るんだ? 実家暮らしでお小遣い付きってことは、親も普通に認めてくれたんだ?
親からの評価を上げるため料理や家事をやるのに、しょっちゅう外泊して酒タバコor香水のニオイさせて帰るのはマイナス評価じゃないの?
せっかく哲学科に入りながら、ろくに授業にも出ない? なのに実は優秀で、教授には何かと目をかけられて……これ、瑛人じゃなくても普通に周囲の反感買いそうだけど、みんな認めてくれてる。
この辺りの諸々がうまく腑に落ちなくて、正孝に同情するよりむしろ甘ったれた印象を持ってしまったので……もし続編があるなら、正孝の背景をもう少し見たいです。

身体だけの関係から始まって、正反対の二人が惹かれあっていって、恋が実るというド王道ストーリーだけど、お互いの気持ちが変化していく過程の描写がすごく好きな作品でした。
講義室で二人並んで座っている情景が美しすぎて、喉の奥がじわっと熱くなる。「魂の片割れ」って素敵だな。

青とジェントとAI

貧乏高校生が大企業社長にハニトラね……と最初は半信半疑で読み出したものの、京一と直己という二人のキャラがうまく生かされて違和感なくストーリーに入り込めました。
京一の神対応はまさにノブレス・オブリージュ。紳士的なだけじゃなくて、ちょっと不思議な柔らかさもあったり。
かと思うと、直己が自分に近づいた真意を知ったときなんかは抜かりなく卒なく立ち回る。自分の身をしっかり守りつつ、無謀な子どもにはお灸を据えてやって、でもあんまり傷つけないよう心のケアまで万全。
浅〜い思いつきと勢いで乗り込んできた直己が、胸の内に抑えてきた蟠りを吐き出せるまでの流れが自然で良かったです。
ついでに、直己を組み伏せたときの京一がね……あの優しい雰囲気から一転、“俺は男を抱くことには慣れている”と言わんばかりのオーラを放ってくるのがまた、めちゃくちゃツボ。あとで直己が友達に動画を見せられて、京一と自分に重ねてしまうのも可愛かった。
DKが社長にハニトラなんて非現実的……どころか、ノンケの18歳が会ったばかりの36歳に恋をしてしまうまでの1・2話の展開がほんとパーフェクトで、疑ってしまった過去の自分を殴りたくなる。

そして3話目以降……京一と直己が絆を深めて結ばれるまでももちろん良かったけど、私は佐久間も交えた3人の物語にドハマリでした。
少数派かもしれないけど、私は佐久間がめちゃくちゃ好きです。京一の恋愛相手としては直己の方がお似合いだと思いつつ、佐久間に感情移入しすぎて、途中うっかり主役ってこの人だっけ……と錯覚してしまったぐらい。

ヤクザだ悪魔だAIだと失礼ながらも何だかんだ物怖じせず接してくる直己に、佐久間は彼なりに情が湧いてたと思うんです。2回も紅茶吹いてる時点でもうだいぶバグってる。
でも、だからこそ解ってしまう。この子は京一にとって、特別な存在になるだろうと。
今までずっと、京一の孤独な部分も含めて支えてきたこととか、京一の付き合う相手を静観してきたこととか、直己についてはそれができなくなってしまったこととか……佐久間視点で穿って考えてしまうと切なくて。
それでも佐久間は、直己が自ら外そうとしたピアスを取り上げはしなかった。受験のお守りにすると直己が言ったからか。京一の「君には必要な物」という言葉の意味を理解していたからか。……なんて思ったり。

京一と佐久間が二人で話すとき、たまにピリッとした空気が流れるのも、個人的にものすごく萌えポイント。佐久間に全幅の信頼を置きながらも、彼が何かの理由で嘘をついている可能性も常に見据えている京一。それを分かっていて淡々と嘘をつき続ける佐久間。この静かで際どい攻防戦……好き。

佐久間の気持ちを知ってからも変に遠慮しないのも、京一のいいところ。
直己に対しても、高校卒業という最低限のモラルさえ守れば、必要以上の忖度はしない。欲しいものは迷わずに取りにいく。なんか、そういうとこ流石だよなって思う。ただの聖人じゃない。
BL界にスパダリ多しといえども、京一さんは唯一無二の奥深いキャラクターだよなと思うのでした。

チョロいだけじゃない! けどやっぱりチョロい!

腹黒で頭のいい攻めが、天然でチョロ可愛い受けを掌で転がす……って、設定自体はそう珍しくもない気がするけれど、二人ともキャラが良くて大好きな作品です。
コメディーとしても面白い。「わかってないでしょ」「わ……わかってる!」→(わかってなかった!)とか、お約束の流れなんだけどテンポが良くて笑っちゃう。

お互いに「泣かせたい!」って欲のバトルで可愛く笑わせてくれつつ、劣等感や罪悪感もないまぜで葛藤があるから、ちょっぴり切なくもあり。
そして何より二人とも、心のいちばん根っ子の部分では本当に相手のことが大好きなのが伝わりました。
特に梓が、嬉しい・寂しい・心配・ヤキモチ……と、いろんな表情に無自覚の好きがダダ漏れちゃってるのがほんと可愛くて。
保育園時代から積み重ねてきた歴史も尊い……

……と思っていたのに!
朝壱が自ら策を弄して梓を孤立させていたのにはガッカリでした。梓に友達ができないのを密かに喜んでた、ぐらいなら許せたのに。梓の純粋な信頼をどうしてくれるんだ!
でも、こういうダメすぎる攻めを救ってやるのが受けの底力ってものなんですね……。朝壱がやったことは許せないけど、梓の強さに免じて目をつぶっておこう。

朝壱の方がいつも一枚上手のようでいて、いちばん大事な鍵を握っているのは実は梓の方、トータルで見ると対等なんだな〜というところがすごく好きです。
でもやっぱり永遠にチョロすぎる梓!なところも。

安定の面白さ!

楽しみにしてました、2巻。
大定番の当て馬登場だったけど、嫌な感じに引っ掻き回されるとか不自然にすれ違うとかがなく、ちゃんと二人の信頼が深まる話で安心して読めました。
1巻でもちょっと描かれていた、ミノルの少年時代からの蟠りが解けて良かった。ミノルはやっぱり可愛い。
細かすぎる話だけど、ミノルと小春ちゃんの2ショットが何気に好きで……攻めと一緒にいるとひたすら可愛く見える受けが、女性と並んでいるとシュッとしたイケメンに見える現象って萌えます。

ラブストーリーと並んでBLあるある話も相変わらずの面白さ。
作中に描かれてる漫画も拡大して(電子派なので)台詞まで読んで笑っちゃう。
タケ子さん節も健在。BLへの愛と造詣が深くて、何より作家さんファーストな姿勢が素晴らしい。
新キャラのタイラとアオちゃんも好きなキャラでした。売れっ子のアオちゃんがBL作家じゃなくて、二次創作の元にされちゃう側の少年マンガ作家なのが意外性あって面白い。なんだかんだ言いながら、読者への感謝を忘れないところが可愛い。

モモタもミノルと似ている部分のある子で、これから幸せになれよと願ってます。
電子特装版ではソムリエ降臨! ほんとミノルにそっくりでお綺麗です。強気美人で彼氏もイケメン、なのにゴリゴリのBL猛者って、これもあるある……?

物騒すぎて楽しすぎる。

待望の3巻。毒!危険!って感じの表紙カラーがカッコよくて、いつもの困り顔のような、幸せなような、でもどこか悪い男のような陽介の表情が好きです。

ストーリーはこれでもかってぐらい物騒につぐ物騒で……楽しい!
「皮膚の下まで」「特区の底まで」愛の語らいまでもが物騒きわまりなくて玉森さん最高です。そして「無償の愛なんて存在しない」と言い切っちゃう陽介も好き。
私は普段は純愛ものが大好きで、相手の幸せのために自分を抑えちゃうような健気で不器用なキャラクターがタイプだったりするけど、シュガドラのどこまでも自分ファーストな男たちも、なぜかドハマリしてしまう。まさにドラッグのような背徳感。

2巻の時点では個人的に陽介×玉森への思い入れが強すぎて東間が今ひとつに感じてしまい、3巻では可愛く思えるようになったらいいなと期待したんだけど。
実際読んでみて新たに東間に感じるようになったのは、気の毒さ。本人は逞しいし前向きだし、最終的にはいちばん望んだものを手に入れた形になったけど、見ていて何ともいたたまれない。そしてやっぱり可愛いとは感じられなかった。
ということで、3人でくっつくのは自分としては歓迎ではなかったです。最初から作者様が3人と表明してるのは見てきたから、覚悟はしてたけどやっぱり複雑。

むしろ、恋愛沙汰を抜きにしても尊いと思うのは天木と玉森の関係で、この巻では二人の貴重な連携が見られて良かったです。
常にお互い警戒し合っているけど、いざというとき手を組むならこいつがいちばん頼りになる、みたいな。細かい説明なんて不要、阿吽の呼吸で動く二人。さすが特区で生き残る術は心得てる!って感じで、良き萌えをいただきました。

打算と駆け引きと陰謀が渦巻くストーリーの中で、陽介が玉森に見惚れるシーンがお気に入り。蕩ける金色、美しい。

「複製」なんてとんでもなく不穏な要素まで出てきながらサラッとスルーで終わったけど、蘭定編で回収されるのかな〜なんて思ったり。5人目の主席の名前がやっと明かされたりで、次のシリーズも絶対あると期待しています。

激重執着野郎に萌え転げる。

1巻は迷いに迷って購入した結果のドハマリ!で、これはもう2巻は迷う余地なしでしょと思いつつ、念のため試し読みしたら……1ページ目にしてまた躊躇。
いやいやいや、この人が受けって……1巻に登場したときも大概だったけど、これはいくらなんでもイカレ過ぎだしコワ過ぎだし。
なのに、1話目を読み終わるころにはもう、コロっと堕とされてしまいました。あのイカレ過ぎでコワ過ぎのネコ様に。

とにかく玉森が強〜烈に魅力的。浮世離れした天木のマッド感も良かったけど、俗世の悪の頂点を極めたような玉森のマッド感もまた良し。強欲さも傲慢さも、見ていてむしろ楽しい。清々しいまでの極悪っぷり。
なのに、その圧倒的な悪さの中に、ほんのひとかけらの人間っぽさがあるのが何とも愛しい。玉森の天木に対する歪んだ執着がほんとに好きすぎて、実を言うと恋愛の話よりこの二人の関係の方が萌えてしまったりします。玉森の「嫌がらせ」は悶絶ものでした。

陽介がまた凄すぎる男。これは新手のスーパー攻め様なのか? 頭脳も財力も権力も(何なら身長も)受けより低いのに、受けを引っ張っていくこの圧倒的な力。頭の回転の速さとコミュ力の高さ、身体と精神の頑丈さ(ついでに精力も)。生物としての根源的な強さみたいなものを感じます。
特に、どんな状況でも食べられる・眠れるって最強。修羅場のあとに相手の隣でぐうぐう眠れるその神経の太さ、もはや人間離れしたレベルでは。
そして究極の合理主義者。性格的には優しくて誠実なのに、どこまでも損得と利害が最優先。そういえば春もそれでフラれたんだった。なのにやっぱり優しい。
なんかもう見たことない種類の凄さに、惚れ惚れしてしまうのでした。

私としては、
・玉森の天木への激重執着に萌える!
・それを解放した陽介凄い!
・このまま陽介玉森で幸せになってくれ!
という超単純な三段論法が成立してしまったので、正直いって東間は当て馬ポジションにしか見えず。イカレ過ぎでコワ過ぎという印象から脱しきれないまま……「でっかわいい」に見える境地に達しなかったです。他のキャラは脇も含め、みんなヤバくてみんないい、なんだけど、なぜか東間はあまりハマれないキャラ。
でもインタビューやSNSでの作者様の発信を見る限りこれって3人でくっつく話っぽい?ということで、少し複雑な思いで終わった2巻でした。

中毒性がスゴい! 甘い劇薬。

買う前はかなり迷いました。受けが半裸でトロ顔してる表紙の作品って好みじゃないし。しかも始まりは事故で上司とやっちゃう、か(よくありそうなパターンね)。とどめは攻めの髪、ピンクはともかく何その形?
でも試読してつまらないとも言い切れないし、評価も高いし、迷いながら試読を繰り返すうちに、なんだか天木に惹かれ始めてしまった。見慣れてみるとこの髪型もアリかもしれない。横から見たときの計算されたフォルムに潔ささえ感じてしまう。髪型に慣れてみると、この人意外とクールビューティーなんだな。特に、事故でドロドロになった直後のスンッと冷たい感じ、結構好みだわ。
……という感じで購入したのが運のつきで、この甘ったるくてヤバいドラッグに骨まで溶かされるハメになったのでした。

兎にも角にも、「特区」そして「主席」という設定が凄すぎる。
法律も倫理も通用しない閉じられた世界。そこに君臨する、常軌を逸した5人の天才。
1巻で登場するのは3人だけど、みんな研究において天才なだけでなく、大勢の研究員のトップに立つだけの強かさもあるし、さらにそれぞれ別のベクトルでアクが強すぎる性格なのが魅力的。

天木は、研究と甘いもの以外何も興味なさそうな冷たいところと、「悪役強キャラっぽい」ところがめちゃくちゃ好き。春に嫌がらせした先生を切り捨てたときの、容赦のなさが堪らない。
でも天才すぎるがゆえの壮絶な過去があって今の人格が形成されたこととか、自分でもよくわからないままに春に執着しちゃうところとか、春と相思相愛になってから情緒が育っていくところとか、可愛いところはすごく可愛い。
天木の持ついろんな側面全部ひっくるめて大好きになっちゃって、あのピンクに心を掴まれてしまいました。
作者様のSNSで開始前の髪型案が掲載されていて、もっと普通の髪型も中にはあったんだけどなんか違う……やっぱりあの髪型あっての天木さん! ピンク髪にちゃんと由来エピソードがあるのにも、ほんと恐れ入りました。面白すぎる。

そして、春がまた想像以上に良かった。
ぱっと見、可愛くて素直で常識的なようでいて、意外と計算高かったり、自己主張強かったり、恋愛>>>倫理だったり。主席みたいに超人的な頭脳ではないけど、一般人としては頭が切れるし度胸があるのもいい。
寝ている天木に甘えるところも可愛かったです。

説明的な文章が多くて少々わかりづらいところもあったけど、繰り返し読んでると頭に入ってくるようになるので許容範囲。そして繰り返し読みたくなっちゃう中毒性がすごい作品でした。

蜜月編。甘ーーーい‼︎

前巻の終わりで二人の関係に大きな進展があってからの今巻。でもこの二人だからなー、いきなり甘々になったりはしないかな? ああほらやっぱり「何かが特別に変わったわけではない」とか言ってるし、そうだよねーと油断していたら。
いやもう、めっちゃくちゃ甘くなってる! 見ていて恥ずかしくなるぐらいに!
まあ、以前からナチュラルにイチャイチャはしてたし。今も「あつかましい」ぐらいの軽口は叩くけど。でも二人とも何と素直に、何と丸くなったことか。
特に、ちょこちょこ見せる静の素直さが可愛い。
面倒くさい性格の二人が大好きだった者としては、ちょっと寂しくもあったり。波乱が欲しいわけじゃないので、ただの贅沢な悩みですが。

そういう意味で貫田さんは程よいスパイスでした。
前巻で、朔が貫田とすれ違ったときに気づいた、静と同じタバコの匂い。そういうことね、貫田が静と同じなんじゃなくて、静が貫田と同じのを選んだわけね。
派手な傘を持っているのも、静の提案を20年以上も実践してるとか。静本人だけでなく、家族の好みまで把握してるとか。
このじわじわ滲ませてくる“初めての男”感……実際何かあったわけでも、これからありそうなわけでもないのに……朔の夜遊びや枕営業の相手が10人束になっても敵わないような存在感。
そしてカバー下の若貫田の全身ショットがもう何というか……思春期の男の子の周りをこんな男がしょっちゅううろついてるなんて、けしからん。
でも当て馬っぽいイヤな雰囲気はまったく匂わせないのも良し。
慕っていた年上の人が、朔は多治見さんのような人格者で、静は貫田さんのような色男なのも、何とも言えずこの二人らしいと思いました。

三上さんの話はホロっときました。確かに気遣いもあるだろうけど、半分は本当に三上さんのプライドでもあると思う。
翻訳学校に来ている頭が良くて向上心のある女性たちも素敵だけど、家政婦の三上さんやパート主婦の芙美子姉ちゃんのように、家庭や家族を守る女性たちも強く素敵に描いてくれるのが嬉しい。

細かすぎる話だけど、普段、人前では「母ちゃん」とか「姉ちゃん」と言ってるいい歳した大人の男が、ふとしたときに「お母さん」「お姉ちゃん」って言うのが、ものすごく好きで。特に、静の前で朔が「お母さん」連呼してるのが、ツボでした。言葉の選び方にこだわるこの作品ならではの萌えポイント。

アラフォー乙女に王子様が。

恋愛に興味がないわけじゃないのに、いつのまにかアラフォー。恋人いない歴=年齢。仕事に流される日々……
こういう人っているだろうな、ましてマイノリティーだとチャンスも少ないもんね……というリアルさに心惹かれて読み始めたんですが。
蓋を開けてみたらかなり少女マンガ感が強かった。
曲がり角でぶつかるかの如く偶然にイケメンと出会って。外見よし、センスよし、性格よしのモテ男が、ありのままの君が好きだよと言ってくれる、みたいな。
藤嶋、春江双方の心情は細かく描かれてはいるんだけど、今ひとつ説得力を感じられず。
私が、アラフォー男に乙女っぽい可愛さを求めていないから、というのもあるかもしれません。
恋愛初心者でウブな性格でも、20代のそれと40代のそれとは違うんじゃないかな。もう20年近くは社会人やってきて、いろんな人と関わって、いろんな経験してきているのだから。
歳月を積み重ねてきたアラフォーならではの良さ(仕事ができるとかじゃなく)があまり感じられず、保守性とか身体の衰えとかネガティブな部分はやたらと強調されるのが、バランス悪く感じました。

恋をしてきれいになりたいって思うのはいいな。何歳であっても。